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【ウィズコロナの演劇シーン】Pityman『みどりの山』

2020.09.25 Vol.733

 今年で21年目を迎えた三鷹市芸術文化センターの名物企画『MITAKA“NEXT”Selection』。「今後の飛躍が期待される劇団」というくくりで劇団をセレクトするこの企画をきっかけに、これまで多くの劇団が飛躍を遂げてきた。

 今年の第3弾となるPitymanは劇作家で演出家の山下由の脚本、演出作品を上演する団体。山下は若手演出家コンクールで2013、2014年と2年連続で優秀賞を受賞している。

 その作品は日常を繊細に描写し、ドライでありながらさみしさを抱える青年たちを会話劇で描き、モザイク的にシーンを切り取り合わせる。「いちばん大きなものは、いちばん小さなものの中に」を標ぼうし、小さな部屋の片隅の“なんでもなさ”から世界を照らし出そうとしている。

 今回は妊婦たちの暮らす山間の代理母父出産施設を舞台に、男も女もみんな妊婦というちょっと不思議な世界の物語。

 公演にあたり山下は「世界が大変な状況にあるこの中で、集まることができたなら、誰かに子供を産んでもらい、誰かの子供を産み、遠くにみどりの山が盛り上がるこの作品を作ります」とコメント。いろいろと考えさせられそうな作品のよう。

【ウィズコロナの演劇シーン】asatte FORCE参加作品 ブス会*『女のみち2020~アンダーコロナの女たち~』

2020.09.24 Vol.733

 劇作家で演出家、そしてAV監督でもあるペヤンヌマキは今年7月に「テレ東無観客フェス2020」に参加し自身が主宰する演劇ユニット「ブス会*」の代表作「女のみち」シリーズ新作『女のみち特別編~アンダーコロナの女たち~』を無観客で上演し配信した。今回は劇場に観客を迎えタイトルも「女のみち2020」に改め、本多劇場版の演出で「asatte FORCE参加作品」として上演する。

「女のみち」はもともとAVの撮影現場での女優やスタッフたちの生々しいやり取りを描いたブス会*の代表作。今回は緊急事態宣言が明けた後、久しぶりに行われるAV撮影の控室を舞台に、外出自粛でうっぷんが溜まりまくった女たちが怒涛のようにしゃべりまくる。そしてコロナ厳戒態勢下で行われるAV撮影はいったいどうなるのか--といったお話。

 ペヤンヌマキは上演にあたり「『女のみち』に登場するのは、どのような状況でも“それでも生きていくんだよ”の精神でたくましく生きていく女たち。誰もが生命の危険にさらされる毎日を生きている今、この舞台を観た人が、明日もなんとか生きていこうと、ちょっぴり元気になってもらえたらいいなと思っています」とコメントした。

 舞台の上演に先駆け、9月20日には阿佐ヶ谷ロフトAでペヤンヌマキ、出演の高野ゆらこ、もたい陽子、そしてテレビ東京の祖父江里奈プロデューサーが出演するトークと『女のみち2012再演』を上映するイベントが開催される。

 舞台、トークイベントとも配信も行われる。

【ウィズコロナの演劇シーン】ミュージカル『ビリー・エリオット』

2020.09.16 Vol.733

 待ちわびていたミュージカル『ビリー・エリオット』の幕がいよいよ上がる! 主人公ビリーにも負けないぐらい踊りだしたい気分だ。

 本作は、アカデミー賞監督賞にノミネートされた映画『リトルダンサー』をミュージカル化したもの。イギリス北部の貧しい炭鉱町に住む11歳の少年ビリーがバレエとの運命的な出会いを果たし、その世界に没頭していく。映画では成長した姿を人気ダンサーのアダム・クーパーが演じて、話題を集めた。

 ビリーは、炭鉱で働く男たちに囲まれ、男として強さやたくましさをより求められる環境で育ち、バレエは女の子のものと父親からも強力な反対にあう。それでも夢に向かってステップを踏み続ける姿に周りは心を熱くし、世界は心を大きく揺さぶられた。

