シュートボクシングの絶対女王RENA【ジョシカク美女図鑑】

絶対女王の意外なリラックス方法「試合が終わったら逃亡します(笑)」

 昨今、女子格闘技が脚光を浴びている。地上波の「RIZIN」はもとより、インターネット中継などでも試合の視聴が可能になり、男子とは違った試合展開や世界観が多くのファンを引き付けている。本紙ではそんな女子格闘家へのインタビュー企画「ジョシカク美女図鑑」をスタート。第1回目は昨今のジョシカクブームの中核ともいえるRENAにインタビュー。

(撮影・辰根東醐)

7月29日の「RIZIN.11」で浅倉カンナとの再戦が決定
 昨今の女子格闘技の盛り上がりを語るうえで、欠かせないのがシュートボクシング(SB)の絶対女王・RENAの存在。SBで圧倒的な強さを見せていた彼女は2015年大晦日にRIZINで初めての総合格闘技(MMA)の試合に臨み、鮮やかな飛びつき腕十字で一本勝ちを収めるという離れ業を演じ、一気にファンの目をジョシカクに向けさせた。

 以後、ジョシカクのアイコンとして走り続けてきたRENA。昨年行われた「RIZIN女子スーパーアトム級トーナメント」もRENAが優勝するものと誰もが思っていたはず。しかし決勝で浅倉カンナに敗れてしまう。そして4カ月の沈黙の末、5月6日のRIZIN福岡大会で浅倉に再戦を要求。5月29日、ついに「RIZIN.11」(7月29日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)での再戦が決定した。

「自分の中では“再戦するとしたら年末かな”という思いはあったんですが、もう決まっちゃったから“やるしかない”って感じです。特別な感情は今は特にないです」

 昨年大晦日の敗戦はMMAで初の敗戦。SBにさかのぼっても7年ぶりの敗戦。ここまでどんな時間を過ごしてきた?

「普通にオフらしい時間を満喫して、またボチボチ練習を再開してという感じでした」

 精神的に落ち込むようなことは?

「MMAというのは私にとってのチャレンジであって、その途中での負けなのでそんなに落ち込むようなことはありませんでしたし、専門分野の打撃でやられたわけではないので引きずるようなこともありませんでした。ただ私の階級でトーナメントが開催されたのに取れなかったというのは非常に残念だし、期待してくださった皆さんには申し訳ないし、やっぱり悔しいという思いはあります。でも、これも挑戦の過程と考えればいい負けだったのではないかと思います」

 今、女子格闘技が大きな注目を集めている。このブームを引っ張っているのはまぎれもなくRENA。自身はこの状況をどう思っているのだろうか。

「今までの中で一番高い波が来ているんじゃないかなとは思います。私はMMAでは初心者ですが、ポッと出の女子格闘家ではなく10年選手としてずっとド真ん中を走って来た自負があります。そんな私から見ても2015年からRIZINが始まって、いろいろな選手に注目が集まりストーリーも生まれ、より多くのファンの方々に女子格闘技のことを知ってもらえてきたと感じています。これからももっと新しいいろいろな選手が出て来ると思いますし、ベテラン選手も注目されて面白い試合がどんどん組まれて盛り上がると思うので、爆発するかしないかはリングに上がる選手たちの頑張りしだいですよね」

 今の人気をキープし、なお高いところに持っていかなければいけない。

「そうですね。そのための7月の再戦だと思っています。選手たちは日が当たりだしたから頑張っているのではなくて、日が当たる前から頑張ってきた選手たちにやっと日が当たりだしたという状況。MMAでも立ち技格闘技でもまだまだ実力のある選手はたくさんいて、そんな選手たちにも日が当たるようになった時に、またさらに大きくて高い波がやって来るのではないかと思います」

 RENAは2007年、高校生の時にデビュー。現在まだ26歳なのだが、プロとしては今年で11年目!! 実はものすごいキャリアなのだ。

「今年の7月で11年ですね(笑)。振り返ってみると長かったような短かったような、苦しかったような楽しかったような。でも私はまだ“楽しかった”と思えることが多い選手だと思います」

 そんななかでの2015年のMMA挑戦だったわけだが…。

「3年前、あのタイミングでなければ総合格闘技にはチャレンジしていなかったと思います。もっと後だったら、格闘技人生の終わりに向かっていたと思うんです。本当に3年前にベストの状態でオファーが来て、自分の気持ちもチャレンジしたいという方向に行った。すべてがいい方向に行って、今があるという感じです」

 立ち技では敵がいない状況だった。今もその状況は変わっていないのでは?

