屋根は五輪に間に合わず 都には500億円の負担を要請
2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の整備問題をめぐり、下村博文文部科学相が18日、東京都庁で舛添要一知事と会談し、工期の短縮を目的に開閉式屋根の設置については、大会終了後に後回しする考えを明らかにした。また、総工費1692億円で想定する建設コスト抑制のため、8万人収容の座席数の一部を仮設に変更することも示した。
下村文科相はこの日、都側に周辺整備にかかる費用500億円の負担を要請。これに対し、舛添知事は建築資材の高騰などで総工費が膨らむことが予想されることなどに触れ、「協力は惜しまないが、税金を払うのは都民。もっと情報開示をしてほしい」と話し、負担額の根拠や総工費の詳細などを聞いた上で検討する考えを示した。
下村文科相は、観客席の仮設化などで見直している総工費を「今月中に明らかにできる」と述べて理解を求めた。
文科省は同日夕、下村文科相が明らかにした仮設化する観客席は可動式部分で最大約1万5000席分を検討していると説明。常設部分が約6万5000席で、五輪開閉会式やトラックを使用する陸上競技の大会では仮設分を加えて7万2000席とし、サッカーやラグビーの国際大会では仮設部分を最大にして8万人収容を維持するという。
この計画変更については専門家からは「情報公開が不十分で、遅すぎる」と批判が出た。昨年9月には解体工事の入札をめぐり、工事を発注した日本スポーツ振興センター(JSC)の職員が、入札額が分かる工事費内訳書を事前に開封していたことが発覚。入札をやり直し、本格的な解体着工が今年3月にずれこむなど、不手際による迷走が続いている。
また、昨年6月には、基本設計で示した競技場の高さに関するデータに誤りが見つかり、JSCが発表資料を訂正。新国立競技場は巨大で景観を損なうと反対の声が根強く、「計画を乱暴に進めようとする姿勢の表れ」と批判が強まる要因にもなった。
舛添知事は19日の定例記者会見で、「誰の責任なのか。誰も責任を取らない体制は問題がある」と述べ、体制の見直し求めた。
開閉式屋根の大会時設置を見送る案については「開会式で大雨が降ったとき、行進しているアスリートはどうするのか」と述べ、大会運営に支障が出るとの考えを示した。
また、下村博文文部科学相から整備費の一部負担を求められたことには「500億円という数字は根拠がない。せいぜい50億円程度」と指摘。「経済効果ですぐに取り戻せるというのは、あまりに楽観的。たくさん人が集まればゴミや騒音、交通渋滞の問題も起きる。都民にお願いするだけの論理が必要だ」と述べた。