 ミュージカルは2005年に初演。日本には2017年に上陸した。その際には16万人を動員する大ヒットミュージカルになった。そして、今年、待望の再演を迎えるにあたり、大規模なオーディションが行われ、4人のビリーが選ばれた。お父さん、先生、兄などもパワフルなキャストが揃っている。万全の対策をしたうえで、劇場でミュージカルを見る幸せを味わってほしい。

3年ぶり待望上演「足ながおじさん」題材ミュージカル。井上芳雄「このような時期だからふさわしい」

2020.09.03 Vol.Web original

 東京・日比谷のシアタークリエで3日、4日から上演のミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』の公開ゲネプロが行われた。

 2012年の初演以来、幾度の再演を重ねてきた本作が3年ぶりに帰ってきた。アメリカの作家ジーン・ウェブスターの小説『足ながおじさん』を原作に、知的で紳士だが一風変わった若き慈善家・ジャーヴィスと、孤児でありながら聡明なジルーシャとの心温まる恋の物語を、タッグを組んで8年、ベストキャストの呼び声も高い井上芳雄と坂本真綾が演じる。

 物語の中心は、「月に一度の手紙」。決して会うことなく、手紙のやり取りを通じて互いの想いを深めていく2人の姿は、大切な人とソーシャル・ディスタンスが必要な現在のコロナ禍にどこか重なる。「幸せの秘密は目の前にある」というメッセージは、こんな時だからこそ温かく心に響くはず。休憩を除いて2時間20分、長台詞と珠玉の30曲あまりを休みなく舞台上で届ける2人芝居も必見だ。

上白石萌歌をはじめ実力派の俳優12人が揃ったPARCO劇場オープニング・シリーズ『ゲルニカ』

2020.08.28 Vol.732

 日本のみならず韓国など国外にも活動の幅を広げ、2018年読売演劇大賞及び最優秀演出家賞に輝く演出家、栗山民也。2018年紀伊國屋演劇賞個人賞受賞、鶴屋南北戯曲賞など数々の賞を受賞し、筆力に定評のある劇作家、長田育恵。PARCO劇場のオープニング・シリーズ秋の陣第1弾でこの2人の待望の初顔合わせが実現する。

「ゲルニカ」というのはスペイン北部の町の名前であり、同国の画家であるパブロ・ピカソの絵画の作品名でもある。

 スペイン内戦時にこの町は無差別爆撃を受けたのだが、その悲劇に突き動かされピカソが作品化した。本作はそのピカソの絵画「ゲルニカ」に出会った栗山が20年以上にわたり温めてきた構想をもとに長田がゲルニカに生きる市井の人々の生きざまに視点をあてた群像劇に仕立て上げた。

 ゲルニカに住む人々はよもや自分たちの町が空爆を受けるとは思っていなかった。戦争は遠くのものと思っていた。空爆、戦争という言葉を「疫病」や「天災」といった置き換えれば…。時勢柄、思わずそんな視点で見てしまいそうな作品。

 ヒロイン役の上白石萌歌をはじめ実力派の俳優12人がそろった。

日本に今一番必要な「笑い」をとことんやり切ってくれるはず 劇団献身『知ラン・アンド・ガン!』

2020.08.21 Vol.732

 今後の飛躍が期待される若手劇団を集めて贈る、三鷹市芸術文化センターの名物企画『MITAKA“NEXT”Selection』の第2弾。

 劇団献身は早稲田大学演劇倶楽部出身の奥村徹也が、卒業後1年間のサラリーマン生活を経て2014年に旗揚げした劇団。その作品は「ノンストップナンセンスコメディ」と銘打つように“3秒に1度”と評される圧倒的手数のギャグが特徴。このギャグを武器に、ワンシチュエーションはもちろん、ハイスピードかつ複数の時間軸で構成された世界を縦横無尽にふざけ倒す。

 今回の作品は、指示を忘れて、勘で動き続ける7人の男たちによる「センチメンタル遊撃軍奮闘記」。「遊撃軍奮闘記って何のこと?」と思ったら、もう奥村の掌の上。とりあえず劇場に確かめに行くことをお勧めする。

