都医・尾﨑会長「高額療養費」凍結に「どう社会保障を守るのか皆さんで真剣に議論して」

 東京都医師会の尾﨑治夫会長は3月11日、都内で行われた定例記者会見で「高額療養費制度」の自己負担上限額の引き上げについて意見を述べた。

定例記者会見で「高額療養費」見直し凍結について語った東京都医師会の尾﨑治夫会長

 5日付で「高額療養費制度の凍結について」と題する緊急声明を発表した東京都医師会。尾崎会長は声明について「当たり前のように高額医療費の負担額を引き上げるという案は、医療者として絶対に反対しようと思っていた」と言及。

 制度の見直しが凍結したことを受けて「石破首相は秋までに方針を検討すると表明しているが、8月の引き上げを見送った後2~3カ月しか時間がない中で、十分な議論ができるのか大変心配。もう少し長い時間をかけてじっくり議論すべきではないか。場合によっては命に関わる医療を所得などの格差で受けられなくなることは、国民皆保険制度の本来の目的から外れてくるのではないかと危惧している」と尾﨑会長。

 さらに「医療費の内訳は保険料が5割、税金が4割、自己負担が1割。保険料負担が限界なら税金か自己負担になるが、今のところ “ここから税収増を” というはっきりした政策は出ていないので、自己負担を増やすという形にならざるを得ない。税金の中で大きいのは所得税、消費税、法人税。消費税は税率を上げると税収が増えるが所得税、法人税は景気などに左右されるので、税率を上げたからといって必ずしも税収が増えるわけではない。所得税は主に現役世代が負担するが、保険料負担が限界にきているところに所得税を上げたらさらに負担が大きくなる」といい、

「消費税は景気に左右されず、全世代が負担するので現役世代の負担は(割合として)多くならないのではないか。通常は国民の負担が増えると社会保障が手厚くなる高福祉・高負担だが、日本は国民の負担は増えないまま国債を発行するなどして手厚い社会保障を伸ばしてきた。今の状態を解消しながら高福祉の国家を目指すのであれば、もう少し国民の負担を増やさなければいけないのでは。きちんと理由を説明しながらどうやって社会保障を守っていくのか、皆さんで真剣に議論していけば理解を得られるのではないか」と提言した。

 団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年。「医療費・介護費も増えていくが、今まで日本を支えてきた方々が、今まで通りの医療が受けられる形にしていかなければいけないと思っている。どうやって財源を確保していくかは皆さんで一緒に考えていただきたい」としたうえで、セルフケアの7つの柱(①健康リテラシー、②検査、③衛生管理・口腔ケア、④禁煙医薬品、⑤運動・睡眠、⑥食事、⑦OTC医薬品)を挙げ「この①~⑥をしっかりやることがセルフメディケーションの基礎。正しい情報を理解して実践することが予防医療につながり、高齢者になった時に認知症やフレイルなどが減っていくことが大事」と訴えた。

「欧米では80~90%と言われる胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がんの検診率が日本は50%に達していない。それだけ(罹患した際に)医療へのアクセスが容易ということもあるが、検診を受けて早期のうちに治療することが医療費の抑制にもつながる。これからは一人ひとりが自分の体や健康に関心を持ち、適切な時期に健診・検診を受けていただき、ヘルスリテラシーを身につけて理解のもとに、活用できるところはOTC医薬品を活用していくことが大事。このままだと本当に必要な医療や介護が受けられなくなる事態が起きる可能性は高いので、私たちも一生懸命頑張っていくが、今後どうなるか自分の問題として考えていただければ」

1 2>>>