武田真一アナ、出前研修で「育業」の大切さ伝える「子育ては楽しくてやりがいのある仕事」
育児休業は「休み」ではなく「大切な仕事」です──。東京都は、育児を「大切な仕事」と考える、育児休業の愛称「育業」を発表し、望む人誰もが育業しやすい社会の実現を目指して取り組んでいる。そうした中で昨年、企業を対象とした「育業」の出前研修が日本電気株式会社(NEC)で行われた。講師を務めたのは、元NHKで現在フリーアナウンサーとして活躍する武田真一さん。なぜ武田さんが「育業」の講師に? そして武田さんが伝えたかった思いとは。
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手厚く子どもを育てる環境ができているのはとても大事なこと
昨年11月、オンラインを含む約200人の社員を前に「育業」の出前研修を行った武田さんは「講演で自分の経験をお話しすることはありますが、講師の仕事を引き受けたのは今回が初めてです」と笑う。引き受けた理由とは?
「今まで自分がしてきたいろんな仕事の中で、子育ては一番楽しくてやりがいがあって、充実した素晴らしい仕事だと思っていました。育業って企業も当事者の皆さんも不安があると思うんですけど、さまざまなケースに応じて手当てが用意されています。改めて今の育業制度をしっかり勉強して、自分の経験を含めて皆さんにお伝えすることで、少しでも広めていくお手伝いができたら素晴らしいんじゃないかと考えてお引き受けしました」
講義を終えた感想を「取材をもとにした台本を体の中に落とし込み、表現するという意味では普段の仕事に近いのですが、いろんな知見が蓄積された台本がとにかく分厚かったので大変でした(笑)。一番印象に残ったのは育業は当事者のメリットだけでなく、その周囲を取り巻く組織や会社、ひいては社会全体のメリットがすごく大きいということです。私自身が子育てしていた若い頃はまったく意識していませんでした。現在は産後パパ育休(出生時育児休業)の創設など、父親もしっかり参加できる制度になっていて、これほど手厚く子どもが育てられる環境ができているのはとても大事なことだと思います」と力説。
「育業を推進するメリットを話し合うグループワークも行ったんですけど、皆さん育業のあり方だけではなく、どうしたらより生産性が上がるかなど、いろいろな気づきを持っていらっしゃいました。例えば “組織の中で仕事を属人化をしない” とおっしゃった方がいて、プロフェッショナルを育てることは一見大事なように思えるんですけど、“その社員しかできない仕事” を作ってしまうと会社にとってよくないし、“その仕事しかできない社員” を作ってしまうのもよくない。いろんな人がいろんな仕事をこなせるマルチタスクができることは、これからの会社の経営にとってすごく大切なことですよね」
さらに「突然の出来事にどう対処するかというスキル、部下に対して指導するためのスキルなどを子育てを通して学んだという女性もいらっしゃって。人を育てるとか人と向き合うことは、仕事であれ家庭であれ地続きなんだなと気づきました。多くの方がそういうふうに考えてくださると、より育業しやすくなるんじゃないかと思います。個人の働き方、企業の成長戦略、ESG投資(環境、社会、企業統治への取り組みを考慮して投資先を選ぶこと)、消費者へのアピール。大きな捉え方をすると社会をどう形作っていくのか。育業を切り口にして多くの気づきがありました」と振り返る。