『MITAKA“NEXT”Selection』に出る劇団は前年には決定しているのだが、今年、劇団献身が選ばれていたのは、今となってみれば最高のチョイス。なぜなら彼らはきっと、新型コロナウイルスによって閉塞感のある日本に今一番必要な「笑い」をとことんやり切ってくれるはずだから。

繊細で綿密な会話劇と空間演出 東京夜光『BLACK OUT~くらやみで歩きまわる人々とその周辺~』

2020.08.14 Vol.732

 三鷹市芸術文化センターの名物企画である『MITAKA“NEXT”Selection』も今年で21年目を迎える。「今後の飛躍が期待される劇団」というくくりで劇団をセレクトするこの企画をきっかけに、これまで多くの劇団が飛躍を遂げてきた。

 今回、第1弾となる「東京夜光」は横内謙介氏に師事したことから劇団扉座の演出助手を務め、また多くの市民劇や研究所公演、映画などに脚本・演出、演出助手とさまざまな形で関わった経験を持つ川名幸宏が作・演出を務めるカンパニー。2018年の「第28回下北沢演劇祭」の若手支援企画「下北ウェーブ2018」に選出されたことから旗揚げした。作品では川名自身の経験や、そこで得た感覚を普遍の物語に昇華し、繊細で綿密な会話劇と、ムーブメントによる空間演出を織り交ぜる試みをしている。

 タイトルである「BLACK OUT」には「暗転」という意味があり、本作は演劇の現場が舞台で川名がこれまで務めてきた演出助手という仕事から着想を得たものとなっている。

いしいのりえと岩田光央のユニット「カナタ」 活動10周年記念公演「あぶな絵、あぶり声 ~祭~」再始動

2020.08.13 Vol.732

 イラストレーターのいしいのりえと声優の岩田光央による愛交朗読ユニット「カナタ」。2010年から「大人の女性が楽しむ空間」をコンセプトに、男性声優や俳優がごく普通の男女の恋愛物語を、スクリーンに投影したイラストとキーボードピアノの生演奏をバックに朗読する「あぶな絵、あぶり声」を発表してきた。観覧は18歳以上の女性限定という制限を設けているにもかかわらず、毎回大きな話題と反響を呼んでいる。

 今年で10周年を迎えた同ユニットだが、当初4月に予定していた記念公演は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で全公演中止。この秋、ファン待望の記念公演が改めて開催されることが決定した。神奈川公演は横浜ランドマークホール、東京公演は品川グランドホールにて、出演は主宰の岩田光央を始め蒼井翔太、仲村宗悟、佐藤拓也、畠中祐、小野大輔、豊永利行、森川智之という超豪華声優陣が日替わりで登場する。

 いしいの絵と文、岩田の演出により絵と声の両サイドから表現した「愛交ストーリー」が人気の舞台。感染対策を万全に濃密な世界を楽しみたい。

彼はいったい何ものなのか? 英児童文学の傑作を舞台化した『スケリグ』

2020.08.08 Vol.732

 浜中文一が主演する舞台『スケリグ』が、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演中。本作は2019年に浜中主演で上演されており、再演。演出はウォーリー木下が務めている。

 イギリスの作家デイヴィット・アーモンドによる児童文学の傑作『スケリグ(Skellig)』を舞台化したもの。浜中が演じる古い家のガレージの片隅に住む「彼(スケリグ)」を少年マイケルが見つけたことがきっかけとなって物語が展開する。マイケルには病気の妹がいて両親は彼女ににかかり切り。マイケルは隣の家に住むみなとスケリグを助けようと動き始めて……。

 7名のキャストはひとりが複数の役を演じたり表現したりと、大忙し。そこに生演奏と映像を駆使した美術が重ねられ、魅力的な世界が広がる。不思議で温かな世界を描き出す。

 8月16日まで同所で。その後、大阪、愛知、所沢(埼玉)で公演がある。

黒羽麻璃央が演じる、志々雄真実のビジュアル公開! ミュージカル『るろうに剣心 京都編』

2020.08.05 Vol.Web Original

 小池徹平が主演するミュージカル『るろうに剣心 京都編』(IHIステージアラウンド東京、11月3日~12月15日)で、小池演じる緋村剣心の最大の敵である志々雄真実のビジュアルが4日公開された。志々雄はミュージカル『刀剣乱舞』などの黒羽麻璃央が演じる。

