グカ・ハン『砂漠が街に入りこんだ日』の魅力を語り尽くす
9月26日、原正人×斎藤真理子、韓国からフランスへ 越境して見出した「私(je)」の物語@本屋B&B
近年静かなブームの韓国文学。韓国出身ながらフランス語で表現するグカ・ハンのデビュー作をそれぞれの立場から読み解いた
韓国から離れフランス語で表現する意味とは?
韓国からフランスへ渡り、今年1月にフランスで鮮烈なデビュー飾った新人作家グカ・ハン。世界に先駆けて翻訳されたデビュー短編集『砂漠が街に入りこんだ日』(リトルモア)の発売を記念し、同書の翻訳を手掛けた原正人と、韓国現代文学を積極的に翻訳する斎藤真理子を招いたイベント「韓国からフランスへ 越境して見出した『私(je)』の物語」が下北沢の本屋B&Bより配信された。司会は編集者・ライターの小林英治。
ソウルで造形芸術を学んだあと、2014年に26歳で渡仏し、パリで文芸創作を学んだというグカ・ハン。普段はバンド・デシネと呼ばれるフランス語圏の漫画の翻訳を中心に活動する原は、編集者から同書の翻訳を打診され「すごく読みやすくて美しいと思った」といい、「コロナ禍で訳したこともあって、エキサイティングで楽しい仕事でした。翻訳書を多く出していない出版社で、まったく無名の韓国人作家のフランスデビュー作、自分がバンド・デシネの翻訳者という自覚がある中で小説を翻訳することもチャレンジだった」と振り返る。小林はその感想を「イメージが豊富。自由に読むことができて想像力を膨らませていける小説」と表現した。
同書に帯文を寄せた斎藤は「韓国人という民族は旅をする人々。各地の言語で創作する人もたくさんいますが、フランスで創作しているというので興味を持ち、一読して『なんじゃこりゃあ』と非常に新鮮だった」と言及し、“次々に思ってもみないイメージに襲撃されて感情が停止してしまう”という読後のメモを明かす。最初の短編「ルオエス」の冒頭は、そっくりそのまま韓国語に置き換えられるといい、フランス語経由の日本語に韓国語の骨格が残っていることにも感嘆した。