もはや和製エクスペンダブルズ!豪華キャストで綴られる、静かな絵画ロマン映画『海の沈黙』に、殴られた【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュースvol.17 『いつの日か、また会おう!』の稽古がいい感じになってまして、自分の中でも期待値が高まってます。

 でも…急に冬!

 僕も気をつけますが、皆さんも体調には気をつけて。

 では今週も始めましょう。

『海の沈黙』11月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷 ほか全国公開 配給:ハピネットファントム・スタジオ ©2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

「絵画ロマン映画」って、ジャンルがあるのかどうかもわからないんですが、結構ありません? 音楽とかダンスとかも、モチーフにした「ロマンス映画化」ありがち。

…大好物なんです!

 この作品は「贋作作家」を、中心に繰り広げられるミステリーというか人間ドラマというか、北の国からややすらぎの郷など名作を数々生み出された、巨匠倉本聰さんが、言葉を選ばずに言うと「89才にもなって、まだこんな引き出し残してたの!?」と、思うほど「お前ら、これが邦画だぞ」と、いう印象を受ける「骨太な邦画」。

 邦画と洋画の区別は、ざっくり言えば作られた地域の話で終わってしまうんですが、もっと何か“空気”で、決まるところがあると思い、この作品はコメディやアクション、CGに逃げず(そういう作品が悪いと言っているワケではないですが)、ひたすら人間を撮ることへの執着を続ける。古き良き「邦画の空気」が、流れ続けます。

 でも、飽きない。

 なぜなら、画面に映っている人たちが、怪獣だらけだから!

 本木雅弘さん! 中井貴一さん! 石坂浩二さん! 仲村トオルさん! 萩原聖人さん! 佐野史郎さん! 村田雄浩さん! 清水美砂さん! そして我らがキョンキョンこと小泉今日子さん!!

 これだけ、名優に揃われたらもう、和製エクスペンダブルズか、オーシャンズ11ですよ。

 その重厚な軍団がゆっくりとスクリーンの向こうから、ずしんずしんと、まるで進行してくる様。静かなのに、観ているほうは心が踊り続ける、絵画や創作に対する想いを媒介にして繰り広げられる人間ドラマ。

「語らない部分」に、この作品の本質があるのかもしれません。ただ、これは「セリフ」の話であって、画面からは、めっちゃ語りかけてきます。

 この作品、絵画の他に“入れ墨”も、モチーフとして出てきます。筆者は、入れ墨に対してアートやファッションとしては肯定的なのですが、2020年頃かな? 最高裁で「医療行為に当たらないので、違法ではない」と判断されるまでは、彫る行為自体が医療行為に当たるのであれば、医師免許のない人間が行うのは違法という解釈がされていたので、まだちょっと抵抗が残っていて、善し悪しとか合法違法じゃなくて「楽しめるかな?」と思っていたのですが、とても綺麗に描かれ、ラストの落とし所も実に美しかった。

「濃厚な邦画」に、飢えている皆様、是非劇場で、御覧ください。

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