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小池百合子のMOTTAINAI

2012.08.20 Vol.562

 残暑お見舞い申し上げます。

 今年もこれまでに増して不快な夏が続いています。自然条件による暑さだけではありません。

 天皇陛下に対する李明博韓国大統領の暴言、慰安婦問題の蒸し返し、竹島に向けて泳ぐ韓流スター。香港の活動家による尖閣への上陸。振り返れば、ロシアのメドベージェフ首相による二度目の北方領土訪問もつい先日のことです。

 これほど日本が近隣諸国からの挑発を受けたことはなかったはずです。これではかつてのABCD包囲網ではなく、中露韓、CHINA、RUSSIA、そしてKOREAによる包囲ではありませんか。おまけに「国外、少なくとも県外」だの、多数の民主党議員団による北京への朝貢外交などで同盟国であるアメリカとの間にすきま風を吹かすなど、自らでCARK包囲網を呼び込んだようなものです。

 有名な中国の「孫氏の兵法」では「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」と言いますが、野心を持つ近隣諸国はわが国の安全保障にスキがあるとして、一気に積極策に出たと見られます。
 一川保夫前防衛相の「素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」発言、「もしもし大臣」の称号が与えられた田中直毅氏の対応ぶりなど、日本の防衛体制のスキをついてのことです。ましてや、専門家として民間から擁立した森本防衛大臣の「竹島訪問は韓国の内政上の判断」発言は、たとえ本意ではなかったとはいえ、不用意なものとしか言えません。

「社会保障と税の一体改革」では、語気を強めて発言していた野田首相ですが、安全保障となると、トーンダウン。財務省によるシナリオがなくなった途端、のことです。

 子ども手当や後期高齢者医療制度の廃止、最低保障年金など、社会保障については、バラ撒き政策以外は何もなかったからこそ、自民党案を丸呑みした民主党です。「安全保障」あってこその「社会保障」の充実ですから、自民党がすでに党の政策として準備している案を丸呑みすべきでしょう。

 戦後67年が経ち、高度成長、人口増加の時代から、21世紀の日本は新しいパラダイムを必要としています。新興国の成長ぶりも、これまでの世界の構図に大きな変化をもたらしています。

 あらためて安倍政権でさかんに謳われた「戦後レジームからの脱却」を進めなければならないと思います。

 領土問題など主権に関する教育をないがしろにし、原発の安全神話を支え、農業を衰退させてきた自民党は、野党である今こそ大きくやり直す必要があります。憲法を改正するとともに、世界での発言力を確保するためにも景気対策など経済の再生もまったなしです。

 やり直しましょう。真摯に。確実に。
(自民党衆議院議員)

鈴木寛の政策のツボ 第十七回

2012.08.06 Vol.561

 4年に一度の祭典、第30回夏季オリンピックロンドン大会が開会しました。総勢293名の選手がこの日この時のために鍛錬を積んできました。

 私が文部科学副大臣就任時にまとめたスポーツ立国戦略では、2004年のアテネオリンピックで記録したメダル獲得数37を上回るメダルを獲得することを目標としています。有望種目の支援に関する予算は3年前の9倍に当たる27億円に増え、JOCへの助成、TOTOからの助成を合わせると80億を確保。昨年4月にはロンドンオリンピック強化タスクフォースを立ち上げ、選手たちへ支援を行ってまいりました。

 例えば、今大会から初めてマルチサポート・ハウスを選手村から徒歩10分の場所に開設しました。柔道やレスリングの練習場、高圧酸素カプセルやリカバリープール、栄養補補給や減量食の提供、心理サポートやリフレッシュスペースの設置など、最終調整と疲労回復のためのサービスが充実しています。また、40名以上のスタッフが常駐し、映像による戦況の分析やフィードバック、現地と日本の連携など情報戦略にも力を入れています。このように「プレーヤーズ・ファースト」の精神のもと、選手が最大限のパフォーマンスが発揮できるようなサポート体制を万全にする準備を行ってきました。

 もちろん、メダル以上に期待すべきことは、選手たちが競技を通して国民に勇気と感動を与えてくれるということです。スポーツに誰もが親しみ楽しめるよう、選手たちにはぜひ頑張っていただきたいです。どんなドラマが見られるか、とてもに楽しみにしています。    
 (参議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI

