豊島区、産学官で健康経営を考える 立教大生が「学生視点のWell-being企業」の姿を示す

 豊島区の産官学連携コンソーシアム「TEAMとしま」の有志企業が区内にキャンパスがある立教大学とタッグを組んで特別連携イベント『Well-being City 豊島区構想 -健康経営優良法人日本一の街へ-』を12月10日、立教大学で開催した。「学生視点のWell-being企業とは」として、同大学の経済学部で労働経済論をテーマとしている首藤ゼミナールの学生たちがWell-being企業のあるべき姿と行動を提言、イベントに参加した豊島区の高際みゆき区長や企業の代表者は、学生たちからの耳の痛い提案に熱心に耳を傾け、苦笑いしながらも、しっかりと受け止めた。

 就職活動を控える大学生ならではの視点。安定性を求めて大企業への就職を希望する学生が多い現状を示したうえで、3つのグループが、中小企業が抱える人手不足の観点から、それぞれ「福利厚生・休暇制度」「インターン」「認知度」に着目、さまざまなデータを分析して仮説を立て、豊島区役所や株式会社サンシャインシティ、TEAMとしまのマテックス株式会社などをヒアリングして現状の課題を明らかにし、それぞれの改善方法を示した。


「福利厚生・休暇制度」のグループは、首藤ゼミが大学生を対象に行った調査で、就職先として中小企業を選択肢に入れるには、①認知度を上げる②福利厚生の充実(休日休暇の充実)③ホワイト企業であること④インターン⑤大企業との差別化の4点が必要と考えていると報告。その上で休暇制度が重要視されているとし、企業で年次有給休暇を取得できていない要因を分析。有給休暇など取りやすい環境が重要であること、休暇取得に対しての意識をトップから変化させて波及させていくことが必要であるとした。

「インターン」のグループは、学生が安定性を求めて大企業への就職を希望していることから、安定性を創業年数、平均勤続年数や離職率、資金調達構造などから比較し、大企業と小規模企業の間においては安定性に差があるが大企業と中小企業の差はそこまで大きくないと説明。そのうえで、学生の中小企業へのイメージと実情が合致しておらずミスマッチが起きているとし、その解決法のひとつとしてインターンシップの必要性を説いた。

「認知度」のグループは、「隠れたチャンピオン in としま~豊島区の優良な中小企業をラベリング~」と題して、子育てサポート企業として厚生労働大臣が認定する「くるみんマーク」を例として示してラベリングが企業の知名度向上において有効としたうえで、豊島区に企業を評価するために行っている制作や課題についてヒアリングし、ラベリング制度を用いることで新規学卒者にも情報が行き届き、より幅広い世代により深いサポートができると提案した。

 各グループの発表後には企業から「インターンシップと説明会、学生はそれぞれに何を求めているのか」といった質問が飛んでいた。

 イベントではまた、首藤若菜教授と社会保険労務士の下田直人氏によるトークセッションも行われた。

豊島区の高際みゆき区長

 豊島区の高際みゆき区長は「豊島区の強みは、いろいろな社会課題に対して、行政だけではなく企業や大学と連携し向き合っているところとしたうえで、区内の305の企業や大学が連携したTEAMとしまについて触れると「その取り組みのひとつが健康経営」だとし、働く人たちが心も体も社会的にも幸せを感じられる、満足できるなかで、生きがいを持って、暮らし働き学び続けられる。それは企業や行政におけるコストを落とすということだけではなく、プラスを生み出していくうえで一番大事」と強調。今日の報告は今後の豊島区政に生かしていきたい」と話した。

 同イベントは、「TEAMとしま」の有志企業が2024年4月から行っているWell-beingな組織づくりについての勉強会の特別企画として行われたもの。勉強会はWell-beingが企業における生産性や企業価値を高める重要テーマと考えて真のWell-being経営を追及する目的で行っている連続講座で、今回が9回目だった。