松岡茉優 大人気コミックが原作の映画『猫なんかよんでもこない。』出演

SPECIAL INTERVIEW

13歳で本格的にデビューし、現在20歳の松岡茉優は、キュートなルックスと確かな演技力で映画やドラマ、さらにバラエティーなどにも引っ張りだこ。今月30日には、大人気コミックスが原作の『猫なんかよんでもこない。』にヒロイン役として出演する。癒しの時間だったという撮影を振り返る。

撮影・辰根東醐

 シリーズ累計発行部数30万部突破という大人気コミックが原作の“猫萌え”映画『猫なんかよんでもこない。』。松岡はプロボクサーをあきらめ、漫画家という新たな夢に挑戦する主人公ミツオ(風間俊介)を優しく見守るヒロイン、ウメさんを演じる。

「最初に原作を読んだとき、写実的な絵柄ではなく、ほんわかとしたイラストっぽい絵だったので、これをどうやって実写にするんだろうと、イメージが全然わきませんでした。主人公の雰囲気も風間さんとちょっと違うかなって思ったので、どうなるんだろう…って。でも衣装合わせで(山本)監督とお会いした時に、フッと“多分こういうのが作りたいんだろうな”っていうのが沸いてきて。そしてその空気感に乗れば大丈夫かな、と。監督はとても繊細な方なんです。俳優よりも繊細な監督ってあまり見たことがないんですけど(笑)。暴言吐いたらお腹痛くなっちゃう人だと思う(笑)。でも見た目はパンクロックのTシャツを着て、ボロボロのジーパン履いて、足元はブーツみたいな(笑)。そんな監督ですが、男の人としてすごく安心できるし、尊敬できる。心のちょっとしたずれも直してくれたりして、撮影時にほかの仕事もあって忙しかった私にとって、この映画の撮影期間はカウンセリングのような、リフレッシュできる時間になりました。監督とは、いろいろお話させていただきましたけど、特に笑顔の出し方についてはとことん話しましたね。ウメさんは幼稚園の栄養士さんなので、園児に対しては全開の笑顔ができるんですけど、ミツオに対してはうまく笑えない。それがクライマックスになるにつれて、ちょっとずつ心の距離感が近づいていくのを、どのような笑顔で表すか。笑顔のニュアンスひとつをとってもこんなに時間を割いてくれて、それを現場が許してくれる。映画ならではの贅沢な時間で、すごくありがたかったしうれしかったです」

 意外にも動物ものの作品は初めてとか。

「現場に入ったときに“あっ、猫がいる”って思いました(笑)。ずっと犬を飼っていたので、実は犬派なんですけど(笑)、友達とかにはすごく猫っぽいって言われます。だから猫はライバルですね(笑)。でも猫って自由だし、自分がやりたくないことはやらないし、基本的にお手とかお座りもしないのに、愛されるのがすごいです。小さいころに祖母と暮らしていた時に外猫で飼っていた猫が、私には絶対になつかない。完全に見下しているので、ご飯をあげても食べないし、それどころか猫パンチをしてくる(笑)。それでも祖母をはじめ周りの人が、当然のようにそれを許してかわいがっているのを見て、愛されているなって、複雑な気持ちでした。だって子どもが猫パンチされてひっくり返っているのに、猫には誰も怒らない(笑)。でも今回、寒い日の撮影で猫を抱いて泣くシーンがあったのですが、腕の中にあったかいものがあると、それだけで幸せな気持ちになりました。そして私が泣くと、心配そうに上を向いてクンクンってしてくれて。カメラが回っていたんですけど、“ありがとう、ありがとう”って言いながら泣いていて…。でもカットがかかってよく観察したら、涙が冷たかっただけじゃないかなって(笑)。真相はどっちか分かりませんが、やっぱり猫って魔性だなと思いましたね」

 松岡といえば映画『桐島、部活やめるってよ』で、その演技力が絶賛され、『あまちゃん』への出演で一気に大ブレイク、一躍全国区となった。

「『あまちゃん』が国民的な朝ドラだっていうのは誰もが思っている事で、その作品に出られ、多くの方に知っていただいたのは、すごくありがたいと思っています。さらに、入間しおりというとても素敵なキャラクターを演じられたことで、その恩恵をたくさん受けたことは間違いありません。ですから、それを謙虚に感謝し、恩返しができるような女優になっていきたいなと思っています。また、今回の映画は短い撮影期間に、すべてのシーンを撮ったんですが、それも『あまちゃん』で鍛えられたからこそできたというのがあります。映画やドラマは、ストーリーの順番に撮っていくやり方ではなく、ストーリーの時間経過とはまったく関係なく撮るやり方が多くて、『あまちゃん』は、特にすごかった(笑)。朝、これからも頑張ろうっていうシーンを撮り、昼は誰かが脱退するというシーン、そして夜には新メンバー加入っていうシーンを1日で撮ったりするんです。それも5年ぐらいの時間差のものを1日で(笑)。だから、そういう撮り方にはなれましたし、鍛えられました」

 プロボクサーへの道を断たれた主人公、漫画家の仕事に区切りをつけ、新たな生活を始める主人公の兄、そんな2人を見守る大家さん、主人公を支えるヒロイン。そしてもちろん猫たち。それぞれの愛おしい日常が描かれている。

「この作品って、いい人しか出てこないんです。根っから悪い人がいないので、見ていて嫌な気持ちにならない。猫好きな人はもちろんですけど、例えば小さな子どもだったら、猫の可愛さだけではなく、動物の幸せなどについて考えられる作品です。動物を飼うということは命と向き合うこと。そんなことを感じていただけたら。また、男の人の人生の曲がり角を描いているので、男女を問わず共感できるところも多い。交差点だったり、Y字路だったり、いろいろな道があり、その都度選択していくのが人生で、そこには私が演じたウメさんのような人がきっといると思うので、自分の人生を重ね合わせて見ていただけるとうれしいですね。と、いろいろ裏テーマもありますが、ただただ猫に癒される映画です(笑)」(本紙・水野陽子)

猫なんかよんでもこない。1月30日(土)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー

 30万人が泣いた、感動の実話コミックスが待望の実写映画化。“犬派”の崖っぷちボクサー・ミツオは、兄貴が拾ってきた2匹の猫、チンとクロの世話を押し付けられ、不本意ながら共同生活を始める。よんでも“まーったく”こない&自由奔放すぎる2匹にいら立ちながらも、彼らとのかけがえのない日々が、やがてミツオの人生に大きな変化を…起こすのか? 猫キュート度200%の感動ストーリー。

【出演】風間俊介、つるの剛士、松岡茉優、市川実和子【監督・脚本】山本透【共同脚本】林民夫【URL】 nekoyon-movie.com/