“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第134回目は、『シン・ラジオ』について、独自の梵鐘を鳴らす――。
平成ノブシコブシ 徳井健太の菩薩目線カテゴリーの記事一覧
バッファロー吾郎・竹若さんの大喜利回答を見て、自分の「尖り」は丸くなっていった〈徳井健太の菩薩目線 第133回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第133回目は、“尖り”について、独自の梵鐘を鳴らす――
人間は、一つ何かが変わると、がらっと見える景色が変わってしまう〈徳井健太の菩薩目線 第132回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第132回目は、あるイベントについて、独自の梵鐘を鳴らす――。
『オモウマい店』は画期的な番組。そして今日も、「全録レコーダー」は動き続ける〈徳井健太の菩薩目線 第131回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第131回目は、最近のお気に入りバラエティ番組について、独自の梵鐘を鳴らす――。
ハライチ・岩井からの一言で、大人になるのは尊い作業だと再認識した〈徳井健太の菩薩目線 第130回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第130回目は、『ゴッドタン』の楽屋での出来事について、独自の梵鐘を鳴らす――。
しくじり先生の収録で目撃した、相方・吉村のあまりに蛮勇なスター気質〈徳井健太の菩薩目線 第129回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第129回目は、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』の収録で遭遇した相方・吉村崇の言動について、独自の梵鐘を鳴らす――。
小さな発見をたくさん見つければ、大きな発見になる。『チャンスの時間』の収録の片隅で見た、“バラエティの素敵な世界”〈徳井健太の菩薩目線 第128回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第128回目は、『チャンスの時間』の収録で見た光景について、独自の梵鐘を鳴らす――。
『敗北からの芸人論』を発売して思った、“売れる≒同業者から嫌われる”ということ〈徳井健太の菩薩目線 第127回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第127回目は、2月28日に上梓した『敗北からの芸人論』について、独自の梵鐘を鳴らす――。
絶叫で投げつけられた糞を、大絶叫で投げ返す――。すさまじい店員を見た〈徳井健太の菩薩目線 第126回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第126回目は、コンビニで遭遇した喧噪について、独自の梵鐘を鳴らす――。
やっぱり新宿という街は狂っているなぁと思う。
前回、『新宿という街は、やっぱりどうかしている。人間をむき出しにできる街』 と題して、異世界・新宿について述べさせていただいた。考えようによっては、こんなにネタが転がっている街はないから、若手芸人は新宿周辺に住んだらいいのになぁなんて思う。
大量にコピーをとらなきゃいけない。そんな理由で、家からそう遠くはないコンビニへ行ったときのお話。大量にコピーするため、1時間ぐらいかけて占拠していた俺自身も、招かれざる客。でも、どうしてもコピーをしなければいけない手前、居続けなければいけない。1時間も新宿のコンビニにいると、いろいろな人が往来していく。
「どう考えてもクレーマーだな」。なにやらぶつくさ言いながら店内をおらついている30代くらいの客がいた。コピーをしているけど、不審な人は不審だと気が付くもんだ。
「おい! おい! おい!」
誰に対して怒りを露わにしているのかわからないけど、案の定というべきか不審に火が付き始めた。後に判明するのだが、どうやらその人は、ドロドロ系のコーヒーを購入したため、細いストローに不満を覚えているらしかった。ストローが太くないと吸い上げることができないから、ストローを交換しろ――。あさましい怒りが爆発していた。
