一木美里のおいしくたべようの会 vol.01『365日を白で過ごす』
多岐にわたって活動している一木美里が、独自の視点で“食”をテーマに語る連載コラム。毎週火曜日更新。
金曜日の朝8:05。駅へ向かってまばらに道行く人々のあいだを逆方向へ進んで、パン屋【365日】の戸を開けると、すっきりとした朝の空気の中にほのかな香ばしさが漂ってくる。深呼吸のあとで一瞬思わず目を閉じてしまいたくなるほど。
無添加で、国産の材料で作られたパンたちがずらっと並んでる。
小さい頃から食べてきたはずの食パン、3種類ある食パンは、小さくて可愛くて、大人になったからわかる優しさみたいなふわふわと良い香りで大好き。
北海道の食パンは焼かなくてもふわふわ。
福岡の食パンは生クリーム入りでまろやか。
365日の食パンは北海道と福岡のブレンド小麦のスクエア型で、食パンのおいしさをしっかり教えてくれる。もちもちしているのに口どけが良い。
5席あるカウンターは店内に売っているパンと淹れたてのコーヒーをはじめとしたドリンクのイートインスペース。
ウッドプレートに乗せられた3種類の食パンとアイスコーヒーの朝ごパンモーニング、コーヒーにはもらったミルクを全部入れて、できるだけ白く白く。
東京で暮らしていると、たまに人の冷たさに悲しくもなり、そして大して傷つくこともなくそれを受け止められるよう順応してしまった”どこか大人な”自分に寂しさを感じる瞬間があって。
口に当たった食パンの白いふわふわを少しづつ口の中に入れて溢れた香りを味わったら、自分自身のグレーになった部分さえ少しづつ白へ戻してくれるような気がしてる。
人に囲まれて働く前の朝食は、プライベートな空間よりもカウンターの中にいるお姉さんたちの接客の会話と様子を目の前に、ミディアムテンポの曲を聴きながらがちょうどいい。
この日、SummerTimeという歌いだしから始まる天使みたいな声のMichelleShaprowのHongKongが静かな音量で流れていて、優しい朝を完璧に近づけてくれた。この歌の主人公もきっと、切なさを明るい気持ちに切り替えて自分を客観視しながら励まして過ごしてる。
明日の朝はテイクアウトしたクランベリーとミルクチョコのパンと、残りの食パンたちを食べてから友達に会いに行こう。
朝の15分がつくるいつものわたし。
スタンダードなものを食べるとスタンダードな自分へ回帰してくって思う。
”足し算をしていくこと。引き算をしていくこと。かけ算をしていくこと。割り算をしていくこと。一つ一つの積み重ねが、365日を充実させていく。”というコンセプトの【365日】は、朝の時間でわたしの心をスタンダードに戻せるスイッチのある大切な場所。
自分の心のキャンバスに黒が混じったら、またこのお店でこのパンを食べて、それから街へ出かけたいな。
【365日】
Place:151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1-6-12
1-6-12 Tomigaya Shibuya-ku
151-0063 Tokyo Japan
TIME:Open 7:00 – Close 19:00
URL: http://www.365jours.jp/top/
歌手、DJ、SamanthaThavasaグループブランドレップ。
1989年12月6日生まれAB型。学生時代より読者モデル、リポーター、バックダンサーなど多岐に渡って活動。
SNSや雑誌を通してファッション、ライフスタイルを発信中。
【公式instagram】▶︎ https://instagram.com/misato_ichiki/