小池百合子のMOTTAINAI
AIIB「日本は当面Wait & see」
このところアジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る論議が盛んです。イギリスが同盟国アメリカに伝えることなく抜け駆け的に参加したこと、ドイツやフランスなど欧州諸国が雪崩を打って参加を表明したり。現段階ではG7の分離作戦に成功した中国の戦略勝ちのように見えます。
AIIBの融資条件は大甘、融資対象も中国の都合で振り回されるのではないか。インフラ投資を優先させ、環境配慮を後回しにするのではないか。そもそも会議はメールで行うそうだが、それでよいのかなど、様々な懸念は山積しています。何よりも、決済は中国・人民元となり、ドルの基軸通貨の座を脅かすのでは。中国の狙いはブレトンウッズ体制そのものの転換を図ることではないか、などなど。
少々古い話になりますが、昨年8月、アブダビに本拠地を置くアラブ通貨基金(AMF)とJICAの間で業務協力協定(MOU)が締結された件についてご紹介しておきます。
AMFは1976年の設立、アラブ諸国22か国が加盟。資本金は42億ドルで職員数は150人という規模です。 アブドゥルラハマン・アル・ハミディ総裁はサウジアラビア中央銀行の副総裁を務めた金融のプロ。私が日本アラブ首長国連邦友好議員連盟の会長としてアブダビを訪問した際、AMF本部を表敬したことをきっかけに、日本とAMF連携の端緒が構築され、具体的な協力へと進みました。
協力の内容は「アラブ諸国の財政・金融分野の協力促進」で、要は日本の精緻な統計の手法をアラブ諸国の中央銀行や関係省庁に伝授。そのための専門家の派遣やセミナーの開催などがその内容となっています。日本の統計の正確さには誇りを持っている私として、進めたかったものです。
さて、アラブ諸国との接点を通じ、私はアラブ諸国のAIIBへの見方に関心を抱きました。それはギリシャ・ショックやリーマン・ショックにはIMFや世銀は即座に対応するが、では「アラブの春」以降の対アラブ諸国への支援はどうだったか。
要はIMF、世銀は結局欧米の支配下にあり、アラブはその下位に位置づけられているといった憤りです。だから別の機関が設けられるならと、サウジアラビアなどのアラブ産油国がAIIBへの参加を決めたのです。キリスト教社会とイスラム社会+その他、の格差ともいえます。
もうひとつ。中国の完全手動の「シルクロード基金」も始動しました。初案件は対パキスタン。こちらはモロに中国の財布となることでしょう。注視していきましょう。
(自民党衆議院議員)