2012.07.09 Vol.558
0203.jpg今年の夏の省エネはオーニングで  さあ、また暑い夏の到来です。  昨年は、東日本大震災と福島第一原発事故の関連で計画停電が各地で実施され、毎日、電力使用量のアップ・ダウンに一喜一憂したものです。  電力を大量に消費する事業所は電力制限令という強力な規制もあり、現場でさまざまな工夫を凝らした結果、電力シャットダウンも回避できました。これも日本国民の絆の凄さの証明でありました。  一方で、「意外とやっていけるじゃない」と妙な安心が広がりました。国民による節電努力に加えて、老朽化し、使われなくなっていた火力発電所をにわかに動かしたり、工場などの予備電力をフル活動させたりと涙ぐましい努力があったからこそ、です。火力発電に注ぎ込んだ石油、ガスの購入に、3兆円ものカネが注ぎ込まれたことも事実です。  1年が過ぎ、発電状況が好転したわけでもないところに、「去年は大丈夫だった」という妙な自信もあり、かえって今年の夏のほうが危険です。  練馬の実家を究極のエコハウスとして、さまざまな実験を試みている私ですが、すべての照明をLEDに、最も外気にさらされやすい開口部である窓は断熱効果が高い複層ガラスにしと、すでにあらゆる対策を講じています。  昨年は窓部分からの遮熱を徹底するため、「緑のカーテン」として、ゴーヤ、朝顔などのつる性植物にも挑戦しました。効果もさることながら、緑の植物がもたらす癒し効果、さらに実ったゴーヤでチャンプルにして食すなどのオマケも楽しむことができ、一石三鳥。  しかし、思わぬ問題がありました。緑のカーテン用のネット、つっかえ棒などの経費はたいしたものではなく毎年使えますが、水道代がバカにならないのです。  そこで、今年は3カ所ある開口部の一部に、オーニングを試すこととしました。ようはテント生地を使ったすだれ、よしずの類です。地中海などの建物ではストライプや色鮮やかなオーニングが街並みを上等にしてくれている、アレです。  日本でもお店などで、カラフルでしゃれたオーニングを見かけますが、一般住宅ではまだまだ活用が限られています。  手動はもちろん、電動で開け閉めができたり、風が強すぎるとセンサーが働いて、勝手にまきあげるなど、日本ならではの工夫した種類もあります。  エコハウスのためのエコポイント制度は予算消化で前倒しで終了とのことです。まだまだ工夫すべきことはあるのに、中途半端です。まだまだ本気度が足りないのでは。   (自民党衆議院議員)

長島昭久のリアリズム 第十一回

2012.06.25 Vol.556
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「海洋国家日本」の外交・安全保障戦略(その8)

 前回述べた日米共同の動的抑止力をどのようにアジア太平洋地域の戦略環境に対応させるべきか。とくに、これまで数回にわたって詳述してきた中国の戦略的な意図に鑑み、第一列島線と第二列島線の間の広大な海域(ここは、米国向け物流の太平洋航路が輻輳し、米軍のパワー・プロジェクション進路にあたる重要な海域)における日米共同の警戒監視能力を充実させ、中国による同海域の聖域化を許さないという断固たる姿勢を示していくことは重要だ。  また、我が国本土と台湾とをつなぐ南西諸島は、中国海軍の太平洋進出を扼する関門のような位置にあり、平時においては中国人民解放軍(PLA)海軍の北海艦隊、東海艦隊の動向を掌握しながら、有事においては中国艦隊に対する日本にとっての接近・地域拒否(A2/AD)能力を駆使した「防護壁」をここに構築していく必要がある。パワー・プロジェクション能力の再構築をめざす米軍の新たなエア・シー・バトル戦略との連携を深めて行くために、我が国は、次期中期防衛力整備計画で潜水艦を増強し、新たな次世代戦闘機の取得を決定したのだ。  いずれにせよ、米国との連携・協力を緊密化させることにより、東アジア・西太平洋の平和と安定に積極的に貢献し、米国が背負っている米軍の前方プレゼンスに伴う膨大な負担を地域の同盟国・友好国間で分担する必要がある。同時に、米軍の前方展開兵力との戦略・政策・作戦の各レベルにおける緊密な協力の枠組をより精緻に組み上げて行く。そうすることで初めて、効果的で、持続可能な米軍の前方プレゼンスを支援する多国間システムの構築が可能になるであろう。私はこれをHost "Region" Support(受け入れ「地域」支援)と呼ぶ。  日本は、西太平洋における米国の同盟国や友好国との間にHRSのメカニズムを構築するための政策調整をリードすべきである。HRSは、各国バラバラのHost "Nation" Support(受け入れ「国」支援)を地域全体で再配分することによって、東アジア・西太平洋の安全保障基盤を安定化することに大いに貢献するはずだ。もちろん、日本のリーダーシップで、このような試みがなされれば、中国の警戒感を煽ることは必至といえる。しかし、このHRSのアイディアは、いかなる国の参加を排除するものでもない。いかなる国であっても、①米軍のプレゼンスが地域の安全保障のために価値があるとみなし、②この負担の一部を自国で受け入れる意思さえあればいつでも参画し得るのだ。

