最強地下アイドル 川村虹花【ジョシカク美女図鑑 第11回】
女子格闘家の素顔に迫るインタビュー企画「ジョシカク美女図鑑」。第11回は「RIZIN 平成最後のやれんのか!」(12月31日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)に出場する川村虹花。
川村は地下アイドルグループ「仮面女子」として活動しながら、今年3月にDEEP JEWELSで総合格闘家としてプロデビュー。以降、今年開催されたDEEP JEWELSの大会に全戦出場し2勝2敗の成績を残した。当初からRIZINへの出場を目標に掲げ、勝利の後は視察に訪れたRIZINの榊原信行実行委員長に「私をRIZINに出させてください」とアピールを続け、ついに今回参戦が実現。「格闘代理戦争3rdシーズン」に出場したKRAZY BEEの「あい」と対戦する。
アイドルとしての活動が休みの日も朝から晩まで練習。でもまだまだやらないとダメ
プロデビューが今年の3月。まずはここまでを振り返ってください。
「私は今まで格闘技をやったことがなかったので、とにかくゼロからのスタートでした。総合格闘技なので寝技とか打撃とか覚えることがたくさんありました。とにかく練習をしてみんなに追いつけるように頑張ってきました。休みもほとんどなく、試合前と試合後に3日間くらい休むぐらい。アイドルとしての活動が休みの日も朝から晩まで練習していました。でも自分的にはまだまだやらないとダメだなと思っています」
やれていることとやれていないことというのはあると思うが、それは自分の中では分かっている?
「頭には入っていても体がなかなか動かなかったりとか、試合で出せなかったりということはあります。試合を重ねるごとに反省点がいっぱい出てきて、その反省点を生かして、次にどういう練習をするかとか、相手が打撃の選手なのか寝技の選手なのかによっても練習メニューを変えたりといったことをコーチと相談しながらやっています」
やれていないことがあるのは仕方がない。でも1試合ごとに格闘家として成長しているように見える。それは自分でも感じる?
「そうですね。とにかくガンガン行くというよりは、試合の展開を考えて、相手の動きに対応して自分はどう動いたらいいのかといったことは徐々に頭には入ってきているので、そういう面ではちょっとずつ成長はしているのかなとは思います」
試合中にセコンドの声は聞こえる?
「はい。すごく聞こえます。コーチの声は通る声なのですごく聞きやすい。それに的確なアドバイスをいただけるので、試合中にその通りに動けばポジションが取れたりもする。本当にセコンドの声は大事ですね(笑)」
キャリアが浅いと試合に没頭しすぎてセコンドの声が聞こえない場合や、聞こえても指示通りにやらない選手もいるという話もよく聞く。ちゃんと聞こえて、その通りにできるのはすごい。
「本当にコーチを信じてやっていますので」
試合を見ていると体幹の強さを感じる。そういう自覚はある?
「足とお尻の筋肉には自信があります。体幹というか、タックルなどをされた時にこらえる力は強いと思います」
それは日ごろのダンスの練習が大きいのでは?
「そうですね。それもあると思います。ステージでも結構足は使いますので」
目標としている選手とかファイトスタイルは?
「誰かひとりとは決められないんですけど、私は一緒に練習してくださっている杉山しずか選手や村田夏南子選手に憧れています。練習でも与えられたメニューの後にも自主練というか残って研究したりしている姿を見て、“ああ、こういう人が強くなるんだな”と思いました。実際に凄い強いですし(笑)。そういう試合以外のところでも一緒にいて学ばなければいけないところがたくさんあると感じますね」
自分の総合格闘家としてのセールスポイントはどんなところ?
「ゼロから始めている分、打撃とか寝技とかを平均的に覚えているので、教えられたことが体に素直に入っているようには思います。どこかがずば抜けて特化しているわけではなくて、対戦相手にどういう対策を練るかということで、練習内容を変えたりとかしているので、あえていえばオールラウンダーなのかと思います」
アイドルが格闘技に挑戦する。無謀だとは思ったが自分で考えて一歩踏み出した
RIZINを見て総合格闘技を始めたという。それはいつの大会を見て、どう思ったから?
「本当に格闘技の番組が大好きだったので、もともとテレビでは見ていました。親が格闘技が好きなので年末もRIZINを見ていましたし。気になるようになってから生で見に行ったんですが、それは去年の夏くらい。初めて生でRIZINを見て、とにかく選手の入場から何かワクワクしました(笑)。煽りVが流れて、扉から選手が出てきて、一本道の花道がリングにつながっている。すごい大会だと思いました。試合もトップファイターの方たちが出ているので、目が釘付けになって瞬きができないくらいすごくて本当に感動しました」
普通は「すごいな」で終わるところが、「自分もやりたい」と思って実際に始めた。それはなかなかできないこと。なぜ、その一線を飛び越えられたのか。
「私は仮面女子として活動してきて、仮面をかぶって大勢でライブをしているんですが、前から個人的にも何かをやってみたいと思っていました。でもたくさんのアイドルがいる中、何に挑戦しようかと考えて、人と違うことがしたかったということもあって、今まで誰もやったことがなかった“アイドルが格闘技に挑戦する”ということを選びました。本当に無謀な挑戦だとは思ったんですが、自分で考えて一歩踏み出しました。そして事務所に相談したら事務所も“本当に大丈夫なのか?” ってびっくりしていたんですけど(笑)」
反対はされなかった?
