【インタビュー】多国籍都市「新大久保」に生きる人々を追った『ルポ新大久保』著者・室橋裕和さん 

 皆さんは「新大久保」という街にどのようなイメージを抱くだろうか? 映画『パラサイト』や配信ドラマ『愛の不時着』の影響で、第4次韓流ブームに沸くコリアンタウン? もちろんそれもそうなのだが、現在は人口の約35%が外国人で、多様な文化が入り混じった多国籍タウンでもあるのだという。そんな新大久保に移住し、約2年におよびさまざまな人々を取材した書籍『ルポ新大久保』(辰巳出版)が話題だ。著者の室橋裕和さんに話を聞いた。

 『ルポ新大久保』は新大久保に住んで書き上げたそうですが、室橋さんが新大久保に興味を持つようになったきっかけは?

「この本の前に『日本の異国』(晶文社)という本を出版したんですけど、取材で首都圏の外国人コミュニティーを回るようになりました。その中で新大久保が一番いろんな国の人間が集まっていて、ミックス感があるところにそそられたんです。新大久保で一冊本が成り立つかもしれないという感覚があったし、実際に住んでみたら面白いかなとも思いました。もともと取材で通い詰めているうちに、面白くなって『じゃあ住んじゃえ』という感じでしたね」
東京媽祖廟(撮影:蔦野裕)
 この本には室橋さんが新大久保で出会ったスーパーの店員、飲み屋のママ、留学生、起業家など本当にさまざまな国籍と背景を持つ人々が出てきます。なぜこのような構成になったのでしょうか?

「まずは、できるだけ幅広い人たちの声を聞きたいなと思ったんですよね。いろんな国のいろんな立場の人たちがいるので、留学生から勤め人、商売をしている人までなるべく多くの人に話を聞きたいということで取材を始めました。そういう人たちの話を聞きながら、自分で住んでみて感じたのは外国人目線だけではなく、日本人はどう思っているんだろうということでした。

 やっぱり地元の日本人の声もどんどん聞かないとだめだなと思って、日本人にも話を聞いてみると『外国人とも上手くやっていかなきゃならないね』という人もいれば『外国人なんてとんでもない、冗談じゃないよ』という人もたくさんいるわけです。『共生』という言葉が一人歩きしているけれど、それが何なのかは僕自身もよく分かってないですし、耳障りのいい言葉だけを書いていてもしょうがないので、そういう人たちの意見もどんどん入れていきたいと思いましたね」

 多国籍文化を内包する新大久保の一面として、ガールズバーやカフェ、スーパー、宗教施設、食堂などが紹介されています。意識的に取材したのはどんなところですか?

「楽しく読んでほしいというのが前提にあって、味覚という面から知ってもらうのは分かりやすいので、レストランや食材店はどんどん取材しようと思いました。あと、宗教が多様であるという面白さもありますよね。モスク(イスラム教寺院)があるのは聞いていたし、歩いていれば教会の多さは目につきました。ただし、媽祖廟(東京媽祖廟、航海安全の守護神をまつる社)があるのは住んでから知りましたし、ヒンドゥー教のお寺もあとから発見しましたね」
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