小池百合子のMOTTAINAI 第15回「6月は日本と世界の鬼門となるか?」

2012.06.11 Vol.555

 そろそろ梅雨入りかと思いきや、早くも台風3号のおでましです。竜巻に襲われたり、雹(票なら大歓迎ですが)に見舞われたりと、気候も政治も不安定極まりない状況が続いています。
 6月は世界の政治のハイライトが目白押しです。
 まず、今通常国会の会期が21日に迫る中、6月18日から開かれるメキシコでのG20に出席するには、15日にも衆院本会議での消費税関連法案の採決を行わなければなりません。
 ましてや、その後、ブラジルでのリオ環境サミットが開かれます。ちなみに、20年前、同じくリオ・デジャネイロで開かれたいわゆる「地球サミット」に世界中のリーダーが参加するなか、出席できなかった主要国はイタリアと日本だけでした。イタリアはそもそも首相の座が空席でした。日本については、当時の宮沢喜一首相が湾岸戦争後の機雷処理に自衛隊を派遣するための法案処理のため、国会を離れられなかったという事情がありました。結果として、日本は地球環境保全に後ろ向きとの印象を残しました。
 今回は、ぜひとも日本を代表して野田総理にはリオに飛んでほしいものです。
 6月16、17日には、私の第二の故郷でもあるエジプトで大統領選の決選投票が行われます。昨年のいわゆる「アラブの春」でムバラク大統領が権力を失い、先日終身刑を宣告されたばかりですが、判決や息子たちへの甘い対応を不服とする国民、なかでもイスラム系の反発は強くなるばかりです。結果として、長い歴史を持つムスリム同胞団をベースとする候補が勝利を収める可能性があります。
 となると、これまで世界の火薬庫といわれる中東において重要なセーフティーネットとなっていたエジプトとイスラエルの平和条約にも影響が出てくるでしょう。首相に世俗主義者を置くなどの配慮があるか、ないかがポイントになりますが、シリア情勢と相まって、中東の不安定化が懸念され、すなわち原油価格などに影響を及ぼします。
 遠い世界の出来事のようですが、原発すべてが停止し、老朽化した火力発電も駆り出す状態にある日本にとっても見逃せません。
 トドメは同じく17日に行われるギリシャの再選挙です。世論調査では8割以上が「ユーロ圏からの離脱は望まない」が、「緊縮財政もイヤ」とのこと。結果次第では、想定外だったユーロからの離脱、旧通貨のドラクマ復活とのシナリオが現実のものとなり、世界経済は大荒れが予測されます。
 6月は日本にとって、世界にとっても鬼門となりそうです。

(自民党衆議院議員)

