【インタビュー】Crystal Kay、最新アルバムは「聴いてくれるみなさんへの贈り物」
Crystal Kayが最新アルバム『For You』を6月13日にリリースする。タイトルを直訳すると「あなたのために」。プレゼントを贈る時などに必ず添えられる言葉だ。このアルバムは作品を手にしてくれる人、聴いてくれる人への贈り物なんだそう。込められた気持ちの理由、そしてデビュー20周年を来年に控えた今の心境を聞いた。
「安心させたいって思って」
ーーアルバムのリリース日が迫ってきました。今回のアルバムの制作はいかがでしたか?
クレイジーなスケジュールではあったんですが、結構私はプレッシャーに強いし(笑)、その状況がいい集中力を生み出して、全体的に楽しかったかな。完成したアルバムも、メッセージがまとまっているし、1曲目から最後まで、ちゃんと通して聴いてもらえるような作品になっていると思います。
ーータイトル『For You』ですが、聴いてくれる人への贈り物という意味だそうですね。制作した楽曲が、励ましになったり、元気や勇気を与えるものになったらいいなと思う曲が多かったからそうですが……。
そういう曲を作ろうと取り組んでいるというよりは、自然と集まった感じです。
ーーリード曲で、アラサーのリアルを描いたドラマ『デイジー・ラック』の主題歌になっている『幸せって。』が最新作のドライブになっているのでしょうか?
それもあると思います。ただ、こういったテンションは前作の『Shine』の時もあって。自分もファンの方もアラサーというところに差し掛かって、考えることや考えなきゃいけないなってことってあると思うんです、キャリアでも、パーソナルな面でも。そういう時に誰かにパーンと背中を押してほしいっていうのは誰にでもあると思うんです。自分も通ってきたところだから、その気持ちが分かるので、大丈夫だよって安心させたくて。それで自分の中から出てくるのが自然とそういう曲になっているんだと思います。
ーー聴いていると「分かってくれてる!」だとか、共感を覚えます。
「分かる~!」が一番大切なことだというのは、もうずっと思っています。でもその思いが強くなったのは20代後半になってからです。ニューヨークに行って、自分がどうしたらいいのか分からなくてスタックしている時、いろんな人と話す中で気づいたんです。みんな同じところを通ってる、みんな同じような経験をしているって。だったら、みんなを元気づける歌を歌いたいなって。そこから自分のためよりもみんなのためにって、大きくシフトしていったと思います。
「自分から出てきたもののほうが伝わる」
ーーそのせいもあるのでしょうか。作品を重ねるほどに、歌うだけでなく、楽曲の制作にも直接関わることが増えている印象です。作詞でも作曲でもCrystal Kayの名前がクレジットされています。
『Shine』も収録曲の半分ぐらいがそうだったと思いますが、ちょいちょい増えてきていると思います。自分から出たもののほうが伝わるような気がしているんです。曲もメッセージも、自分の色も、総合的に「これはこの人から出てきているんだ」となると聞こえ方も違うと思うんです。何よりも、自分の気持ちが違いますし。
ーー作詞や作曲をされる場合にはどのように進めていくのですか?
プロデューサーと一緒にスタジオに入ってセッションみたいな感じで作っていくんです。今回のアルバムはほとんどUTAさんと一緒に作った曲が多いです。相性もあると思うんですけど、彼はとにかく速いんです。「こういうコードの曲がいいんだけど」って言うと、すぐトラックを作り始めちゃう。私はその間にメロディーを考えてって感じです。
ーーコードから始まるんですね。
ギターをやり始めたからかな(笑)。
ーー最近はライブでも披露されたりもしていますが、ギターはいつから?
2年前ぐらいからです。母がヤマハの教室に行き始めて、私も覚えたいと(笑)。教室には通わずに独学で、ネットでコードを探して練習していました。今は、プライベートで1カ月に1回ぐらい先生に来てもらっています。なぜもっと早くギターをやらなかったんだろうって思います。私にとってはピアノよりも全然相性がいい……。
ーーメロディーについてはどうですか?
鼻歌みたいな感じです。
ーー作詞や作曲により関わるようになったことで、何か変化はありますか?
そうじゃなかったころと比べると、自由度は出てきます。それに自分で作った楽曲は自分の子どもみたいになるから、聞いてほしいと思うし届けたい思いも倍増するし、もっとやろうっていう気持ちにもなります。自分から出して、それを作品として完成させて、パフォーマンスする。自分の実にもなっていくし、ミュージシャンシップというのも湧いてくるんじゃないかな……他の人に曲を作るのもできたら楽しそうじゃない? そんなことも思えちゃうし。
「力強さと芯を声に出す」
ーーアルバムを制作するなかで、もっとも印象に残っていることって何ですか?
「I Just Wanna Fly」と「Summer Fever」をレコーディングした日のことかな。朝5時まで、何度も何度も歌ったんです。今の自分の課題は、力強さと芯を声に出すこと。それを表現したかったんです。
ーーそれを課題だと感じている理由はあるんでしょうか?
これまでは、きれいに、さらっと、うまくみたいな感じだったと思うんです、上辺だけというか。でも30を過ぎると、歌詞や意味が必要とされてくる。それをどうやって伝えるかというと、底から出ている声というかなあ……ワッという声。その方が届くと思っていて。だからただきれいではなく、力強さと芯なんです。
ーーワッという声ですか……
それと、これはテクニックの話になっちゃうんですけど、どれだけまっすぐ歌えるかっていうのもあります。なるべくビブラートを使わないで伝える、みたいな。それもまた別の課題です。難しいです。でもやっぱりすごい人ってでも真っ直ぐバーンと歌う。それが最強というか、原点というか。テクニックとかビブラートってとかって何かをカバーしようとするものでもあるので、そういうのも全部とっぱらったうえで歌いたいし、伝えられたらと思うんです。
ーー最強な歌を歌う人って誰だと思っていますか?
やっぱり、美空ひばりさんかな。あとはやっぱり、ホイットニー(・ヒューストン)ですね。
ーーさて、来年はデビュー20周年。そのプレ・イヤーということもあって、アルバムリリース後は忙しくなりそうですね。
そうですね、20周年に向って行こうイメージで制作していたアルバムですから、いろんなところでパフォーマンスしていきたいと思っています。
(TOKYO HEADLINE・酒井紫野)
NHKドラマ10『デイジー・ラック』の主題歌でアルバムのリード曲「幸せって。」を筆頭に、「サクラ」「Lovin’ You」など全11曲を収録している。DVDにはこの3曲のミュージックビデオと、2016年のライブツアーのCLUB CITTA’での模様を収めた。ユニバーサルミュージックより発売。初回限定盤(CD+DVD)3500円、通常盤2500円。ともに税別。