〈豊島区区長選〉24年ぶりの区長交代 豊島区初の女性リーダーへ 故・高野氏後継の高際みゆき氏が目指す「継承と発展」

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 4月23日に投開票が行われる統一地方選挙後半戦。東京都では21区で議会議員選挙が、うち12区で区長選挙が行われる。その中で、6期にわたり豊島区長を務めた高野之夫氏が今年2月に急逝した豊島区の区長選挙では現在、前副区長の高際みゆき氏、元朝日新聞記者の神沢かずたか氏、豊島区議会議員の永野ひろ子氏が出馬を表明(いずれも無所属・新人)。高際氏と永野氏は50代、神沢氏は40代と、世代交代が期待され、豊島区初の女性区長誕生の行方にも注目が集まるなか、幅広い層を巻き込む女性リーダーの必要性を訴える高際氏に話を聞いた。

撮影・須山杏

ーー2020年に東京都職員から豊島区へ、まさに新型コロナウイルス感染症拡大の真っ只中に副区長に着任した高際氏。豊島区副区長時代に力を入れたことは何ですか。

「福祉や文化振興などいろいろと手がけさせていただきましたが、中でもコロナ対策に力を注いできた3年間でした。ワクチン接種の体制を進めるなど感染症対策の指揮を執っていましたが、その中で意識していたのは、取りこぼされる人がいないように、ということでした。例えば高齢者の方にとって接種の申し込みが負担にならないよう、豊島区民社会福祉協議会のコミュニティーソーシャルワーカーや地域包括支援センターの方にサポートしていただく体制を整えたり、ピーク時に自宅療養となった方へ東京都からの食料支援が間に合わない場合、同様に協議会の方に食料を配布してもらうなど、全方位からできる支援を行っていきました。

 私自身、もともと東京都職員時代に福祉局での経験もあり、福祉の視点を強く持っていたのが良かったと思います。ワクチン接種一つにしても、高齢者の方は、障がいのある方は、子どもはどうするのかといった視点を持つことができました。そういった視点から、豊島区では優先接種対象とされていた医療従事者以外にも、特別養護老人ホームやグループホームなど高齢者と接する職業の方々や、子どもと接する学校の教職員や保育園の保育士など、区独自に、かなり優先接種の対象を広げていきましたね」

ーーとくに女性ならではの視点で手がけられたプロジェクトはありましたか。

「ちょうどコロナ禍でこの世代の女性たちが困窮しているというニュースを見て“子どもと女性にやさしいまちづくり”に取り組む豊島区としても、もっと何かできるのではと思い、10~20代の若年女性を支援する『豊島区すずらんスマイルプロジェクト』を立ち上げました。義務教育を卒業し、妊娠出産で母子保健に関わるまでの間にあるこの世代の方々は行政とつながりにくく、いわゆる“見えない貧困”にも陥りやすいのです。

 プロジェクトでは、全国の自治体としてはいち早く生理用品の無償提供をするなどの活動を行っています。当初は、区の複数部署の女性管理職9人から始めたのですが、2年目には対象となる女性たちと同世代の若手職員にも参加を募ったところ、気がつけば50人体制になっていました。参加職員の担当部署もますます広がり、新人職員から副区長まで、福祉課から都市整備や教育分野まで、縦にも横にも広がるプロジェクトとなりました。今後はぜひ男性職員も巻き込んでいきたいところです」

ーー前区長の高野氏から生前に後継指名。高野区政を継承していくことになるのでしょうか。

「単なる継承では、誰が受け継いでも同じです。私としては継承と発展を目指しています。継承という部分では、消滅可能性都市から脱却した豊島区が区制施行100周年に向けて行っている街づくりを、街の方々の声を聞きながら進めていきたいと思っています。良い部分を継承し、いかに発展していくかという点では、やはり女性ならではの視点や、福祉、教育分野に携わってきた経験を生かしていきたいと考えています。“すずらんー”のように主に女性の視点が生きるプロジェクトの他、子どもを対象とした施策も一層、発展させていきたいと思っています。豊島区では“子どもの権利に関する条例”を2006年に定めており、その第20条第4項に基づき、子どもたちが区政などについて話し合う“としま子ども会議”を開催しています。今年1月には豊島区児童相談も開設しました。さらに今年度は、子どもの権利擁護センターも開設し、いじめや虐待など子どもの権利侵害について直接、子どもや現場の声を聞く仕組みを確立させたいと思っています。子どもの施策は最優先にやっていきたいことの一つです」

ーー当選すれば豊島区で初の女性区長の誕生となりますね。

「しかも24年も区長を務められた高野さんの後ですから、区民の皆さまにとっても期待と不安がおありだと思います。ただ私は、我々の世代がリーダーになることや、女性がリーダーになることは大きなメリットがあると考えています。

 現代、社会が抱える課題は多様で複雑です。1つの分野やテーマに対し、部署や組織を横断して立ち向かう必要がある。誰もが住みやすい街づくりを目指す豊島区としては、全世代を巻き込んでいきたいと考えています。女性リーダーであること、中堅世代であることで、より幅広い層の方々を巻き込んでいくことができるのではないでしょうか。さらに私自身の経験も生かし、誰も取りこぼさない豊島区の街づくりに臨んでいきたいと思っています」