鈴木寛の政策のツボ 第十六回

2012.06.04 Vol.554
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五輪招致でニッポン復活!

 5月23日、IOC(国際オリンピック委員会)理事会により東京が2020年の夏期オリンピック・パラリンピック大会候補都市として一次選考を通過しました。同じく選定されたスペインのマドリード、トルコのイスタンブールと来年9月の最終選考に向けて競うことになります。  2016年夏期オリンピック・パラリンピック招致に東京が他の都市に惜しくも敗れたことはみなさんのご記憶にも新しいと思います。前回の反省を生かし、今回は招致委員会の組織、超党派の招致議連、国会での招致決議など、政府による支援の速やかさが高く評価されました。昨年成立したスポーツ基本法、国立競技場の建て替えもこれを後押しする結果となりました。招致委員会の評議員の一人として大変うれしく思います。  しかし最終選考に勝ち残るにはいくつか課題もあります。一つは昨年の震災に端を発するエネルギー不安や地震への不安です。「開催に伴い増える電力消費量は都全体の0.1%程度」と東京都は説明していますが、政府によるエネルギー基本計画の取りまとめを慎重に進めていくことが求められています。  また、招致に対する市民の支持率が低いことも懸念です。IOCによる都市の世論調査の結果、東京の支持率は47%でした。他の候補都市は70%以上の市民の支持率があり、大きく水を空けられています。都民、国民のみなさまにご協力いただくために、招致の目的をきちんと伝えていく努力が求められています。  今回のテーマである「ニッポン復活」は、まさに全国民が手を取り合って目指すべきものです。大変心強いことに、EXILEの皆さんが招致の主旨に深く賛同し、今年3月より無償協力でキャンペーンキャラクターを務めてくださっています。オリンピック・パラリンピックの開催がニッポン復活の明るい兆しになるよう、これからも招致の準備を進めていきます。

長島昭久のリアリズム 第十回

2012.05.21 Vol.552
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「海洋国家日本」の外交・安全保障戦略(その7)

 さて、本シリーズの締めくくりにあたり、我が国の外交・安全保障戦略について3回に分けて論じてみたい。まず第一に、日本独自の努力について明らかにする。冷厳な国際社会の現実は、今も昔も「セルフ・ヘルプ」の一語に尽きる。自助努力なしに、安易に他国(たとえ同盟国といえども)に頼れば、それは「依存」に他ならず、米国とてそんな友人を本気で相手にしまい。  国家目標も戦略もはっきりしない「顔の見えない」国などと揶揄されることの多い我が国だが、一昨年の暮れ5年ぶりに「防衛計画の大綱」を改定し、防衛計画にとどまらず安全保障戦略について明確な方向性を打ち出したのである。その最大の眼目は、活発化する中国の海洋行動とそれを支える軍事力の拡張に鑑み、中国軍事力のプレッシャーを正面から受ける沖縄をはじめとする我が国の南西方面における「動的防衛力」をいかに整備して行くかだ。  冷戦以来、防衛力整備の基本構想だった北方重視の「基盤的防衛力」を脱却し、より柔軟で機動性に富む即応性の高い防衛態勢を目指すものだ。予算制約の中で、海空戦力を充実させ、陸上自衛隊の一部に海兵隊的な機能を担わせる方針を打ち出したことは特筆に値する。とくに、平素から警戒監視能力を高め、有事に際し迅速に所要兵力を緊急展開できるよう海空の輸送力を拡充し、島嶼防衛において自律的な能力を整備して行くことが明記された。  第二の課題である日米同盟の深化をめぐっては、本年2月、日米両政府が普天間飛行場の移設と米海兵隊のグアム移転のペースを切り離す決断をした。これにより、日米協議の正面から普天間問題を取り除き、「アジア太平洋地域に日米共同の動的抑止体制をいかに構築すべきか」という日米両政府が本来取り組まねばならない課題に注力できる環境を整え得たのである。ここで目指す共同の「動的抑止体制」とは、動的防衛力の整備を目指す我が国の新防衛大綱の趣旨と米国の新国防戦略指針で明らかにされた「分散化」の方向性をシンクロさせたものといえる。  すなわち、日本全国の米軍基地を日米で共同使用したり、有事の際に我が国の民間港湾や空港を米軍に開放することや、場合によっては自衛隊の哨戒機をグアムに常駐させる、あるいはテニアンで米軍との共同訓練をやる、インド洋のディエゴガルシアも日本が米英と共同で使用する、といったダイナミックな運用の可能性をも見据えているのだ。このような日米共同の動的抑止力を、前回までに詳述してきたアジア太平洋の戦略情勢にどのように展開して行くかにつき次回で論じてみたい。

