都医師会・尾﨑会長、新型コロナ5類への引き下げ「来年には見えてくる」経口治療薬に期待
東京都医師会は12日、都内で定例記者会見を行い、感染拡大「第6波」に向けた医療提供体制を説明した。
冒頭で、尾﨑治夫会長は4日連続で新規感染者数が100人を下回ったことに触れ、「昨年6月以来の新規感染者数になって、いろいろな意味でひと段落している状態ですが、識者に意見を聞くと『第6波』が来ることは否定できない。私どもとしては、今の時期にしっかり『第6波』に向けた対策を考えていきたい」としたうえで、「第6波」に向けた対策として「早期発見・早期介入・早期治療」を挙げる。
尾﨑会長は「今まで患者さんが発熱し、新型コロナウイルス感染症かもしれないと思っても、PCR検査をしてくれる医療機関がどこにあるのか悩んだケースがあると思います。現在、登録されている診療検査医療機関のうち、3000ほどでその場でPCR検査が行えることになっている。こうしたデータを公開し、PCやスマートフォンなどの地図上で位置情報が分かるようにするシステムを東京都と進めている。発熱した場合は早めに近くの診療検査医療機関を受診し、早めに陽性かどうか確認するために、診療検査医療機関のデータを公開して地図上で分かるようにすることが大事だ」と述べた。
さらに「陽性が判明した段階で、保健所とかかりつけ医が連携して患者さんをしっかり診ていく。軽症者でも初めからオンラインや電話で見守りを続け、中等症など状況が変化した場合は迅速に往診や在宅医療、入院が必要な場合は医療機関につなげる。もちろん軽症者でも適用があれば、早めに抗体カクテル療法が行える病院や医療施設につなげ、早期介入しながらタイミングを逃さず治療につなげる。この仕組みを作っていくことによって、『第6波』に備えていこうと思っている」と説明。
今後のワクチン接種を「政府でも、2回目接種を終えて8カ月経過した段階で、3回目のブースター接種を考えるという話がある。医療従事者は、12月頃に接種後8カ月を迎える人が多いので、その頃から3回目接種を始めることになるのではないか。40~50代も2回目摂取を終えている人が増えてきたが、さらにあらゆる世代でワクチン接種が進むよう頑張りたい」と語り、経口治療薬にも「米メルクの経口治療薬が注目されていますが、ファイザー、塩野義製薬などいろいろな会社で治験が行われている。イベルメクチンについても興和、北里大学などで治験が進んでいるし、これから始まる治験もある」と期待を込める。「いずれにしろワクチン接種が進んで、経口治療薬がいくつか出てくることになれば、新型コロナウイルス感染症がインフルエンザに近づいていく。現在の2類感染症相当(指定感染症)から外せる時期も、来年には見えてくる気がしている」と予想した。
また、感染状況に応じた医療提供体制について「『第5波』の感染者数のピーク時、入院患者数が3000人を超えたあたりから入院病床がひっ迫し、自宅療養や自宅待機の方が増えていったが、4月頃から2000床確保していると言われていた都立公社病院で、振り返ってみると実際には1000人程度しか入院していなかった。最終的には1500人程度まで入院できたが、500床は埋まらなかったというのが現実」と指摘し、「今後、病床数を確保するのももちろんだが、その中で公立・公的病院がどの程度の割合で、どれくらい患者さんが入院しているのかというデータを見える化し、発信していくことが大切だ。確保病床の中でどういう病院がどのくらい診ているのかを見える化しておけば、どこがネックになっているかはっきりする」と提言。
最後に尾﨑会長は「感染が収束してくると病床も空いてくるが、そういう中でも都立公社病院を中心に最後まで病床を確保しておく。感染者数が減少したらまず民間病院から一般病床に変え、感染者数が増加に転じた場合は都立公社病院から病床を確保し、患者さんを入院させていくことを今後はしっかりやっていっていただくことが、病床のひっ迫につながらないと私は思います。もともと都立公社病院の歴史というのは感染症対策、感染症医療を提供するということで開設した経緯がありますから、そういった意味でも本来の役割を果たすことが重要」と念押しした。