新国立競技場建築案は隈研吾氏の案に決定 決め手は「工期短縮」
2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の新たな建設計画で、設計・施工業者を決める日本スポーツ振興センター(JSC)が14日、2つの「技術提案書」を業者選定前に公表した。A案、B案とされた2案は「選定の公正さを保つため」という理由で名前などは非公表となった。
JSC は19日には技術提案等審査委員会を開き、2陣営に対するヒアリングを実施。その後、審査委で独自の評価基準にのっとって採点を行った。審査は委員長の村上周三・東大名誉教授はじめ建築や景観を専門とする7人の委員がそれぞれ140点満点で採点。審査委としての結論をまとめた。
22日には政府が、関係閣僚会議を開き、2案のうち建築家の隈研吾氏(61)が手掛けたA案の採用を決めた。B案は建築家の伊東豊雄氏(74)だった。
菅義偉官房長官は記者会見で「A案のほうが今後の業務の実施方式、工期短縮の実現性、環境計画などが高く評価されたと聞いている」と発言。安倍晋三首相は「工期やコストなどの要求を満たす素晴らしい案だと考えている」と述べた。
A案は総工費は約1490億円、完成時期は国際オリンピック委員会(IOC)が求める平成32年1月より早い31年11月。日本の伝統建築に用いられる「垂木」を想起させるひさしが特徴。隈氏は22日の会見で、自己主張を抑え周囲の木々と一体化した今回の設計を「日本らしさ」と表現。「建物の形ではなく森と融合した建築。それがレガシー(遺産)になり、日本らしさではないかと思う」と語った。
JSCの7人の審査委員が19日に実施した採点で、隈氏のA案は980点満点で610点、伊東氏のB案は602点と8点差の小差だった。項目ごとの採点では、逆に伊東氏が5項目で勝り、建築計画では70点満点中60点となるなど高い評価を受けた。
B案優勢の流れをひっくり返したのは「工期短縮」の評価。採点の結果、A案は177点でB案に27点の大差をつけ、“一発逆転”する形となった。
伊東氏は22日、報道陣の取材に応じ、多くの審査項目の点数でA案を上回りながら、「工期短縮」の項目だけで大きく差がつき、逆転されたことについて「この大差は解せない」と割り切れない表情を浮かべた。
この問題では東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が15日に「B案がスマートに見える」などと発言。馳浩文科相が同日の会見で、「そんなこと言ってもいいのかな」と疑問を呈していた。