萩原聖人「プロ雀士」後初仕事で「俳優にどっぷりつかる」

左から細見大輔、ラサール石井、萩原聖人、植田圭輔

舞台『死神の精度~7Days Judgement』公開ゲネプロ
 人気作家・伊坂幸太郎の小説を舞台化した『死神の精度~7Days Judgement』の公開ゲネプロが8月30日、東京・東池袋のあうるすぽっとで行われた。

 同作は「死神」を主人公とする物語。死神の仕事は「死」を実行される対象となった人間に近づき1週間調査し、その実行が「可」か「見送り」かを判断し報告するというもの。
 
 今回、その死神が担当するのは藤田というヤクザの生死の見定め。藤田は殺された兄貴分の敵を取ろうともくろむ昔気質のヤクザだった。

 同作は2009年に初演され、今回はヤクザの藤田役のラサール石井以外のキャストを一新しての再演となる。

 死神の千葉役には萩原聖人、藤田を慕う若いヤクザ・阿久津を植田圭輔、千葉の同僚の死神を細見大輔が演じる。

 ゲネプロ後に行われた会見では
 
 萩原「演出の和田さんの言うとおりにやってきて、カッコいいものになっているのではないかと思っています」

 石井「9年前の初演には僕だけ出ているんですが、また一からという感じでまだドキドキというか緊張している。今日も失敗せずにできたかな、という状態(笑)」

 植田「幕が開いて、お客さんがどんな反応をして、どんな感想を持ってくれるのかなというワクワクと、まだまだ本番が始まってからも微調整とかやらなければいけないことがたくさんあるので、改めて気合の入ったゲネプロだった」

 細見「初日が永遠に来ないんじゃないかというくらいみっちり緻密な稽古の期間を経て、この場に立てている。後は和田さんの演出を信じて、後は本番に向けて頑張るだけ」

 などとそれぞれ話した。

萩原と石井が緊迫感のあるやりとりを展開

ラサール石井は過酷な和田演出を振り返る
 萩原は作・演出の和田憲明とは1993年にも、ともに舞台をやっているのだが、「僕もそうだが人って25年経ってもそんなに変わらないなって思う。でも変わっている部分も確実にあって、それが成長というかいい方向に変わっていて、いいものは変わっていないというふうに信じてお互いにやっていたような気がします」と今回の稽古場を振り返る。

 石井も「みんな真面目で食らいついて取り組んでいた。初演では本番が始まって、セリフも安定してきてまとまってきたと思った日に、和田さんに“全然ダメだった”と言われた。和田さんは安定も嫌い。常に流動的に“今”を演じていかなければいけないから精神的にもすごく大変。初演では香川照之さんと中川晃教さんとやったんだけど、今でも会うとハグしあうくらい、同志といった感じ。今回もそうなるんじゃないかと思う」などと話した。

石井(奥)の迫真の演技

稽古終わりに出演者4人で卓を囲むことは…
 萩原といえば、7月に日本プロ麻雀連盟に加入し「プロ雀士」として活動を始めたばかり。新しくできた麻雀のプロリーグ「Mリーグ」でもドラフト1位で指名されたことでも話題を呼んだ。

 本作は麻雀プロになってからの初仕事なのだが萩原は「2つのことに真剣に向き合うということに関しては、1回すべてがリセットされた気はします。俳優の仕事をやるうえでも1回リセットされてすごく新鮮な気持ちで向き合えるようになった。僕の中では両方をちゃんと成立させられた時には僕の人生これで良かったと思える気がしているので、そういうつもりで2つの人生、両方を極めたい。その第1歩としてはこの作品は打ってつけだった。俳優にどっぷりつからなければできない演劇だと思うので、そういうふうに切り替えてやっていきたい」などと話した。

 ちなみに今回は出演者が4人と卓を囲むにはちょうどいい人数だったのだが、稽古が過酷でそういった時間はなかったよう。ただ「僕がドラフトされてプロになって、稽古中にたまたま誕生日があったんですけど“誰もおめでとうって言ってくれないな。つれない現場だな”と思っていたら、稽古終わりに麻雀卓を模したような、ものすごいケーキを用意してくださっていて、初めてそこでみんなを信用することができた(笑)」と稽古場でのエピソードを明かした。

 同作は8月30日から9月9日まで東京・東池袋のあうるすぽっとで上演される。