小池百合子のMOTTAINAI 第14回「場当たり的ではないリアルな政治を!!」

2012.05.14 Vol.551

「脱」「卒」「反」だと、原発を巡る言葉遊びを続けているうちに、日本にあるすべての原子力発電が停止しました。42年ぶりの脱原発です。

 こどもの出産や入学、卒業など、将来の日程が明確であるように、13か月ごとの定期検査を考慮すれば、原発の全停止は十分予測されていたはずです。この1年間、いったい何をしていたのか。

 消費税増税に「政治生命」と全エネルギーを傾ける単線志向の野田総理ですが、「日本のエネルギー問題」こそ喫近の国家的課題。おまけに電力不足は国民の生命にも関わる問題です。複線志向で、目指す方向を決めながら、次に何をするかを考え、一つひとつ実行する…。政府の役割はこれに尽きるのではないですか。

 3・11以後、多くの国民、そしてほとんどの日本の政治家は、濃淡はあれど、原発に依存しない社会を望むようになりました。世界のすう勢が原発推進の流れだとしても、地震や津波の危険性の高い日本では慎重にならざるをえないことは当然というものでしょう。

 ただ、電力を所管する大臣が「5月6日から一瞬ゼロになる」と言い放ち、「集団自殺するようなことになる」と与党幹部が脅したりと、事態は複雑、かつ情緒的になるばかりです。場当たり的な政策や判断の繰り返しが、ますます国民を不安と混乱に陥れているわけです。

 技術的、科学的、客観的な判断を下す組織が必要であり、原子力規制庁の設立が急がれます。環境省の外局方式を主張する政府・与党案、いわゆる三条委員会方式で独立性の確保を重視する自民党案などの折り合いがつかず、いまだ宙ぶらりん状態です。早急に結論を出しましょう。そのためにもさっさと問責を受けた2大臣の入れ替えが必要です。

 また、地球温暖化対策として二酸化炭素の25%削減や、原子力発電計画の倍増を謳ってきた民主党です。改めるべきは、改め、早急に今後のエネルギー政策を明らかにする責任があります。

 その上で、どの原発は安全性が高く、どの原発に不安があるか、より明確に、率直に国民に説明をすべきです。この1年間に生じた「すべての原発が危険」との印象を抱かせている現状では、かつての「原発の安全神話」の裏返しになりかねません。オール・オア・ナッシングではリアルな政治とはいえないのです。

 原発問題だけでなく、あらゆる分野での日本政府のモタモタぶりを世界が見ています。現政権には、そのことを心していただきたいものです。

(自民党衆議院議員)

鈴木寛の政策のツボ 第十五回

2012.05.07 Vol.550
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智恵を駆使し教育の現場でも節電の工夫

 東京では日差しも強くなり、汗ばむ季節となってきました。夏にはクーラーなどに対し、たくさんのエネルギーが使われる傾向にあります。  今年も電力供給が十分でなく、皆さんの節電が望まれます。停電が起これば、日常生活に大きな支障が生じます。生活家電が使えなくなる(タイマー等の設定内容が消滅したりすることも考えられます)ことはもちろんのこと、突然の停電の場合にはエレベーターに閉じこめられることもありえます。上水道の断水、信号機の停止や電車の停止などの交通の混乱、通信の支障もおこりえます。  停電は想像以上に色々な影響を与えます。停電にならないようにするための心構えが必要です。  たとえば、東日本大震災が起きた去年の春の甲子園では、試合の時間をずらし、ナイター試合が自粛されました。  昨年3月には、震災の影響で電力供給不足が懸念されているなか、文部科学省は開幕延期とナイター自粛をセ・リーグに要請しました。セ・リーグが示した4日間の延期案に対し、選手会が異議申し立てを行い、熟議の結果、セ・リーグは、4月12日にパ・リーグと同時に開催されることになりました。  また、東京都で一番電力消費が多い東京大学はいろんな知恵を駆使して25%超の節電を実現しました。  困難が生じた時こそ、知恵を働かせるべきだと私は思います。ひとりひとりが知恵を出し合い、熟議することが、最善の解決法を私たちに示してくれるのだと思います。

