「アルパカ抗体」オミクロン株含む全ての新型コロナウイルスを中和 京都大学などの研究グループ

とても好奇心が旺盛な草食動物のアルパカ ©️iStock

 京都大学などの研究グループは14日、新型コロナウイルスの「オミクロン株」を含むすべての変異株に対し、これまで使用されてきたどの治療用抗体製剤よりも中和活性が高いナノボディ抗体(アルパカ抗体)を創出したことを発表した。

 現在主流の新型コロナウイルス(SARSCoV-2)である「オミクロン株」は、これまでに比べてスパイク蛋白の変異箇所が圧倒的に多く、以前感染した人やワクチン接種者にも感染。また、出現前に開発された治療用抗体のほとんどが効かなくなることが問題となっていた。

 京都大学の高折晃史医学研究科教授らの研究グループは、免疫したアルパカ遺伝子から最適な創薬候補をコンピュータで選択する独自技術をもとに、「オミクロン株」を中和するナノボディ抗体を樹立。アルパカ抗体はヒト抗体の10分の1の大きさで、ヒト抗体が到達できないスパイクタンパク質の深い溝に入り込むことができる。この深い溝は宿主による抗体免疫系の選択圧がかからないため、新型コロナウイルスのほぼ全ての変異株において変異の見られない共通の構造だという。

 また、抗体は新型コロナウイルスへの結合力が極めて強く、環境安定性も高いため、下水などの環境中のウイルスを濃縮し、検出する用途にも応用することが可能。さらに遺伝子工学による改変がしやすく、ヒト抗体よりも数千倍安価に生産できるといい、今後はより中和活性の高い改変ナノボディ抗体を作成して臨床応用を目指す。

 高折教授は今回の研究に対し「ナノボディ技術を使用することで、従来のヒト抗体では成し得なかった広い中和活性をもつ抗体を開発し、そのエピトープを同定した。今後、新たなCOVID-19治療薬の開発につなげると同時に、本技術を新たな感染症治療に対応可能なパイプラインにしたい」とコメントしている。研究成果は7月6日に英科学雑誌「Communications Biology」にオンライン掲載。