「どうなんでしょう。強い選手は次々と出てくるので、よく分からないんですが、基本的には立ち技では絶対に負ける気はしないです。総合と立ち技では距離感が違うし、ルールも変わってくるので、立ち技をやる時は以前のような練習に戻さないといけない。それを切り替えることはそう簡単ではないんですが、負ける気はしないですね」

 では7月には「Girls S-cup ~48㎏世界トーナメント2018~」(7月6日、東京・TDCホール)と「RIZIN」でMMAの試合を2試合するが、しばらくはMMAの試合が続きそう?

「Girls S-cupも10年目になるんですが、まさかそこでMMAをやるとは思ってもいませんでした。まあ、これも流れなのかなと思います」

「一度は本場のアメリカでMMAの試合をしたい」
 基本的に流れには身を任せるタイプ?

「そうですね。最初は“えー!! ”って、ちょっと文句の一つや二つは言ってみようかなって(笑)。でも結局は流れに任せていますね」

 格闘技を始めたときも流れに身を任せた?

「格闘技は自分からやりたいと思いました」

 プロになってからは流れに任せることが多かった?

「ほめられることがうれしいと感じるタイプなんです。頑張った分、ほめてもらえる、みたいな(笑)。シュートボクシングのシーザー武志会長はすごくほめてくださるので、いつも乗せられてしまいます(笑)」

 今後の現役生活について考えることはある?

「あまり考えてはいないんですが、あと5年はできないんじゃないかとは思っています。30歳…30歳までいけるかなって感じです。でもやはりMMAに足を踏み入れた以上は団体はどこでもいいので、一度は本場のアメリカで試合をしたいなとは思っているんです。RIZINさんの大会がアメリカであれば一番いいんですが、1回はそういう空気に触れたいなって思っています」

 いまの段階でやり残していることは?

「精いっぱい、やれることはやってきて、今のところ自分のベストは出せているんじゃないかとは思っています。ただ、MMA選手としてはやはりまだダメな部分、自分の弱い部分が明確に分かっているので、そこを埋めることに今は必死な状況です」

 それが目標ということはMMAをやっていなかったら本当に引退していたかも?

「多分、もう辞めていると思います」

 目標がないときつい。特に格闘技は。

「そうですね。それにこれまでは勝って当たり前と言われることが多かったのでリスクしかなかった。その点では7月の浅倉選手との試合は本当に久しぶりの挑戦というか、久しぶりにフラットな状態で出られるので、逆に調子がいいというか、精神的にはだいぶ楽ですね。浅倉選手のほうがきついと思いますよ、チャンピオンなので(笑)」

 カード発表会見では「大晦日の時はカンナ選手じゃなくてカンナちゃんだった」と振り返った。その辺はRENA選手のほうが割り切れるタイプと思っていた人も多いのでは。

「情に弱いんです(笑)」

 浅草の人たちと触れ合うようになってからなおさら?

「そうですね(笑)。あとはトーナメントだったので、“上がってくるなよ”と思っていたら上がってきちゃった。反対のブロックは浅倉選手ではなくアリーシャ・ガルシア選手が上がってくると思っていたんです。ガルシア選手がマリア・オリベイラ選手に負けて、そこで予想が崩れた。ガルシア選手と浅倉選手が再戦したらどうなるだろう。でもまだガルシア選手のほうが強いかな、なんて思っていたら、“ああ、カンナが上がって来ちゃった”という感じでした」

「将来的にはドッグカフェを開きたい。犬とたわむれて暮らしたい」
 もともと美人格闘家ということでメディアで取り上げられることも多かった。最近は芸能活動なども輪をかけて多くなったと思うが、日々の生活パターンってけっこうハードなことになっているのでは?

