「世界と戦ううえで何が強みとなるかを考える」鈴木ゆりえ(株式会社Is 代表取締役)

「小学生のころ2カ月ほどイギリスに留学したことがあり、そのときから世界で学びを得たいという気持ちを持つようになりました」と語る鈴木ゆりえさん。小学生で得た原体験を胸に、早くから自分の活躍の場を世界と見定めて海外へ飛び出し、現在では若手起業家を支援する鈴木さんが日本のスタートアップにエールを贈る!

鈴木ゆりえ(すずき ゆりえ)国際基督教大学高校卒業後単身渡米。カリフォルニア大学デイビス校に学部入学し応用数理専攻。大学在学中、暗号学を学んでいた際にビットコインとブロックチェーン技術に出会い、その後独学でブロックチェーン市場の研究を行う。(撮影・上岸卓史)

最先端のAIサポートを備え未来を見据えた若手起業家支援を展開

「中学から高校への進路を決めるときには、どうしたらアメリカの大学に行けるかを考えていました。それで、少しでも留学に近い環境を求めて、帰国子女が3分の2を占めるICU高校に進学したんです。その後、実際に高校を卒業後すぐにアメリカの大学に進みました」

 大学では主に数学を専攻。

「昔から数学が好きだったということもあるんですが、数学なら私も世界で戦えると考えたんです。数学は世界共通。文学や社会学などでは、その国に生まれ育ったからこそ分かる感覚が生きる部分があると思うのですが、数学は、そういうことは一切関係なく、数式ですべてを表すことができる。それは世界と戦ううえで私の強みになると思いました」

 周囲にいる、未来の一流エンジニアたちからも大きな刺激を受けた。

「とくに驚いたのが、彼らのチャレンジ精神です。日本ではいわゆるエリートの学生は大企業への就職を望むことが多いと思うのですが、私の周りにいた優秀な学生たちの多くが起業やベンチャーへの就職を希望していたんです。私もそこで初めてそういう選択もあるんだと気づき、優秀な人ほど挑戦を求めるんだなと刺激を受けました」

 2014年のこと。鈴木さんはあることを機にブロックチェーンに興味を持つ。

「友人にお金を貸したらビットコインで返してもらったんです(笑)。最初は驚きましたが、数学を学んでいたこともありそれを機に仮想通貨やブロックチェーンの面白さに夢中になりました。卒業後、日本での就職も考えたのですが、ブロックチェーンの最先端に携わりたいと思い、マレーシアにあるブロックチェーンのラボに就職しました」

 やがて鈴木さんは自分を生かしながら世界で戦う道を意識するように。

「天才的なエンジニアがひしめき合うブロックチェーンの世界で自分をどう生かせるのかと考えたとき、自分はエンジニアとして世界で戦うことは難しいけれど、エンジニアとクライアントの架け橋としてならバリューを出せると気づき、起業を考えるようになったんです。そのころ、英語が話せてブロックチェーンも学んでいる人材ということで、その分野に関心のある企業からレクチャーやサポートの依頼を受けるようになっており、さまざまな起業家の方とお会いできたことも大きな刺激となりました」

 2019年、ブロックチェーンをはじめとするITサポートを含んだスタートアップ支援の株式会社Isを設立。

「架け橋としてマレーシアと日本を行き来しながら、起業家支援の事業を意識するようになっていました。元ソニー会長の出井伸之のご縁で、海外のブロックチェーンのスタートアップ事情を視察する機会を得て、ますます自分の目指すビジネスモデルが定まっていきました」

 30歳以下の若手起業家を支援、育成するプログラムも立ち上げた。

「同世代の起業家の方と連携し、起業を目指す学生を対象とした6カ月間の起業プログラムを実施したところ、20人の学生が集まったうち最終的に2人が実際に起業しました。実際に起業まで行かなくても自分はやっぱり就職したいんだとか、今はまだ起業する力が足りないなど、実際にプログラムに参加したことで気づけたことも多かったと思います。いずれにせよ、起業はゴールではなくスタート。私たちも、一人ひとりと向き合いながらその先を見据えた起業支援を心がけたいと思っています」

 世界で戦う日本の若手起業家を増やしたいという思いも大きい。

「私自身、 海外のスタートアップ事情を実際に視察し、自分ももっと切磋琢磨しなければと思いましたし、日本の状況についても危機意識を持ちました。アメリカや中国には数々のユニコーン企業がある中、日本で同様の企業はわずか数社です。最初から世界を目指しているスタートアップが多いか少ないかの違いが、そこに現れているのではないかと思います。海外の起業家たちはスタートアップである以上、最初から世界で戦うことを意識していますが、日本の起業家は国内マーケットが成熟していることもあり、まず日本のマーケットを意識することを優先しがちに思います。起業家は何度も挑戦し失敗から多くを学んでPDCAを上手くを回していくことが大事。挑戦することによって自分が本当にやりたいことが見えてくると思います」

0からシード期まで、若手スタートアップを強力サポート!  
 2019年12月、株式会社Isを設立。起業を意識する段階からシード期の起業家を支援するアクセラレーター「Is Accelerator」を展開。インキュベーション&アクセラレート事業をはじめ新規事業の立ち上げ・経営コンサルティング、プリンシパル投資による新規事業の立ち上げ、ベンチャー投資及びファンドの運営、会社設立サポート(国内国外、留学生外国人など)を行う。また、AI、ブロックチェーン、フィンテック、オフショアなどのITサポートも充実。  2021年4月には、STARS株式会社と共同運営していたイベント事業「Tokyo Venture Conference」を全権譲受 。