 志々雄は、人斬り抜刀斎緋村剣心の後継者として、人斬り役を担っていた元・長州派維新志士。明治政府に抹殺されかけて全身火傷を負い、政府への強い恨みを抱き、復讐のために政権転覆を企てる。

 公開されたビジュアルは、志々雄の印象的なシーンを再現。怨恨や私欲にまみれた極悪人・志々雄真実を見事に表現している。

 大の「るろうに剣心」ファンだという黒羽は「作品を本当に愛しているので、出演が決まった時は、本当に僕は幸せ者だと思いました」。また「演出の小池修一郎さんは、僕がミュージカルをより一層好きになったきっかけを与えてくれた方です。稽古では必死に食らいついていきたいと思います。そして今回は歌もあり、殺陣もあり、芝居もあり、客席も回ってしまうという!体力の限界を超えたいと思っています。IHIステージアラウンド東京は、舞台転換だけでなく客席が動くことによって、より一層いろんな顔を魅せることができる劇場だと思っています。ご覧になる皆さんも、アトラクションのような感覚で、エンターテインメントとして楽しんでいただけると思います」と、やる気に満ちたコメントを寄せている。

 黒羽は、『刀剣乱舞』などの人気2.5次元ミュージカルからグランドミュージカルの『ロミオ&ジュリエット』、ドラマや映画と幅広く活躍する若手実力派。

 小池、黒羽のほか、本作には松下優也、加藤清史郎、岐洲匠、奥野壮(男劇団 青山表参道X)、綺咲愛里、鈴木梨央、仙名彩世、章平、山口馬木也らが出演する。

佐藤アツヒロと 鈴木勝秀が再タッグで新しい会話劇

2020.08.05 Vol.Web Original

 佐藤アツヒロが主演する舞台「『YARNS』~紡ぎ糸/作り話~」が今秋、東京と大阪で上演される。スズカツの愛称で親しまれる脚本家で演出家の鈴木勝秀と佐藤が再びタッグを組む会話劇で、鈴木が取り組んでいる能楽を現代的に蘇らせる試み、“スズカツ能楽集”のスタートとなる。

「再びスズカツさんの世界観を体感し、舞台上で表現できることを幸せに思います」と、佐藤。「スズカツさんとは、今までの作品を通していろいろな価値観を共有し、物の捉え方や感じ方に僕は常にワクワクドキドキしていました。これまでも、ほとんどセッションのような、その場その場で起こる物語を体感し表現してきたので、今回も二組のダブルキャストや、物語の軸となる深層心理によって、何が起こるかわからない新たに濃い演劇的セッションが生まれることがとても楽しみです」と、話している。

 このシリーズは、カウンセリングを受けに来る精神的に少し疲れた現代人と、患者の話を聞くカウンセラー(精神科医)が会話する中で、患者は記憶の糸を手繰りながら、無意識の中に眠る真実に向き合っていくのが基本のスタイル。今作では、佐藤が、見知らぬ女を夢に見て苦しみカウンセリングを受けに来る患者を演じる。

 佐藤は「自分自身の中にあるスズカツさんへの思いと、共存し合う価値観、そして更なる探究心を持ち、このキャストで新たなスズカツワールド「YARNS」に挑みたいと思います。そしてこの新しいスズカツワールドに挑戦してスズカツさんがニッコリしているところを見たいです」と、意気込んでいる。

 東京は10月7日~11月18日に浅草九劇で、大阪は11月21~23日でシアタードラマシティ。検温や消毒、客席のソーシャルディスタンスの確保はもちろん、舞台と客席間を透明素材で区切るなどさまざまな新型事ロなウイルス対策を講じて上演する。

 ほか出演に、鈴木裕樹、前田隆太朗、大山将司(Wキャスト)、中村まこと、加納幸和(Wキャスト)。

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