早見あかり『夢の劇−ドリーム・プレイ−』で本格舞台に初挑戦

 ドラマ、映画などで活躍してきた早見あかりが、本格舞台に初挑戦する。4月に幕開けする『夢の劇−ドリーム・プレイ−』で、神の子を演じる。白井晃、長塚圭史、そして森山開次、豪華な共演陣も含め、初挑戦の場はとても豪華なもの。「こんな“初めて”はもうないかもしれない」。そんな想いを胸に、早見は稽古に励んでいる。

早見あかり(撮影・蔦野裕)

 早見あかりが本格的な舞台に初挑戦する。それも主演で。このニュースが大きく伝わったのは、1月に製作発表が行われたとき。キャスト、スタッフが勢ぞろいし意気込みを語る、この舞台の実質的なスタートともいえる場で、早見は泣き出してしまった。それが大きく報道された。

「やばいやばい、私、泣く。我慢しなきゃって思ったら、余計に涙があふれて来ちゃって。あそこで泣くのは絶対良くないことですけど、出ちゃったんで……。あの記者発表からの1カ月、ずっと本番の舞台に自分が立っていることを考えないようにして、現実逃避してきました。稽古も始まって、今はもう開き直ったというか、泣いたってわめいたって初日は来るし、そこからは逃げられない。現実逃避してる場合じゃない、頑張るしかないなって感じです」
 あの涙、ともに作品を作っていくメンバーには歓迎されたよう。

「私、鋼の心を持ってるって思われがちなんですが、実はガラスのハートの持ち主なんです(笑)。白井さんは、舞台のことをそれだけ思ってくれてるんだねって言ってくれました。それに、私を指名したのは自分だから、もし何かあったら白井さんが選んだくせにって思ってくれていい、と。その気持ちで挑んだら駄目ですけど(笑)、そう言ってもらえたってことは大きくて。白井さんのせい…そういう気持ちを少しだけ残して稽古に臨もうと思ってます。みなさんに教えていただきながら」

『夢の劇−ドリーム・プレイ−』は、大きな作品だ。早見演じる神の娘アグネスは父から地上へ送り出され、それぞれ異なる状況でいろいろな苦難に満ちた人々に出会い、彼らの不満や嘆きに触れ、人間の存在の痛みを感じながら成長。そして彼女が天空の世界へ戻る日がやってくる。神と人間、それぞれの住む世界。物語のスケールも壮大だ。

「初めて(脚本を)読んだ時は、難しい、なんだこれ、わけ分かんないっていう印象でしたが、理解度も深まって、今は変わってきています。白井さんによると、この舞台は夢と同じなんだそうです。現実は順序を踏んで行くけど、夢ってなんの脈略もなくいろんなことが展開する、変なところにぽんぽんワープしたりします。この舞台も脈略もなく場面転換していくけど、パートパートごと見ていくと人の会話の連なりなんです。お父さんに言われて人間界に降りていったアグネスが、遠くから見ていたらきれいだと思っていたことがきれいじゃないことに気づく。真っ白だった子が色づいていく、そういう物語。だから、お芝居を見続けている人はもちろん、私のように理解力がない人でも(笑)、あかりん(早見)の初舞台だから見に行くかっていうような人でも楽しんでもらえるんじゃないかな。ダメな人、ダメだと思い込んでいる人、嫌な人しか出てこないですけど、人間ってそういうところがあるけど、いやあるからこそ人間らしい。人間っておもしろいなと思ってもらえる作品だと思います」

 そんなアグネスに、どう挑む?

「アグネスってそんなに深い役ではないんです、いろんなことを吸収していく子だから。神の子であって、その世界では成長してるんだろうけれども、人間界に降り立つのは初めてで、何にも知らない。だからたぶんですけど、彼女のなかは、どうして?なんで?って状態。そういう意味では、赤ちゃんみたいな存在っていえるかもしれません。だから、そういう、どうして?なんで?という気持ちを素直に出すことができたらいいのかなって思います」

 純粋で、赤ちゃんのように無垢。スポンジのような吸収力もある。そこに自分自身との重なりもあるという。

「純粋とか無垢とは違いますけど、私には気になりだしたら止まらないところがあるんです。大人なら当たり前のことだから考えないこととか、考えても恥ずかしいから言葉に出せないことも、私はすぐ聞いちゃう。そういう子供みたいなところがあるから、(アグネスにアプローチしていくのは)比較的楽かもしれないなって思うところもあるんです。そういえば、本格的な稽古に入る前に白井さんとマンツーマンでの稽古が2日あったんですけど、それが終わった時点で、アグネスみたいなところが私にもあるんじゃないかって言われました。白井さんにお会いした日数は片手でも余るのに、それを聞いてびっくりしました。白井さんには何が見えてるんでしょうね。その時は、そうなんです!って同意しただけで、理由は聞けなかったですけど(笑)」

 初日が近づくほどに稽古にも熱が入る。毎日がこの舞台、この初めての挑戦を中心に回る。「ひとつの作品だけに集中して臨むことも初めてかもしれない」。本人が繰り返すように、初めてづくしだ。

「初挑戦って、年々減っていくものです。映像の仕事をしていてその延長で初めてのゴールデンタイムとか、初めてってキーワードになることも多いですけど、今回の舞台、この初めては本気の初めてだと思っています。これから、これ以上の初めて、初挑戦ってあるのかなってぐらいの。だから、すごく気になります。千秋楽を迎えるその日までが、人生で一番楽しい時間になるのか、最も過酷な時間になるのか。そして自分がどうなっていくのか」

 本格舞台への初挑戦は「みんながやったらいいよっていうから」決めたという。それによって、これまでの守備範囲の外に出た早見。初めての舞台の上できっと新しい魅力を振りまく。(THL・酒井紫野)

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『夢の劇−ドリーム・プレイ−』

【日時】4月12日(火)〜4月30日(土)12・15・18・22日は19時30分開演、13・19・20・25・26・28日は14時開演、16・23日は13時と18時の2回公演、17・24・29・30日は13時開演。14・21・27日は休演。12・13日はプレビュー公演。
【会場】KAAT神奈川芸術劇場〈ホール内特設ステージ〉(日本大通り/元町・中華街)
【料金】プレビュー公演:一般7500円、U24チケット(24歳以下)3750円、高校生以下割引(高校生以下)1000円、シルバー割引(満65歳以上)7000円 本公演:一般8500円、U24チケット(24歳以下)4250円、高校生以下割引(高校生以下)1000円、シルバー割引(満65歳以上)8000円
【問い合わせ】チケットかながわ0570-015-415(10〜18時)
【公式サイト】 http://www.yumenogeki.jp/
【原作】ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ
【構成・演出】白井晃
【台本】長塚圭史
【振付】森山開次
【出演】早見あかり、田中圭、江口のり子、玉置玲央、那須佐代子、森山開次/山崎一、長塚圭史、白井晃 ほか