劇場版「殺意の道程」にみる“映画”の定義とは!?【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
こんにちは、黒田勇樹です。
先日、大きな地震がありましたね。もちろん10年前のことは忘れてはいませんが、改めて10年経ったんだなと思い知らされます。
あの時も「エンターテインメントは不要不急か?」みたいな話がされていたように思います。10年経っても変わらないな~と思う今日この頃だったりします。
取りあえず、皆様も気を付けて。
では今週も始めましょう。
「へぇ、バカリズムさん脚本の映画!」と、劇場でみつけ飛び込み鑑賞したこの映画「劇場版 殺意の道程」、調べてみたところ「WOWOWで全7話のドラマとして放送された作品を再編集したもの」らしい。
ああ! 知ったことか! もう1900円払っちゃって椅子に座ってるんだから「1本の“映画”と、して観るぜ!」と、いうスタンスで挑みました。
あらすじは「父親を自殺に追い込んだ悪人を息子とそのいとこが“完全犯罪”で殺す計画を立てる」という、非常にシンプルかつ、ポピュラーなもの。
「完全犯罪の計画を立てるのが“ポピュラー”」、つまり“一般的”というのもちょっと変な気分ですが、ドラマなどの粗筋であれば、平日の夕方から週末のお昼時まで、毎日2、3本は再放送されているシチュエーション。
この作品の面白いところは、それらの「毎日再放送されている様な“完全犯罪”」の“計画”や“準備”の場面におもきをおいて描いているというところ。
さすがコント職人のバカリズムさん、非日常でありながら「よくある設定の裏側」を、観客の共感できるギリギリの面白さでつついていく小気味いい展開。
2時間かけた、壮大なシチュエーションコント!
…あれ?俺は「映画」を観に来たんじゃなかったっけ?
奇しくも、去年、漫才ナンバー1を決める大会「M-1」で優勝したマヂカルラブリーさんが動きメインで笑いをとるネタをやり「これは漫才なのか?」と世間を賑わせましたが、「笑い」って「予想外なことが起こる」が、基本なのでお笑いブーム真っただ中の現代で「漫才です」って言ってアレを始めた時点で勝ちなんですよね。
同じ、お笑いの畑で育たれたバカリさんの今作…めっちゃ笑えたのですが、ちょっとハイブロウ過ぎる印象。
「“映画”って言いながら、映画の手法で延々とコントやってる」面白さ、は充分にわかるんですが、これはそういう“定義”を突き詰めてる人にだけ感じられる“面白さ”で、そういうこと考えずに観ている「映画ファン」にや「お笑いファン」には物足りないものになってしまったんではないかという印象。
松本人志監督の「R100」のことを僕は「壮大なごっつ」と呼んでいて、大森南朋さんを「ハマダ」、渡部篤郎さんを「イタオ」にするだけで、観客が「あ、笑っていいんだ! これはコントなんだ!」と安心させることが出来たと言い続けている様に、今作もいっそ主演をココリコのお2人とかにしちゃった方が理解しやすかったかな?と、思います。
あらゆるエンタメは、手段を選ばず観客の為にあるべきだと思うので、どんなに“型”を外してもいいんですが、全ての過程と手段が、「お笑い」と名乗ったからには最終的な「笑い」に、映画や舞台などの「物語」を名乗るなら「人間模様」に帰結するのが好ましいんだな、と考えさせられる作品でした。
「コメディ」と「コント」もまた違うんですが、ここを言い始めると長くなるので、今週はこの辺で失礼いたします。
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1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。
公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23