小池百合子のMOTTAINAI 第13回

2012.04.16 Vol.548
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気まぐれ国家 北朝鮮の暴走はいつまで続くか

 毎度、お騒がせの北朝鮮が、4月15日の太陽節(金日成生誕100周年記念日)を祝うため、「人工衛星」と称する事実上のミサイル発射準備を着々と進めています。  今回のミサイル発射計画は先代の金正日時代からのもので、わずか29歳の後継者・金正恩の実績作りというわけではありません。せっかく久々の米朝合意でそれなりの栄養支援物資を確保したばかりなのに、明確な国連決議違反です。支援を反故にしてまでも、なぜ強行するのか。  特に、今年は2月16日の金正日生誕70周年、4月15日の太陽節、同月25日には人民軍創建80周年と、周年行事が目白押しで、そのたびのパレードや祭に加え、人民への食糧プレゼントなどで莫大な費用を必要としているにもかかわらず、です。  唯一の答えは、「だって、北朝鮮なのだから」。王たる金正日の遺言がすべてに優先するのが、北朝鮮だからです。  70、80代の先代、先々代からの軍や党の取り巻きを相手に、何の経験もない金正恩には、父親の遺訓に反することはできません。  また、「もし失敗したら、どうなるのか」といった議論が交わされていますが、「失敗」はありません。理由は「だって、北朝鮮なのだから」。たとえ失敗したとしても、国内的にはすべて「成功」なのです。  ミサイル発射は北朝鮮政府にとっていいことずくめです。第一に、「衛星」を載せる長距離弾道ミサイルの射程距離は遠くグアムにも届く可能性もあります。何よりも弾頭に核を載せれば、アメリカを刺激するには十分です。  第二に、ミサイルの威力を見せ付けることで、イランなどの顧客を引き付け、貴重な外貨獲得の道が開けます。つまり営業用の見本市なのです。  第三に、金日成生誕百周年である太陽節を祝い、国威発揚の場となります。  莫大な資金を投入しても、北朝鮮人民にとっては何のプラスもありません。ましてや、米国からの栄養支援など、各国からの支援が断ち切られるマイナスの効果さえあります。  これらの判断はいったい誰が行っているのでしょう。私は、実力者として取りざたされがちな金正日の妹の夫である張成沢ではなく、むしろ妹の金敬姫だと、かねてより申し上げています。席次も、つねに敬姫が夫より高い。  理由は金王朝の血を引いているからです。  強引、気まぐれ、アル中などとその評判は散々ですが、病床の兄・金正日に代わり、指揮をとっていたのは彼女なのです。気まぐれが破綻する日は、そう遠くないことを祈るばかりです。

鈴木寛の政策のツボ 第十四回

2012.04.09 Vol.547
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困難を乗り越え、努力し続ける球児たちにチャンスを

 今回の第84回選抜高校野球大会(春のセンバツ)も多くの感動に包まれました。

 今年は先の大震災で被災した石巻工業高校が21世紀枠として選ばれ、さらに選手宣誓を同校の主将が務めるなど、復興への兆しを見せる象徴的な大会となりました。

「21世紀枠」はその名の通り2001年から始まり、何らかの困難を克服して健闘しているチームや、他校の模範となっているチームが選ばれるものです。

 石巻工高はグラウンドが水没し、部員の7割の自宅が全半壊するなど甚大な被害を受けました。そんな中、昨年の夏の大会予選に出場できたのは、全国各地から被災地支援をしたいという方々が、文部科学省が立ち上げた「子どもの学び支援ポータルサイト」などを通じて、バットやグローブなどの必要物資が支援をしてくださり、部活を早期に開始することができたからです。そして秋季大会で、石巻工高は地区大会を勝ち上がりました。まさしく困難を乗り越えたチームだといえるでしょう。

 また、今大会おなじく21世紀枠に選ばれている兵庫県の洲本高校は、1995年の阪神・淡路大震災の直後に生まれた世代が中心選手となって県内の強豪校と競り合ってきました。北海道の女満別高校も、極寒の地で部員が少ない中で健闘したチームです。困難を乗り越えて努力を続ける球児たちにとって、21世紀枠というチャンスがあるということは非常に喜ばしいことだと思いますし、そうした高校生の姿に我々も心洗われ、甲子園の魅力もさらに高まっています。

(参議院議員)


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