本郷奏多 伝説的映画館で感じた“122年”の映画愛! 『シネマの天使』
SPECIAL INTERVIEW
2014年8月、広島県福山市で122年続いた映画館・シネフク大黒座が閉館した。その取り壊しの前に撮影された奇跡の映画『シネマの天使』が公開。『GANTZ』『進撃の巨人』の人気俳優・本郷奏多が大黒座で感じた“映画の力”を語る。
撮影・神谷渚 ヘアメイク・高橋幸一(Nestation)
「やっぱり大黒座の存在が一番、大きかったですね。実際に122年続いた映画館があって、取り壊される前にこの場所で、もう二度と撮影できないものを撮る。なかなか体験できることではありませんし、きっとフィクションだけでは描ききれないメッセージ性のある映画になると思ったんです。その一方で、大黒座閉館という事実を一番のポイントとしていて、それ以外の部分で物語を作り込み過ぎていないのも、本作のいいところかなと思います。大黒座という100年以上も愛され続けてきた場所がなくなってしまって、それに対していろいろな思いを持った人たちがいる。本作ではその事実が、一番強いメッセージになっているんです。ある意味ドキュメンタリー的な要素もある作品ですよね。それが今回の作品の強みかなと思います」
本作は広島県出身の時川英之監督が、地元の人々の大黒座への思いに応えようと自らメガホンをとり映画化が実現。
「地元の方々からもお話を伺ったんですが、みなさん大黒座の映画を作ることをすごく喜んでくださっていました。そういう気持ちを頂きながら、自分の中で演技につなげていきました。映画やドラマの撮影で地方ロケに行くことはよくあるんですけど、地元の人と触れ合う機会ってほとんどないんですよね。単に撮影しにきたというだけの映画よりも、地元の人が思い入れを持ってくださっているなと感じました。僕は、人見知りをするタイプなんですけど、今回に関してはいろいろな方とお話させていただいて、楽しかったです」
自身も大黒座に感じるものがあった。
「台本を読んだとき、正直言ってなんだか不思議な映画だなと思ったんですよね。“天使”とか“仙人”とか出てくるし(笑)。でも実際に大黒座に行ってみたら、ああ、監督はこのエネルギーを使おうとしているんだなと納得しました。主役は大黒座なんだな、と。実際に訪れてみるとやっぱり感じるものがありました。もちろん改築もあったんでしょうけど122年ってすごいですよね。大黒座の空間に漂っている、言葉では簡単に言えないものを肌で感じながら演じることができたと思っています」
今回本郷が演じたのは、映画監督志望の青年・アキラ。自分の映画を作ることを夢見ているが、今一つ自信や信念を持てずにいるイマドキの若者だ。
「アキラは、映画を撮りたいと言いつつも具体的に行動するわけでもない。僕自身は、気になることややりたいことがあるとすぐ自分で調べたり勉強するので、こういうタイプの人はあまり好きじゃないですね。やりたいなら動けよ、って思ってしまいます(笑)。でも現実に、若い世代にはアキラみたいな人は珍しくないし、なんだったらやりたいことすら見つからない人もいる。なので今回は、いい意味で平均的な若者を演じよう、と思っていました」
夢を与え続けてくれた大黒座の閉館がアキラにどんな変化をもたらすのか。
「最後、アキラは一歩というか半歩は前進したかな、と思います。その後、映画製作が実際に形になるかは分かりませんけど(笑)。もちろん半歩でも前進したことは意味があるけど、大黒座の存在が、くすぶっていたアキラの人生の分岐点を少しだけずらしてくれたんだと思います。いまは大黒座閉館を目の当たりにして熱くなってるだけで、本当にどうなるかはこれからでしょうね」
厳しいようでも、自らも映画の力を肌で感じてきた本郷なりのアキラへのエール。
