アナタは、この“眼”と“真実”に、最後まで向かい合えるのか!? メキシコで実際にあった誘拐事件をもとに描かれた映画『母の聖戦』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 あけましておめでとうございます、黒田勇樹です。

 昨年中はお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。

 昨年の大晦日に情報解禁となったのですが『J・BOT ケロ太』という新番組で監督を務めさせていただくことになりました。今年もいろいろと活動の幅を広げて頑張っていきますので、よかったらこのコラムとかツイッターとかをちょいちょいのぞきに来ていただければです。

 では今週も始めましょう。

『母の聖戦』1/20(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー © MENUETTO FILM, ONE FOR THE ROAD,LES FILMS DU FLEUVE, MOBRA FILMS,TEOREMA All rights Reserved.

「雑味」と、呼ぶのが正しい表現でしょうか? 映画を観る際に、ジョークだったり「そんなこと、現実では言わないだろ」とか「起こらないだろう」という“ドラマティック”な展開だったり、過剰に説明を行うシーン、主人公から見えていない「悪役同士のもめ事」(ミスった手下をボスが殺すシーンとかね)、この映画には、そんなシーンひとつも出てきません。

 なんなら、観客の心理的な印象を誘導するようなBGMも一切かからない。

 メキシコを舞台に、実際に起こった「母親が、誘拐された娘を探す」という物語を、凄く淡々と描いていく映画『母の聖戦』。2時間強の作品ですが、一瞬も目が離せませんでした。

「朝、死体が吊るされてる」とか「軍隊がマフィアに寝返った」とか「麻薬カルテルがアボカド市場に目をつけて土地がやせ細っている」とか(筆者の妄想と偏見を多分に含んでいます)“ダーティ”なイメージのある「メキシコ」ですが“現実”として突きつけられると、ここまで、恐ろしいものかと……。

 けして映画で描かれることが、100%現実というわけではないのでしょうが、「こういった映画が作られた事実と背景」があるのは確実で、娯楽としての映画であれば先ほど書いたような「雑味」をふんだんに入れるべきですが、もうひとつの側面「異文化を伝える媒体」としては、「これぞ映画」という圧巻の作品でした。

 語られないことも多く、最初から最後まで、母の視界の中で起こる出来事を、彼女の表情とともに追いかけ続けることになるのですが、そこにリアリティと“ドラマティック”じゃなくて「ドラマ」が混在し続ける、演技の素晴らしさと「メキシコ」という空間。

「旅行」と、言ってしまうとライトに聞こえるかもしれませんが、筆者は外国映画を観る時に出来る、この旅の様な体験がとても好きなので、是非皆様にも味わって頂きたい1本でした。

 ひたすらしんどいから、そこだけ覚悟しといてね!

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23