オーソドックスだけどゴージャスな映画『高野豆腐店の春』を観た!【黒田勇樹のハイパーメディア映画鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 毎週水曜に更新しているこのコラムですが、昨今の悪天候による諸事情がありまして1日ずれてしまいました。失礼いたしました。

 そしてJungle Bell Theater「夜行万葉録・戌」が14日に千秋楽を迎えたんですが、こちらも猛暑、ゲリラ豪雨などいろいろある中、たくさんの方に来ていただきました。ありがとうございます。

 では今週も始めましょう。

『高野豆腐店の春』 配給 :東京テアトル  8月18日(金)公開。シネ・リーブル池袋、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開(©2023「高野豆腐店の春」製作委員会)

「豆腐屋を営む、父と娘を取り巻く人間模様」と、いう「俺なら絶対に面白く出来ない!」と、思うほど地味なテーマ。

 絶対、途中で人が死んだり、テロリストが店に立て篭ったり、大豆が高騰して世界大戦が起こったりしないと

「豆腐で面白い映画」なんて、作れる気がしないんですが、この作品は、舞台となっている尾道の綺麗な景色とともにずっと、ただ、豆腐を作り続けます。

 特にオープニングなんかずっと、豆腐作ってるし、途中途中でも「豆腐の作り方」が、結構な分量で、セリフの中に出てきます。

 でもね!それがドラマなの!

「なんで今ここで、その“豆腐の話をしているのか”」が、すごい響いてくるし、場面ごとに、きちんと意味が違って聞こえる演出も圧巻。

 あと、単純に豆腐の作り方に対して「へえ!」という知的欲求も満たされるし。

 タイトルから感じる地味さとは、打って変わって、父娘を演じる藤 竜 也 さんと麻 生 久 美 子さんを始めとする、豪華出演陣。

 誰ひとり「ゲストとして出てやっている」みたいな、驕りを感じない、しっとりとしたストーリーに対して、真っ直ぐと丁寧に演じられていました。

 こういう地方ロケの作品ってちょいちょい「お前、買い物か刺身食うついでに、ロケに参加したろ?」みたいな大御所を見かけるんですが、「そういうのが全くなかった」と、言えば伝わりますかね? 

 あとは、もう好みの話なんですが…“走るシーン”大好き! やっぱり映画のクライマックスは走りますよね!!

「誰が、なんで、どうして、走るのか」めちゃくちゃ楽しみにして観ていただくことをお勧めします。

 心温まる、とても素敵な映画なので、是非、皆様ご覧下さい。
 あ、ちなみに「コウヤドウフ」じゃなくて「タカノトウフテン」なので、お間違いなく!

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23
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