「僕は仙台で育ったんですが、小さいころはよく家族で車を走らせて映画館に出かけていました。東日本大震災が起きたとき、いつも行っていた映画館の周辺も大きな被害を受けてしまって。震災が起きたのがちょうど『GANTZ』の前後編の間だったんですが、後編公開のときに仙台の人たちを励まそうと、舞台挨拶に行ったんです。映画館に向かうまでの道沿いも壊滅的な被害を受けていて。昔はこの道を通って映画を見にいっていたんだよなと思ったら、いろいろな気持ちがこみ上げてきましたね。舞台挨拶には本当に多くの方が来てくださったんですが、その中に高校生くらいの女の子の遺影を持った方がいらっしゃって。たぶんご両親だと思うんですけど。娘がすごく楽しみにしていたんです、今日来てくれてありがとうございました、と言われて、言葉にできない思いが沸き起こってきました。きっとご両親は僕らが想像できないくらいの思いを抱えているだろうに、娘が楽しみにしていたからと、映画館に足を運んでくれたことがうれしくて。映画は娯楽でしかないのかと思ったときもあったんですけど、これほど何かを伝えられる可能性を持っているのも映画なんだと、思いました。本作でも描かれているとおり、映画を見ることを本当に楽しみにして、生きがいの一つとしてくれている人がいる。役者という仕事も捨てたものじゃないと今回改めて思いました」
俳優は天職?
「実を言うと、もし俳優になっていなかったら、やってみたかったことはたくさんあるんです(笑)。例えば、けっこう僕は負けず嫌いなところがあるので、勝ち負けがつく仕事なんかもやってみたいですね。将棋の棋士とか、レーサーとか。勝負を仕事にするのは向いてる気がします。わりと“古い男”の考え方をするほうなんです、男なら勝負の世界に生きろ!みたいな(笑)」
だから映画という勝負の世界も自分に合っていると思う、と本郷。最近はこんな“勝負”に夢中。
「麻雀です(笑)。主演したドラマ『アカギ』がきっかけで。もともとやり方は知っていたんですが、撮影の合間にみんなで麻雀をしていたら自分のレベルもけっこう上がってきて、改めて面白さに気付いてしまって(笑)。企画で大会に出させていただいたりもしたんですけど、来年こそはタイトル取りたいな。映画の賞より先に…というのは冗談ですけど(笑)」
穏やかな微笑みとうらはらに、役者として勝負を仕掛ける気まんまん。さらに先へと歩き続ける。(本紙・秋吉布由子)
本作は広島県出身の時川英之監督が、地元の人々の大黒座への思いに応えようと自らメガホンをとり映画化が実現。
「地元の方々からもお話を伺ったんですが、みなさん大黒座の映画を作ることをすごく喜んでくださっていました。そういう気持ちを頂きながら、自分の中で演技につなげていきました。映画やドラマの撮影で地方ロケに行くことはよくあるんですけど、地元の人と触れ合う機会ってほとんどないんですよね。単に撮影しにきたというだけの映画よりも、地元の人が思い入れを持ってくださっているなと感じました。僕は、人見知りをするタイプなんですけど、今回に関してはいろいろな方とお話させていただいて、楽しかったです」
自身も大黒座に感じるものがあった。
「台本を読んだとき、正直言ってなんだか不思議な映画だなと思ったんですよね。“天使”とか“仙人”とか出てくるし(笑)。でも実際に大黒座に行ってみたら、ああ、監督はこのエネルギーを使おうとしているんだなと納得しました。主役は大黒座なんだな、と。実際に訪れてみるとやっぱり感じるものがありました。もちろん改築もあったんでしょうけど122年ってすごいですよね。大黒座の空間に漂っている、言葉では簡単に言えないものを肌で感じながら演じることができたと思っています」
今回本郷が演じたのは、映画監督志望の青年・アキラ。自分の映画を作ることを夢見ているが、今一つ自信や信念を持てずにいるイマドキの若者だ。
「アキラは、映画を撮りたいと言いつつも具体的に行動するわけでもない。僕自身は、気になることややりたいことがあるとすぐ自分で調べたり勉強するので、こういうタイプの人はあまり好きじゃないですね。やりたいなら動けよ、って思ってしまいます(笑)。でも現実に、若い世代にはアキラみたいな人は珍しくないし、なんだったらやりたいことすら見つからない人もいる。なので今回は、いい意味で平均的な若者を演じよう、と思っていました」
