「がんの匂い」を嗅ぎ分ける線虫で、新たな診断法。膵臓がんの早期発見に期待
がんの中で、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がんに次いで死因の第5位に当たる「膵臓がん(膵がん)」。他の臓器に比べて腹部の奥まった場所にあるため、早期発見が難しく、発見されたときには手遅れとなることも多いことから、「サイレントキラー」とも呼ばれる。
そうした中、「匂い」を感じる能力が高い「線虫」を使った膵臓がんの早期診断が注目を集めている。線虫とは、線形動物門の総称で、人と比較して「匂い」を感じる能力が優れているのが特徴だ。今年8月、米科学誌「Oncotarget」に公開された研究では、大阪大学大学院医学系研究科の石井秀始特任教授らの研究グループと、線虫がん検査「N-NOSE(エヌノーズ)」の技術を持つ株式会社HIROTSUバイオサイエンスが、産学連携で共同研究を行った。
写真左より、HIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮代表取締役、大阪大学大学院医学系研究科の石井秀始特任教授
研究では、健常者と膵臓がん患者の尿をサンプルとして、それぞれ比べたところ、健常者の尿の場合は線虫が尿から離れるのに対し、膵臓がん患者の場合は尿に近づくという違いが確認され、膵臓がん患者と健常者で、線虫の行動に有意差があることが見出された。早期段階のがんでも感度は60%と異例の高さで、早期膵臓がんに対しての性能を裏付ける報告としては、世界で初となる。