「練習時間は削らずに、休みの時間に芸能活動を入れてもらっています。ネイルサロンや美容サロンに行くスケジュールなども共有しているので、空いている時間にいろいろな仕事を入れてもらっている感じ。練習にはそんなに影響はないですね」

 試合後は?

「私は試合後は1回“ぼん!”と休みますね。年末の試合の後は1カ月は休みます。それ以外はけっこうコンスタントに試合が続くので、休めたとしても長くて2週間ですね」

 その休み期間はどんなことを? リラックスタイム?

「逃亡します(笑)。海外旅行に行ったり。最近は沖縄に行くことが多いです」

 逃亡がリラックスの秘訣?

「そうですね。一切練習はしない(笑)」

 あまり連絡しないで、って感じ?

「いえ、そこまでは。むしろ楽しんでいるところは広めたいので “見て見て、きれいな海でしょ”みたいな感じで誰にでもすぐに連絡しちゃってます(笑)」

 ネイルとかメイクも気にするところは普通の女子ですね。

「そのへんは女子なので、少しでも可愛いって思われたいし、人前に出る時に少しでもお見苦しさを見せたくないというか(笑)。ぼっさぼさの髪型でテレビに出るのはちょっと違うじゃないですか。男性が泥臭いのはかっこいいってなる場合もありますが、女性が泥臭くしていても、かっこいいとはあまり思われないと思うので、そこは女性として、ちゃんとしておきたいとは思っています。でも私は少しでも可愛いって思われたいタイプなんですけど、かっこいい女の人になりたい人もいる。浜崎さんなんて、すごくカッコいい。選手それぞれ魅力があって、見せ方にもいろいろなパターンがありますよね」

 先ほど、「30歳まではやれないかも」と言っていた。その後の人生について考えたりはする?

「今もフレンチブルドッグの“おはぎ”と“みたらし”という愛犬を2匹飼っているんですが、将来的にはドッグカフェを開きたいと思っているんです。あと自分でいろいろなデザインをすることが好きで、今もコスチュームやグッズは自分でデザインしているんですが、そういうことをやりつつ、ワンちゃんグッズも作ったりして、犬とたわむれて暮らしたいと思っています。犬は実家でも飼っていて小さい頃から大好きなんです」

 ちなみに猫は?

「猫もかわいいんですけど、部屋の低いところはもちろん高いところに飾りなんかを置いててもヒョイって上ってイタズラしたりしちゃうから無理かなって。だからマンチカンとか足の短い子だったら高いところには登れないから、飼いたいとは思います。フワフワして癒されますし。でも猫と私は性格が似ているから多分合わないかな? 私も気まぐれだし、ツンデレだし(笑)。私のかまってほしいタイミングと全然違ったらいつも喧嘩になっちゃう」

 将来、結婚して出産ということは?

「それは最終的なゴールですね。だけどやっぱり、自分で何かをしておきたいですね」

 格闘技とはどういう付き合い方を?

「やはりずっとお世話になっているので、ジムにはちょいちょい遊びに来たいなと思っています。 “イケイケゴーゴー”って感じでチャリンコをこいでランニングにつきあったり(笑)、ミットを持ったりということはすると思います。遊び程度にダイエット目的で苦しくない練習をしたいなって思っています(笑)」

 試合時の入場シーンでは満面の笑みで会場を一気に明るくしたと思えば、ゴングが鳴ると一転、非情な打撃で相手を悶絶させる。インタビューでも試合のことを話すときはファイターのたたずまいで、プライベートな話題の時は普通の女子の雰囲気にスイッチが切り替わる。多分この2面性がRENAの魅力なのかもしれない。

 RENAの7月は6日に「SHOOT BOXING Girls S-cup ~48㎏世界トーナメント2018~」で復帰戦(MMAルール。対戦相手は後日発表)を行い、29日には「RIZIN.11」で浅倉カンナと再戦と、約3週間の間隔で2試合を戦うという前代未聞のハードな日程となっている。果たして勝って女王の座を取り戻すことはできるのか? 試合はもちろん、間の3週間も彼女の動向から目が離せない。(TOKYO HEADLINE 本吉英人)