夢を与え続けてくれた大黒座の閉館がアキラにどんな変化をもたらすのか。
「最後、アキラは一歩というか半歩は前進したかな、と思います。その後、映画製作が実際に形になるかは分かりませんけど(笑)。もちろん半歩でも前進したことは意味があるけど、大黒座の存在が、くすぶっていたアキラの人生の分岐点を少しだけずらしてくれたんだと思います。いまは大黒座閉館を目の当たりにして熱くなってるだけで、本当にどうなるかはこれからでしょうね」
厳しいようでも、自らも映画の力を肌で感じてきた本郷なりのアキラへのエール。
「僕は仙台で育ったんですが、小さいころはよく家族で車を走らせて映画館に出かけていました。東日本大震災が起きたとき、いつも行っていた映画館の周辺も大きな被害を受けてしまって。震災が起きたのがちょうど『GANTZ』の前後編の間だったんですが、後編公開のときに仙台の人たちを励まそうと、舞台挨拶に行ったんです。映画館に向かうまでの道沿いも壊滅的な被害を受けていて。昔はこの道を通って映画を見にいっていたんだよなと思ったら、いろいろな気持ちがこみ上げてきましたね。舞台挨拶には本当に多くの方が来てくださったんですが、その中に高校生くらいの女の子の遺影を持った方がいらっしゃって。たぶんご両親だと思うんですけど。娘がすごく楽しみにしていたんです、今日来てくれてありがとうございました、と言われて、言葉にできない思いが沸き起こってきました。きっとご両親は僕らが想像できないくらいの思いを抱えているだろうに、娘が楽しみにしていたからと、映画館に足を運んでくれたことがうれしくて。映画は娯楽でしかないのかと思ったときもあったんですけど、これほど何かを伝えられる可能性を持っているのも映画なんだと、思いました。本作でも描かれているとおり、映画を見ることを本当に楽しみにして、生きがいの一つとしてくれている人がいる。役者という仕事も捨てたものじゃないと今回改めて思いました」
俳優は天職?
「実を言うと、もし俳優になっていなかったら、やってみたかったことはたくさんあるんです(笑)。例えば、けっこう僕は負けず嫌いなところがあるので、勝ち負けがつく仕事なんかもやってみたいですね。将棋の棋士とか、レーサーとか。勝負を仕事にするのは向いてる気がします。わりと“古い男”の考え方をするほうなんです、男なら勝負の世界に生きろ!みたいな(笑)」
だから映画という勝負の世界も自分に合っていると思う、と本郷。最近はこんな“勝負”に夢中。
「麻雀です(笑)。主演したドラマ『アカギ』がきっかけで。もともとやり方は知っていたんですが、撮影の合間にみんなで麻雀をしていたら自分のレベルもけっこう上がってきて、改めて面白さに気付いてしまって(笑)。企画で大会に出させていただいたりもしたんですけど、来年こそはタイトル取りたいな。映画の賞より先に…というのは冗談ですけど(笑)」
穏やかな微笑みとうらはらに、役者として勝負を仕掛ける気まんまん。さらに先へと歩き続ける。(本紙・秋吉布由子)
©2015 シネマの天使製作委員会
『シネマの天使』
監督:時川英之 出演:藤原令子、本郷奏多、ミッキー・カーチス、石田えり他/1時間34分/東京テアトル 配給/11月7日よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開 http://cinemaangel.jphttp://cinemaangel.jp
監督:時川英之 出演:藤原令子、本郷奏多、ミッキー・カーチス、石田えり他/1時間34分/東京テアトル 配給/11月7日よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開 http://cinemaangel.jphttp://cinemaangel.jp