謎すぎる!ゾウでもサメでもない「ゾウギンザメ」が池袋で日本唯一の展示公開



 生きた化石と言われるシーラカンスよりも進化速度が極めて遅い脊椎動物「ゾウギンザメ」が15日、池袋のサンシャイン水族館にて公開された。

 ゾウギンザメはギンザメ目ゾウギンザメ科で、名前に“サメ”とついているがジンベイザメやホホジロザメといったサメとは別のグループ(全頭亜綱)に属する生物。太平洋南西の大陸棚や砂泥底環境に生息し、普段は水深200メートル付近にいることが多いが、産卵時期は卵を産むために浅いところに上がってくる。ギンザメ目は3科40種から成り立っており、そのうちゾウギンザメ科は3種で、いずれも南半球の海に生息。日本近海では見ることができない。

 今回、オーストラリアからサンシャイン水族館にやってきたのはメスのゾウギンザメ4個体。オーストラリアやニュージーランド以外で展示している水族館は世界的にも少なく、現在、日本で展示しているのは同館のみ。各個体の様子を見ながら展示していくとのこと。



 日本で珍しいだけでなく、その見た目もかなりユニークなゾウギンザメ。ゾウの鼻のように伸びた吻端(ふんたん)部を持ち、大きな胸ビレを上下に動かして羽ばたくように水中を遊泳する姿はまるで“ダンボ”のよう。吻端部にはロレンチーニ器官といわれる電気受容体が発達しており、微弱な生物電流を感じとって海底にいるエビやカニ、貝などを見つけ出すのに適している。



 さらに謎めいているのが進化速度の遅さ。2014年のワシントン大学医学部の研究発表によると、ゾウギンザメのDNA解析を行い他の脊椎動物ゲノムと比較したところ、ゾウギンザメのゲノムの進化速度が既知の脊椎動物の中でも極めて遅いことが判明。これは4億年近く姿を変えていないとされるシーラカンスよりも進化速度が遅いことになるという。



「ゾウギンザメはまだ謎が多く、調べる面白さのある生物」とサンシャイン水族館の二見武史さん。「今回の4個体はもともとオーストラリアで8カ月ほど飼育されていたためエサやりなども問題なく、エビやアジをよく食べています。今回の個体は約60cm、大きさから見ておよそ4歳から6歳ほど。飼育下で15年ほど生きた記録があるので、もっと長生きする可能性はありますね」。性格的には温和だというが「背中には弱い毒を持った鋭いトゲがあるため、飼育員も気をつけながら扱っています」。ちなみにオーストラリアではわりとよく釣れるため食用としても流通しており、フィッシュ&チップスなどにするとおいしいのだとか。

 サンシャイン水族館では今後、新たにオスや卵の入手も積極的に進め、入手できた際には国内初のゾウギンザメの繁殖を目指すとのこと。