でも、そのコンビニには「太いストローがない」という。店員さんも、その一点張りで難癖に対応していた。ウィーン、パシッ。その間、ずっとコピー機はなり続ける。クレームとコピーの音が、店内にこだまする。
「お~い! おい、おい!」
諦めないクレーマー。いよいよ、「太いストロー、寄越せっつってんだろ!」と理不尽に大声で怒鳴り始めてしまった(このとき、コピーを取りながら、はじめて俺は怒号の理由が“太いストロー”だと気がついた)
すると、店員。
「ねぇって言ってんだろうが! どっか行け、ク●野郎が!」
と、大声で吐き捨てた。一心不乱にコピーを取り続けていたから、最初はクレーマーと誰が口論をしているのかわからなかった。あまりの吐き捨てっぷりに驚き、声の主の方向を見てみると、制服を着た60歳くらいのスタッフが、物凄い形相でクレーマーに暴言を吐いていた。「マジか」と思った。
当然、そのクレーマーは「何だその口の聞き方は!」と応戦する。「上の人間に電話してやるからな!」とか何とかかんとか。 すると、店員。
「やってみろこの野郎! 出てけ、馬鹿野郎!」
クレーマーの5倍くらいの声量でブチ切れた。もう止まらない。アウトレイジの武さん。年齢を感じさせない暴言。
俺は A3用紙でひたすらコピーを取り続けていたから、次第に紙がなくなっていくのがわかった。「頼むからこの悲しいバトルが終わるまで、A3用紙よ、尽きないで」。もし尽きたら……いったい、どんなテンションで俺は、「あの A3の紙が切れたんですけど」ってアウトレイジと化した店員に頼みに行けばいいんだろう。十字を切る思いで、紙に願った。
そろそろなくなろうかというとき、現場は終戦を迎えた。見事撃退し、クレーマーはしぶしぶ店を出て行った。俺は、一にも二にも「コンビニの店員さんって、キレるとあんなにキレるんだなぁ」と妙に感慨にふけってしまった。気をつけなきゃいけないなと思った(いや、理不尽なクレームを言うつもりはないけど)。
そりゃそうだ。「太いストローがない」ってだけで、絶叫してクレームをつけることがどうかしている。でも、60歳のコンビニの達人は、そういう人の対処方法に慣れているからなのかな。 絶叫で投げつけられた糞を、大絶叫で投げ返していた。新宿に慣れると、新宿に吞み込まれるのかもしれない。
家から近いコンビニなので、今後もこのコンビニに行かなきゃいけないのに、なんだか腰が重い。あんなに不穏なやり取りを見て、どんな感情で、あのコンビニの達人の接客を受けたらいいんだろう。
煙が立ちこめるように不審と不穏が広がっていく店内で、俺の神経はやられていたんだろうなぁと思う。クレーマーが去り、ようやくコピーが終わろうというとき、本来コピーするべき面とは逆側をコピーし続けていたことに気がついた。ホントに、どうかしている人しかいない。
新宿という街は、やっぱりどうかしている。人間をむき出しにできる街〈徳井健太の菩薩目線 第125回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第125回目は、テイクアウトした弁当について、独自の梵鐘を鳴らす――。
腹が減ったので、飯を買いにふらっと外に出てみた。
コンビニで買おうと思ったもののなんだか味気ない。そういえば前から気になっていた弁当屋があったので行ってみることにした。明らかに個人経営だろう年季の入った弁当屋。嫌いじゃない。嫌いになれない。
平日、お昼時。どう考えても客が駆け込むであろう時間帯。店頭には、「米が炊けておりません」と書かれていた。準備中の張り紙。ありえねえと思った。新宿という街は、やっぱりどうかしている。平日昼時に、弁当屋が堂々と準備中を掲げられるって、この街は一体どんな人たちが暮らしているんだろうか。普通の街だったら、潰れているって。
半ば呆れつつ、半ば畏れを抱きつつ、飯を求めて街をさまよう。そういえば。これまた前から気になっていた昭和のたたずまいのビジネスホテル、コロナのご時世、テイクアウトの弁当を販売していたような。遠い昔からその街に馴染んでいるビジネスホテル。街中華ならぬ街ビジホ。緑や青の背景に、白抜きの文字でホテル名が書かれている、あの哀愁漂うビジネスホテル、いやシティホテルと呼んだ方が、それっぽい。
入り口に置かれたカートを覗くと、スパゲッティと肉系と魚系、3種類の弁当が見本写真とともに売られていた。どうやらスパゲッティは売り切れているらしい。写真を見る限り、美味しそう。