「そうですね。やってみたいということを結構受け入れて考えてくださるので」
現在の生活パターンは?
「ライブがない日は午前中に練習をして、その後、体を休めたり整体に行って体のメンテナンスをしたり睡眠を取ったりします。そしてまた夕方から夜10時まで練習。ライブがある日は、午前中から夕方4時くらいまで練習してから劇場に入って夕方と夜にライブを2回するという感じ。ライブがある日は帰るのは0時を回るくらいになってしまいます。そこから練習着や衣装なんかの洗濯をして、お風呂に入ってということをしていたら1~2時になっちゃって、起きるのは8時くらい。5時間くらい寝られたらいいかなという感じです」
そういう生活の中で食生活に気を付けて体重のコントロールもしないといけない。
「なるべく家で作るようにはしています。簡単なものなんですけど」
格闘技をやって来なかったことを今になって後悔。小さい頃からやっていたらもっと強くなれたと思う
直近の目標と長い目で見た目標を教えてください。
「直近の目標はRIZINに出させていただくという大きなチャンスをいただいたので、いい試合をして勝つことです。長い目で見た目標は、今回はチャンスを与えるということで出させてもらうことになったので、次は“川村選手に出てほしい”と言われる選手になることです」
向こうからオファーが来るようになって、RIZINのレギュラーになることですね。
「そうですね。それが理想です (笑)」
そうなると大晦日にRIZINとNHKの紅白に両方出演という野望に一歩近づくことになる。
「その夢が叶ったら本当にうれしいですね(笑)。それが一番の目標だと思います」
例えば将来結婚して子供が生まれた時に、子供がアイドルと格闘技のどっちかをやりたいと言ったらどっちを勧めます?
「ああ~。私は格闘技を勧めます(笑)。私は格闘技をやって来なかったことを今になって後悔しているんです。小さい頃からやっていたらもっと強くなれたと思う。だから小さい頃からスーパー赤ちゃんにしたい(笑)」
確かに小学生や中学生のころから格闘技系のスポーツをやっていた選手と比べるとハンディかもしれない。でも運動神経はかなりいいのでは?
「いいほうだとは思います。でもジムの周りの方と比べると違いすぎます」
対戦者のあいは学生時代にレスリングで輝かしい実績を誇り、全日本アマチュア修斗でも優勝経験がある強豪。しかし川村が練習拠点としているリバーサルジム新宿 Me,Weには村田夏南子がおり、あい対策はばっちりなのでは?
「夏南子さんがいるからといっても実戦でやるとなったら私は夏南子さんのようには動けないので…。でも、アドバイスをもらって対策は立てています。あい選手は強いですし、相当気合も入っている。でも気持ちだけは負けていられない。最後に勝負を分けるのは気持ちだと思っています」
現在、女子格闘技が盛り上がっている。この状況についてはどう思う?
「すごく勢いが出てきて、DEEP JEWELSもいつも満員でチケットが取れない状態。テレビでもRENA選手とか浅倉カンナ選手をたくさん見るようになってきた。私も女子格闘技がもっと広まってほしいなって思っています。私は女子格闘技の試合を初めて見た時に、女性が殴り合っている姿が本当にカッコいいと思って(笑)。男の人が殴り合っているのは結構見慣れているというのも変ですけど、格闘技といえば男の人が殴り合うというイメージだったので、女性がこんなにも熱くなっているということをもっと世間の人に広めていきたいと思います」
今回勝ったら、その役を担うことにもなる。
「たくさんの方の目にも留まると思います。そこでぼろぼろに負けていたら、やはりダメだと思うので、勝って有言実行したいと思います」
一般的には「仮面女子の川村虹花」と「総合格闘家の川村虹花」の2つの顔を持つ――というイメージなのだが、川村本人の中では「仮面女子の総合格闘家、川村虹花」と一本化されているよう。だからアイドルと格闘技の二刀流で多忙を極めるが、インタビュー中でも「どちらも辞めるつもりはない」と答えていた。
この試合、川村にとっては勝てば「実力」という裏付けを手にできるが負ければ「やっぱり」と言われかねないもの。一方のあいにとっては大きな話題を集める中で勝てば一気に名を売るチャンスであるが、負ければ「意外に大したことなかった」などと言われかねないもの。「話題先行」としたり顔でいう向きもあるが、実はともにハイリスクハイリターンのシビアなカード。この試合は午前の大会の第1試合で行われる。大晦日のRIZINは朝からハードな試合が続きそうだ。(本紙・本吉英人)