藤井聡が斬る!「日本のコロナ対策とウクライナ危機に共通する問題点」
コロナ禍とウクライナ危機という、どんよりと薄暗い雲が世界中を覆っている。それに加えて日本は、低成長のスパイラルからなかなか抜け出せずにいる。どうすれば日本人は明るい未来を想像し、前に進む活力を取り戻せるのか。TOKYO MXの教養バラエティー番組「東京ホンマもん教室」MCを務め、元内閣官房参与で京都大学大学院教授の藤井聡氏は「反成長主義者と緊縮財政主義者の共闘を打ち破り、新たな一億総中流社会を目指すほかない」という。その真意とは?
2大悪役レスラーの結託を打破せよ!
“反成長主義者と緊縮財政主義者の共闘”とはどういうことでしょうか?
「まず、反成長主義者について説明しましょう。簡単に言うと“世の中に資本主義がはびこり、それによって環境破壊が進んでいるから、これ以上の経済成長はけしからん“と主張している人のことです。さらに端的に言ってしまえば、経済より環境を優先する人たちですね。
この“成長か否か“というのはなかなかしぶとい議論で、憲法第九条の議論と同じ構造です。軍拡が進めば人類は滅亡する、だから日本だけでも平和主義を唱えることに大義があると考える人は多い。とはいえ一朝一夕には軍縮がならない以上、断腸の思いで一定程度防衛力を増強し、軍事バランスの均衡を保つことは、戦争を回避することに繋がる、というのが現実なんです。
誰も戦争などしたくない。しかし日本国民全員が憲法第九条を信じていてもプーチンの軍事侵攻を止めることはできないし、ウクライナが明日の日本になるかもしれないという、皮肉なことが起こるわけです。
同じように日本国民の誰もが環境を破壊したいとは思っていません。しかし全世界が成長し続ける中で我が国だけが成長を止めれば、資本主義の論理で経済的植民地化が進み、日本の富は諸外国に収奪されるだけで終わってしまう。
当然ながら肝心の地球環境も改善しません。それよりも日本がしっかりと成長し、世界の環境行政に貢献できるような技術を提供したり、環境を重視した外交を世界的に展開したりするほうが、よほど環境に貢献できるようになります。
しかし、世にはびこる低成長志向に、追い打ちをかけているのが財務省の緊縮財政です。財務省が国民経済を回していくような投資を拡大すれば、日本人は優秀ですからいくらでも経済成長できます。しかし彼らは投資を拡大しないどころか、増税までして日本経済を細らせることばかりしている。
これが結果的に、低成長主義者と共闘している格好になっているんですね。反成長主義というものは財務省にとって渡りに船だし、財務省の緊縮財政というのは反成長主義者にとっても渡りの船になっているからです。
プロレスでいえば悪役レスラーのザ・ブッチャーと上田馬之助が結託しているようなものですよ」