「逆襲のフェムテック」【36歳のLOVE&SEX】#7
私の仕事のことを知っている仲の良い友達には、誕生日プレゼントはアダルトグッズやデリケートゾーンケア用品を送っている。
先日も友達の誕生日があったので、何度か行っているアダルトグッズショップに行った。
ちょうど最近、TENGA社の女性向けブランドである「iroha」の新作が出たばかりだったので、それにしようかなと思っていた。
3月に出た新作のiroha petit(イロハプチ)は、使い切りの非振動アイテム。SHELL・PLUM・LILYと形の違う3種類があって、1個630円。安い!
プレゼントに630円は逆に安すぎると思って3種類全部買った。ついでに自分用にもひとつ買った。
家に帰って使ってみたのだが、開封したあとの写真がこの記事の上にあるもの。
薄い乳白色のゼリーのようなこれが本体である。
このゼリーのようなものに短いスティックがついていて、それを指で挟み、本体を身体に当てて使う。
「ぷにぷにして舐められてる感じなのかな?」と想像していたが、思ったよりも固めで、それほどぬるぬるするわけではなかった。
アダルトグッズ上級者の私にとっては、正直ちょっと物足りなかったかな…。
でも、この価格帯とデザインは、多くの人のアダルトグッズ(iroha流の言い方だとセルフプレジャーアイテム)に対する心理的ハードルを下げることができると思う。
特に価格は、今回の私のようにプレゼントするにもちょうどいい安さ。
ほかにも、パートナーと使うにも役立つと思う。使い捨てで清潔に使えるし、たとえば相手が爪を切ってない時に「これ使って」と言えば、相手を傷つけないし自分も傷つかない。
話は変わるが、同じく3月にGUから「トリプルガードショーツ」という商品が発売された。
この商品は吸水ショーツと呼ばれるジャンルのもので、生理用品としても使うことができる。(尿漏れにも使える…世代関係なく全女性に役に立つのは素晴らしい)
女性の生理用品は、テレビCMでもやっているような使い捨てのナプキンが一般的だが、数年前から洗って繰り返し使える布製のナプキンも手に入りやすくなったし、膣内に入れて経血を溜めて使う月経カップというものもある。
吸水ショーツはショーツ自体が経血を吸収するので、頻繁に取り換えなくていいし、量が多いときは月経カップやタンポンなどと併用して、モレの心配も軽減できる、らしい。
らしい、というのは、実は私もこれまでこの吸水ショーツというものを使ったことがなく、このトリプルガードショーツが初めてだからだ。
私は4年くらい前から布ナプキンを使用していて、繰り返し使えるからゴミも出ないし定期的に買い足す必要もなく、何より肌が荒れないのが気に入っている。
自分に合っているのでほかのアイテムに変える必要はないと思っていたのと、吸水ショーツは一枚あたり5000~6000円するものが多く、いきなり買うのは勇気がいる商品。
ところがこのトリプルガードショーツは1490円、普通のショーツとそれほど変わらない価格だ。
というわけで早速購入して、生理の終わりかけの頃に使用してみた。
量が少ない時期だったので、吸水やモレは検証できなかったが、普通のショーツを使うよりも安心だし、手間が全然違う。
正直、お尻に当たる部分の縫製に違和感があり、「厚いものを履いてるな」と少し不満は残った。
しかしこの安さで、全国どこにでもあるGUで買えるのが非常に便利だ。
iroha petitもトリプルガードショーツも、それ自体が抜群に優れている!とは言い難いというのが私の感想だが、女性の身体のこと、健康のこと、性のことについて、多くの人が心理的にアクセスしやすくなったという点で画期的な商品だと感動した。
この1~2年でフェムテック、いわゆる女性が抱える健康上の課題を解決する商品やサービスの市場が盛り上がっているとは言っても、まだフェムテックという言葉になじみがなかったりするし、言葉の印象だけで「難しそう」「ついていけなそう」と思ってしまう人もいるかもしれない。
私自身もそうで、興味がある分野ではあるが、意識高い人にしか関係のない話題のような気がして、ここであげた商品に出会うまで、自分には関係のない話題だと思っていた。
これらの商品の登場と時期を同じくして、新宿伊勢丹でフェムテックのポップアップが期間限定で開催されたり、ラフォーレ原宿ではLOVE PIECE CLUB(アダルトグッズやフェムテック関連商品の販売や、フェミニズム情報の発信を行っているショップで、1996年より運営)の常設店がオープンした。
特にLOVE PIECE CLUBの常設店ができたのは、仕事帰りに思い立って吸水ショーツや月経カップが買える駆け込み寺ができたようなもので、これから多くの女性の心のよりどころになるのではないだろうか。
私は先日ラフォーレ原宿のショップに遊びにいったのだが、店員さんが「トーイのデザインがおしゃれだから、ラフォーレにも置けるようになったんです」と嬉しそうに言っていたのが印象的だった。
おしゃれなグッズの登場により、「こういうデザインなら家に置いてて見つかっても恥ずかしくない」という意見を聞くことは確かに多かった。ただ、私自身はわかりやすさや使い心地のほうが大事だという考え方で、おしゃれなグッズは自分の性欲に蓋をしているような気がして、自分の考えとは異なるものだと思っていたのだ。
でも、「おしゃれだからラフォーレに置ける」はそれとは違う発想だ。自分の性欲に蓋をするのではなく、性に関することを女性同士共有できる、プラスになる考え方だと言える。
フェムテックを通して女性の身体の悩みや問題が可視化されたことにより、もっと暮らしやすくなることに気付いた女性や、これまで男性側の便利の上に成り立っている仕組みがいかに多かったかということに気付いた人もいるのではないだろうか。
これまで私は女性向けのアダルト事業に関わって来たが、AVや風俗は娯楽の要素が強く、フェムテックの広がりがイコール女性向けのAVや風俗の市場の盛り上がりに直結するとはまだ言い難い。
ただ今後は、娯楽の面でも女性の不便や悩みを解消できるようなコンテンツを作っていくことが必要になってくると、フェムテックを自分ごとにとらえることができた今、そう感じている。
営業、マーケティング等の部署を経て、2013年に女性向けアダルトサイト「GIRL’S CH」を立ち上げ。以来、GIRL’S CHの現場リーダーとして、サイト運営・企画・広報に携わる。
現在は新規事業の立ち上げを担当。