そして、その横には何の声も出さずに、ただただ弁当の横に突っ立っているだけの男性がいた。支配人なのか……。なんにしても、気持ちが良いくらいやる気がないことだけは伝わってきた。年齢は50代くらい。
「あの、弁当が欲しいんですけど。スパゲッティは売り切れなんですか?」
そう伝えると、「スパゲッティは注文があってから作ります」と支配人は教えてくれた。出来立てとはありがたいじゃない。安心した俺は、スパゲッティと肉系の弁当、それぞれ一つずつを頼むことにした。
スパゲッティは注文が入ってから作ってくれるのに、肉の弁当に関してはこの寒空の下、カートの中に鎮座ましていた冷え切ったそれを、そのまま袋に詰め込み始めた。てっきりサンプルかと思ったいたから、びっくりしちゃった。スパゲッティは作ってくれるのに、肉と魚は寒空ダイレクト。おまけに、支配人は一番小さいビニール袋に弁当を詰め込むものだからビチビチ。弁当がラバースーツを着用しているみたいになっている。
スパゲッティ完成まで待ること5分。肉の弁当はレンジで温めること必至。
その間に会計を済ませると、支配人は「いま新宿区でくじをやっているんです」と話し出した。なんでも総額ウン千万円のくじをやっているといい、詳しく聞くと500円と100円にわけた超小口の商品券が当たるらしい。
「どうぞ。引いてください」。差し出されたくじ箱には、信じられない量のくじが入っていた。手が入らないんじゃないかっていうくらい密密。訪れる人が異常に少ないホテルなのかななんて思いながら、恐る恐る手を入れてくじを引くと、一等が当たった。
支配人はビックリするようなテンションで、「素晴らしい! 素晴らしい! 素晴らしい!」と連呼する。壊れたおもちゃのようで怖かった。どうやらこのホテルでは初の一等だったようで、500円の商品券の当たりを、まるで俺がハワイに行けるかのように喜んでくれた。
二つ合わせて会計は1410円。だから俺は、その500円を即行で使うことにした。すでに1510円を支払い、その後、くじを引いたわけだから、総計は910円。目の前には、まだ1510円があるわけで、そこから500円を俺に戻して100円を手渡せばいい――はずなのに、支配人は一度レジに向かい、600円を持ってきた。手際の悪さに痺れた。この人は支配人じゃない。もし、支配人だったら経営が成り立つわけがない……ああ、ここは新宿だった。平日昼時に、弁当屋が「米が炊けておりません」と掲げる街。
やる気のなさや手際の悪さ、惰性をむき出しにできる街だからこそ、俺は居心地の良さを感じてしまうのかもしれない。
オリエンタルラジオの中田のあっちゃん(中田敦彦)とコラボをさせてもらったとき、彼は「むき出しのまんじゅうをそのまま売っていて、誰が買うんですか?」とアドバイスしてくれた。その時点での『徳井の考察』は、今のように作務衣を着たり、グリーンバックを使ったりはしていなかった。むき出し。
「徳井さんのチャンネルはもっと伸びるはずなんですよ。でも、背景も世界観も適当すぎる。僕は、美味しいチョコレートをきちんとパッケージ化して、店内も飾り付けて売るように意識している。どっちの方が売れると思いますか?」
このシティホテルは俺だったんだ。しっかり頭が痛くなった。
生まれて初めて相方・吉村を破天荒だと思った札幌の夜<徳井健太の菩薩目線 第124回>
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第124回目は、相方・吉村崇の驚きの行動について、独自の梵鐘を鳴らす――。
年明け。
平成ノブシコブシが二人そろってコンビでロケをする機会があった。場所は北海道。しかも、そのまま2つの番組の収録をする――という超レアなスケジュール。
一つ目の番組は、『満天☆青空レストラン』( 2月5日放送回)。帯広にほど近い幕別町でロケを行い、その後、一度札幌に向かい、一泊。翌朝、室蘭へ出発し、『道スタ外伝~179の魅力お届けします~』の収録を行う行程だった。
ありがたいことに札幌へは、ハイエース型のタクシー(ハイヤーだったかもしれない)をチャーターしてもらい、運転手さんであるおばちゃんドライバーとともに、のんびりと向かうことになった。
