音のない世界で会話を楽しむ「ダイアログ・イン・サイレンス」開催中

アテンドのもとみんなで「手のダンス」

聴覚障がい者のアテンドで“言葉の壁を越えた対話”が成立
 音のない世界で、聴覚障がい者の案内のもと“言葉の壁を越えた対話”を楽しむことができる「ダイアログ・イン・サイレンス」が現在、東京・新宿の「LUMINE 0 NEWoMan」で開催されている。

 これは日本では昨年夏に初めて開催され3500人が経験したイベント。

「ダイアログ」と聞くと「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を思い浮かべる人も多いかもしれない。ダークの暗闇の世界が音のない世界に置き換わったものと思えば分かりやすい。

 参加者は音を遮断するヘッドセットを装着し、何人かのグループで聴覚障がい者のアテンドでいくつかの部屋をめぐる。そこでのルールは言葉を発してはいけないこと。もちろんヘッドセットを外してもいけない。

 各部屋で参加者たちはさまざまな体験をする。7月27日にはプレス向けの体験会が行われたのだが、ほとんどが初対面とあって、名前も知らなければふだんの癖も分からない。その中で“会話”を成立させるために必要なのは身振り手振り、顔の表情といった表現力と、それを受け止めるための観察力と集中力。

 最初のうちは音が聴こえないこと、声で伝えられないことで“一人だけ分からなくて、足手まといになったらどうしよう”といったことを考えてしまうのだが、聴覚障がい者のアテンドは的確で最初の部屋からなんとかスムーズに“会話”ができるようになるのは不思議で貴重な体験。

7月29日には「ダイアログ事業に関する説明会」が開催された

「東京2020オリンピック・パラリンピック」へ向けて貴重な体験
 同イベントを主催するのは「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」。これまで“暗闇の中での対話”をテーマとする「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と75歳以上の高齢者の体験談を聞くことで命や生き方、時間について世代を超えて考えるプログラム「ダイアログ・ウィズ・タイム」を開催している。
 
 代表理事の志村季世恵さんは7月27日に行われた記者会見で「私は30年間セラピストをやってきた。日本の子供たちが世界で一番孤独を感じていて、自殺率もどんどん上がってしまっている。この状況をどうにかできないかと思っている時にダイアログと出会った。カウンセリングではどんなに頑張っても3カ月かかるところがダイアログではたった90分で“人っていいな。人って信じられるんだ”とか“助け合うっていいな”“言葉を交わすということはなんて素敵なことなんだろう”と感じることができる」などとその意義を話した。

 この「ダイアログ・イン・サイレンス」については言葉の壁を超えた対話であることから来る「東京2020オリンピック・パラリンピック」へ向けて、ホスピタリティーを高める効果も期待されている。

 会期は8月26日まで。