第二の人生と、美しい植物の映像が重なっていくショートフィルム『ブルーベリージャムを作って』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 最近ずっと同じ話で申し訳ないんですが、この1週間もTOKYO MX2 にて放送中の『J-BOTケロ太』の撮影と編集に追われる毎日でした。と言いつつ、実はもう一つ現場がありまして、こちらも大変。

 でも、皆様からたくさんのご感想と激励の言葉をいただいていることで、なんとか元気にやっとります。ありがとうございます。
 
 ケロ太はYouTubeでの見逃し配信も始まっていますので、ぜひ。

 では今週も始めましょう。

『ブルーベリージャムを作って』Programs上映・配信プログラム A&J 2アジアインターナショナル&ジャパン プログラム 2

 第二の人生に歩みだそうという男が、ブルベリーの栽培という農業に触れながら自分の人生を見直していくといった物語。ショートフィルムとしてはかなりゆったりとしたストーリー展開で、監督をする立場からすると「おいおい、このペースでストーリーたためるの!?」とヒヤヒヤするぐらいゆったりしているのですが、全編に出てくる植物の映像が美しくてずっと観ていられる。“映画”と、いうよりは“CM”とか“MV”に近い撮り方だった印象を受けますが、地域振興も兼ねた作品だそうなので、正しいアプローチだったと思います。

 気になったのは、若い女の子がブルーベリーづくりを教えてくれるのですが、そのMVっぽい撮り方のせいで、画の中に2人を映すためなんでしょうが、不自然に近い!!

 なんか、映像だけ見てると「パーソナルスペース」に対しての意識がある人が、全然出てこなくて、「おじさんが若い女にほだされて、農業始めました」みたいに見えかねない。

 女の子の方もだらしなく見えちゃうし。

“距離感”て、映像なりお芝居なり、“人物像”をあらわす、すごく重要な要素なんですよね。

 ここは、もうちょっと気を付けて欲しかったかな。

 良かったところは、本当にもう、タイトルそのまんまで「ジャムを作る」ところ!!!

 筆者の勝手な推測ですが、コツコツとやっていかなければ育たない植物たちと、今まで一生懸命働いてきた主人公の人生は重なっていて、そこに、果実がなったあと、そのまま収穫されるのではなく「ジャムにする」という“第2の人生”を肯定するかのようなメタファーを感じました。

 年を重ねた人物が出てくることで「その人の人生の前半を、観客が想像しやすい」ので、短くても物語に厚みが出る。ショートフィルムのお手本のような作品でした。

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
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