初夏の訪れを告げる 浅草・三社祭
練り歩くみこしに威勢のいい掛け声
東京に初夏の訪れを告げる浅草の「三社祭」(浅草神社例大祭)が15〜17日に行われた。最大の盛り上がりを見せた最終日の宮出し、宮入りまで、累計で約185万人が訪れ、「セイヤ」「わっしょい」と威勢のいい掛け声とともに担がれる神輿(みこし)を笑顔で見守った。
国内外からの観光客で常ににぎわいを見せる浅草が一年で最も盛り上がるのが、浅草神社の三社祭だ。毎年5月17、18日にもっとも近い金曜日から日曜日までの日程で行われる。浅草神社の神輿が町内を巡るほか、町内ごとに神輿を持っていて、子どもが「わっしょいわっしょい」と担ぐ子ども神輿も登場。期間中浅草を練り歩く神輿の数は約100基ともいう。
祭りが行われる3日間、浅草は祭り一色になる。雷門から浅草神社、浅草寺へと続く仲見世は人で埋め尽くされる。神輿を担ぐ氏子たちやカメラやスマホを掲げる見物客、知らずに浅草見物にやってきた人でいっぱいになった。祭りのピークとなる最終日の「本社神輿各町渡御」で、本社神輿といわれる3基の神輿が浅草神社を出て町内を巡り、戻ってくる、「宮出し」と「宮入り」ではそのにぎわいも最高潮に達した。
中日16日に行われた「神輿連合渡御」は、町内の神輿約100基が一堂に集い、浅草神社でお祓いを受けて、再び町内へ戻っていくというもの。すべての神輿が神社を出るまで延々と神輿の行列が続く。神輿が通過する仲見世では、「セイヤ!セイヤ!」という威勢のいい掛け声とともに「お神輿が通りますよ。こっち曲がるんで、道を開けて下さい!」「そこ、危ないですよ。怪我したら面白くないんでね」と半纏姿の人たちのよく通る大きな声が響く。見物客はその声に促され、神輿を見守り、担ぎ手にエールを送る。三社祭が行われていることを知らずにやってきたという夫婦は「いったい(神輿は)いくつあるのかしら? 20ぐらいかしら?」と目を見開いていた。
一方、仲見世の店舗はというと、営業しているものの、お祭りムード。お店のスタッフは神輿の担ぎ手のなかに知っている顔を見つけると声をかけたり、一緒に手を打ち「セイヤ!セイヤ!」と大きな声を出す。「やっぱりいいわね。こうやって声を出すと目が覚めるわ」と店番をしていた妙齢の女性は満面の笑顔だった。
大にぎわいの雷門や仲見世周辺から離れても、町中にお祭りのムードが漂う。普段は下町情緒にあふれている路地や雰囲気たっぷりの個人商店、さらには大型のショッピング施設もすべてが三社祭一色。
歩けば、周囲は、揃いの半纏姿の親子や家族、仲間連れ。そんな彼らと仲良く写真撮影する外国人観光客の姿もあちらこちらで見られた。また、聞こえる祭囃子が一際大きくなったと思ったら、町内を巡るみこしに遭遇するケースも少なくない。歩く人の多くがカメラやスマホを手に握ったままだったのにも、納得した。
三社祭は、「ここから夏が始まる」と語り継がれている祭り。4月から夏日が続いている。いよいよ、東京に本当の夏がやってくる。
浅草に生まれ育った人に言わせれば、「宮出しや宮入りが盛り上がるのは間違いないけど、その後に続く町内での祭りも楽しい。盛り上がりもすごい」という。町内で揃いの半纏を着て神輿を担ぐのはもちろん、担ぎ手たちを町内総出でサポートするのもまた、楽しみなのだそう。浅草に暮らしていないかぎり、体験しづらいが、雷門や仲見世エリアを外れて各町内を歩くと、そんなふうに楽しんでいる人たちの姿を見ることができる。
「町内神輿連合渡御」の行列が続くなか、周辺を歩いた。神輿はまだ戻っておらず人もまばらだが、大きな祭囃子につられて歩いていくと、ある町内の詰所から流れていたものだった。向かいに設営されたテントの下では、女性たちが楽しそうにおしゃべりしながら、お茶やお酒の準備をしていた。自転車で追い越して行った人、ベビーカーを押す人、車いすの方までみんなが半纏姿。親に抱かれて眠る子どもたちも含めて、お祭りをフルに楽しんでいるのが分かる風景だった。