スケジュールには、幕別~札幌「3時間」と書かれてたが、かつて俺は北海道の別海町に住んでいたので、「無理だろうな」と思っていた。高速道路が走っていたとして、真冬の北海道。道東から札幌へは4~5時間は見た方がいい。ロケで頂いたビールを車内で飲みながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
ところが、吉村は3時間で着くというスケジュールを真に受けていたようで、きっちり3時間後に知り合いと札幌で寿司を食べる予約を取っていた。俺は「無理だろうなぁ」と思いつつ、仮眠を取ることにした。
目が覚めるとあたりは暗くなっていたから、「そろそろ札幌かな」なんて思い、スマホのマップを見てみた。すると、まだ十勝を脱出するかしないかくらいの距離。運転手に尋ねると、トンネルの中でトレイラーがスリップを起こし、“く”の字の状態らしい。そのすぐ後ろにいた俺たちは、立ち往生しているという。
札幌までは9時間かかった。予定の3倍の時間がかかり、さすがに俺もビックリしたけど、こんな日もあるさ。吉村の寿司の予約も間に合わない。運転手さんも、この後帯広まで戻らないといけない。たまたま、今日はついていない日。
札幌の市街地が見えたときは、夜も更けていた。翌日は、ロビーに朝7時集合。こうなると、もう早く寝たい。
まもなくホテルに到着するというとき、突然吉村が運転手であるおばちゃんドライバーに、「これから一緒に寿司食べませんか? 席が3席取れたんで。どうですか?」と声をかけ始めた。
6時間押しのスケジュールなのに寿司を食べに行くつもりなのか、ということにも驚いたし、こんなにオーバーしても予約は生きているのかとも思ったし、吉村の知り合いは愚直に待ち続けているのか、とも思った。
いろいろと「こいつは何を言ってるんだ」と思ったけど、一番むちゃくちゃだなと感じたのは、今日初めて会って、さして会話もしていないおばちゃんドライバーを寿司屋に連れていき、ご馳走しようとしていることだ。こいつは普段から、鶴瓶師匠みたいなことやってんのか? と思った。『吉村の家族に乾杯』みたいなことを、カメラが回っていないときでもやってんのか。
誘われた運転手さんは、驚きと嬉しさ、気恥ずかしさ、そんな予期せぬ感情が入り混じったような声で、「どうなんでしょう……ちょっと会社に連絡してみますね」と返していた。
吉村の知り合いは、どう思うんだろうか。突然、吉村が見ず知らずのタクシー運転手を連れて来たら、落ち着かないだろうに。おそらく、吉村は何も考えずに誘ったんだと思う。あいつは破天荒キャラなどと呼ばれてきたけど、俺は一度たりともそうは思ったことがなかった。でも、その日の吉村は間違いなく破天荒だった。はじめて吉村を破天荒だと思った。
俺は疲れていたから、翌日に備えゆっくり眠ることにした。すると、夜中の1時半くらいにホテルの部屋の電話が鳴った。受話器を取ると、フロントから「徳井さんにつないでほしいという方から電話が。おつなぎしてもよろしいでしょうか」。よくわからないけど、つないでもらうことにした。
電話の主は、先ほど俺たちを帯広から連れてきてくれた、そして吉村にお寿司を誘われたあの運転手さんだった。寿司を食べに行って、何かあったのか?
「帯広に戻ったんですけど、後部座席から徳井さんのだと思うんですけど、財布があって。忘れてませんか?」
運転手さんは、吉村とは寿司を食べに行かなかったんだ――。そんなことを起き抜けにボーッと考えたが、よく考えたらそこは大切なところじゃない。財布? 自分の手元に財布があるかどうかなんて確認せずに、チェックインして熟睡。その言葉を聞いて、あるはずの財布がないことに初めて気がついた。
一人が突然「寿司食べませんか?」と誘い、もう一人が財布を忘れる。どうかしているコンビだなと思った。
あの運転手さんは、俺の財布を見つけたとき、心臓がギュッとなっただろうし、吉村から誘われたときも、ウッとなったと思う。コンビ揃って、わけのわからないプレッシャーを与えてしまったこと、この場を借りて深く陳謝したい。
あまり機会のないコンビでの連チャン仕事に、体が対応していなかった説。最近はどういうわけか、平成ノブシコブシがコンビとして仕事をする機会がなんだか増えている。
『満天☆青空レストラン』でのロケは、若手の頃を思い出したりした。コンビ揃って、地方でロケをするなんて本当に久々だ。お互い歳をとったからかもしれないけど、ナチュラルに仕事ができて、シンプルに良かったなと感じた。その安心感が、わけのわからない言動につながったのかしれない。運転手さん、ごめんなさい。