桜井ユキ 映画『フローレンスは眠る』でヒロインを演じる
映画やCMなどで活躍、現在は月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)にも出演中の桜井ユキが、3月公開の映画『フローレンスは眠る』に出演。伝説のブルーダイヤ“フローレンスの涙”をめぐる、企業と誘拐犯の攻防に陰で関わるという難しい役柄をスリリングに演じる。
舞台は老舗同族企業。現社長の息子が3代目社長に就任するその日の朝、誘拐されたことを発端にストーリーが展開。桜井は新社長の元恋人で、現在専務秘書をしているヒロインの氷坂恵を熱演。
「伝説のブルーダイヤ“フローレンスの涙”が身代金の代わりに要求されるのですが、私は犯人に手を貸す共犯者であり、素知らぬ顔をして働き続ける秘書という役に挑戦しています。タイトルやあらすじだけを見るとすごいサスペンス要素の強い難しい企業ものかと思われるかもしれませんが、そういう一面だけではない作品です。ブルーダイヤはほんのきっかけにしかすぎず、舞台が企業だというだけで、本質は人間ドラマ。登場人物一人ひとりの心情だったり、抱えているものだったりを織り交ぜながら物語が進んでいく、人間の心を丁寧に描いたとても魅力的な心に響く映画です。事件がベースにあって、親子の確執や家族の問題、同族企業の表と裏、そんなものを謎解き的なストーリーで見せていくエンターテインメント性に富んだ作品です」
共演者の山本學、前田吟、山本陽子ら芸達者な俳優がすごみを見せている。
「本当に作品として助けて下さったなというぐらいみなさん素晴らしいです。いい人なのか悪い人なのかどちらか分からない感じで、本当に憎しみに満ち溢れるような顔をする時もあれば、もしかして善人? って思わせる顔をされるときもある。大体こういう人だろうなと思っても、どっちに転ぶか分からないキャラクターは作品にとってとてもいいスパイスになっていると思います。前田吟さんはもともと持っている雰囲気がすごく柔らかい方なので、いい意味で裏切られる感じが見ていただければ分かると思います。大御所の役者さんはみなさんすごいですが、2人だけのシーンで、山本陽子さんは存在感がすごかった。独特の間、表情などひとつひとつにすごく重みがある。重みがあるけど、ものすごく品があるので、お芝居をしていても気をつけないと持っていかれちゃう感じでした。本当に吸い込まれるようなお芝居をなさるので。だから山本陽子さんとのシーンは集中力がすごく必要でしたね。また山本學さんは、後半のシーンでベッドに寝たきりになるところがあるのですが、しゃべらなくてもあんなに感情を表現できるのはさすがだと思いました。完成したものを見た時に、大御所の方がこの作品に重みを出して下さっている部分がすごくあるなと思いました」
現場でのムードメーカーは上司役の村上ショージ。
「失礼ですけど、普通にされていても本当に、常に面白いんですよ。撮影が終わってからも、地方ロケの時とかに、飲みに誘って下さったり、とても気を使っていただきました。主演の藤本さんとよく3人で飲みに行ったりしていたんですけど、すごく素敵な方。映画にはあまり出演する機会がないということで、緊張されていたようですが、監督にすごく丁寧に確認されていたのが印象的で、真面目な方だなと。ずっとニコニコされていて、シリアスなシーンが多い現場が、ショージさんのおかげで和みました」
現社長秘書・牧羽剛(藤本涼)が新社長誘拐の主犯だが、あるきっかけで恵もその計画に関わることに。最初は牧羽のやり方に反発するところもあった恵だが、彼の孤独を知るほどに心を動かされ…。そんな2人のクラブでのシーンから、ストーリーは予期せぬ方向に転がっていく。
「あのシーンは、藤本さんも私も撮る前から、どう演じるか2人で話していましたし、監督たちも結構序盤からあそこのシーンは大切にしたいとおっしゃっていたので、そこにかける思いは大きかったです。剛がすべてを投げ出し逃走していた時に、探していた恵が連絡を受けて指定されたクラブに会いに行くんですけど、そこで感情のぶつけ合いをするんです。これまでお互いずっと口にしなかったけど、心にとめていた思いをぶつけ合う。我慢していた気持ちをぶつけることで、自分が剛にひかれているということを認めたことになりますし、あれ以降、恵にとって、何かつっかえているものが取れた。おかげで撮影後は抜け殻でした(笑)。何回も撮ったんですけど、あまり何回もできるような心情ではない。ですから撮り終えた時はもう空っぽ(笑)」
監督たち?
「監督が小林兄弟なんです。克人さん(兄)と健二さん(弟)のガチ兄弟(笑)。最初はちょっと不安だったんです。2人の意見が割れた時はどうなるのかとか、兄弟とはいえ別の人間ですし、実際始まる前は結構言い合いとかされていたので。でも撮影が始まると、2人が目指しているところとか、撮りたい画とか、求めているものが一致されていたので、すんなりいきました。むしろ、役割分担がきっちりされていて、体が2つある1人みたいな感じ。お二人に共通しているのが、何よりも心情を大事にして、そこに対しては妥協しないところ。何回やろうが、どれだけ時間が押そうが、このシーンは譲れないっていうところは細かく言って下さった。それを兄弟2人に囲まれて言われるので、ステレオみたいでしたけど(笑)。そういう意味でも新しい感覚でした。魅力的な役者さんにキャラクターとしての細かな心の動きを丁寧に演出されているので、サスペンスや企業ものが好きな人だけではなく、すべての人に共感していただける作品だと思います」(THL・水野陽子)
同族企業である中堅化学工業会社の次期社長・佐藤英樹(宮川一朗太)が誘拐された。英樹の命と交換に犯人が要求したのは、幻のダイヤモンド「フローレンスの涙」。ところが、現社長・佐藤善一郎(山本學)は、犯人の要求に応じず、息子の英樹を見捨てるという。社長秘書・牧羽剛(藤本涼)はその決断に驚愕する。なぜなら剛が犯人であるからだ。剛と手を組んだ英樹の元恋人で秘書課に勤める氷坂恵(桜井ユキ)は、剛の暴走を止めようとするが…。剛はこのまま英樹の命を奪いとってしまうのか? 人命を捨ててまで守ろうとするフローレンスに隠された秘密は何なのか?