RIZIN 山本アーセンがベストバウト級のデビュー戦
年末に帰ってきた格闘技イベント「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2015 さいたま3DAYS」(12月29、31日 さいたまスーパーアリーナ)は2日間で27試合が行われ、かつての大晦日をほうふつとさせるような盛り上がりを見せた。
「SARABAの宴」と銘打たれた29日は、かつての日本の格闘技界にけじめをつけるイベント、31日の「IZAの舞」は未来につなげるイベントと位置付けられた。
29日の第1試合には今大会で9年ぶりの現役復帰を果たした高阪剛が登場。かつてPRIDE、戦極、DREAMに参戦したジェームス・トンプソンと対戦。契約体重を12キロもオーバーしたトンプソンを相手に真っ向から打ち合い、2R1分58秒、TKO勝ちで戦いの場に戻ってきた。
そしてこの日のメーンは桜庭和志vs青木真也という新旧日本人エース対決。まさに“けじめ”にふさわしいカードだった。通常の階級は桜庭が上。5年前にスパーリングしたときには桜庭が圧倒したという過去はあったが、現実はシビアだった。桜庭が見せた攻撃は開始早々に放ったハイキックのみ。青木はタックルからテイクダウンしマウントを取る。ここまで開始1分。以降、青木はパウンドと鉄ついを落とし続ける。必死にしのぎ、時に「まだだよ」と訴える桜庭にストップのタイミングを逸したレフェリー。レフェリーや桜庭のセコンドにストップを促す青木。一本を取って終わらせようにも、そこは頑として許さない桜庭。青木はただただパウンドを落とし続けるしかなかった。やっとタオルが投げ込まれ、TKOで決着。「なぜもっと早く止めないんだ!」と収まらない青木に桜庭が歩み寄り、耳元でなにかを囁くと青木は号泣。大会後の会見場で、桜庭から「これが仕事だよ」と言われたことを明かした青木はここでも試合後のマイク同様に「引退しないでください」と訴えた。
大晦日は女子のRENA vsイリアーナ・ヴァレンティーノで幕開け。大晦日の格闘技中継に女子が登場したのはこれが初めて。シュートボクシング(SB)の世界女王のRENAは今回が総合格闘技デビュー戦。練習中に左手を痛め、コンディションと練習プランの狂いが懸念されたが、かねてから口にしていた「飛びつき腕十字を決めてみたい」を実現。2R2分31秒、腕ひしぎ十字固めで一本勝ちを収めた。
2日間で多くの人がベストバウトに挙げたのがクロン・グレイシーvs山本アーセンの一戦。レスリングでオリンピックを目指す山本はこの日がMMAデビュー戦。組んだらクロンのもの、引き込まれてしまえば山本は逃れられないというのが戦前の予想だった。
山本は打撃で勝負し、あわやの場面を作るも、クロンはグラウンドに持ち込み、腕ひしぎ逆十字。会場中が「終わった」と思った瞬間、山本は体を反転し脱出してみせた。最後はクロンの下からの三角絞めからバスターで逃れようとして墓穴を掘ってしまったが、その無限のポテンシャルを見せつけた。
今回のイベントの大きな柱となっていたのが「ヘビー級トーナメント」。RIZINとアライアンスを組んだ世界中の団体が王者クラスの選手を派遣。8選手によって29日に1回戦、31日に準決勝と決勝が行われた。日本代表の石井慧とベラトール代表のキング・モー以外はほぼ無名。挑戦的な試みではあったが、試合内容で観客を納得させた。1回戦ではイリー・プロハースカが1Rで石井にTKO勝ち。決勝まで駒を進め、モーに敗れたものの鮮烈な印象を残した。
「世界最強の女柔術家」ともいわれるギャビ・ガルシアはレイディー・タパと女子とは思えないド迫力の試合を展開。ガルシアがタパの顔をマットに固定してパウンドを打ちまくるというフィニッシュに会場が戦慄した。
惜しむらくは曙vsボブ・サップの12年ぶりの再戦が曙の負傷により試合途中での判定となってしまったこと。2連敗となってしまった曙に名誉挽回のチャンスは巡ってくるのか…。
またバルトのデビュー戦の相手であったジェロム・レ・バンナが対戦を拒否し、同日に両国国技館で行われていたIGFに姿を現すというとんでもない出来事が起こった。しかしバンナの代役を務めたピーター・アーツが判定で敗れたものの、あわや、という場面を見せ、男を上げた。
K-1から参戦したHIROYAと武尊は、それぞれ西浦“ウイッキー”聡生とヤン・ミンにKO勝ち。上り調子のK-1の勢いをまざまざと見せつけた。
なおRIZINの次回大会は4月17日に名古屋・日本ガイシホールで開催されることが決定した。大会名称は『RIZIN.1』となる。