がん患者の心がV字回復するメソッドのすべてを初めて公開した『がんでも長生き 心のメソッド』が好評発売中。日本ではまだ珍しい精神腫瘍科(がん患者専門の精神科)の医師である聖路加国際病院の保坂隆医師に、コピーライターであり、2014年にステージ4の乳がんを告知された今渕恵子氏が、自らの体験をもとに心のケアの必要性とそのメソッドをインタビュー。がん患者の7割の心をラクにする2つの基本、「がんは高血圧や糖尿病と同じ慢性疾患のひとつにすぎない」「日本人の2人に1人はがんになる時代。でもがんで死ぬのは10人に3人」をはじめ、「肉体的な痛みは99.9%コントロールできる」「がんは第2の人生の始まり」など、目から鱗の事実をQ&A方式で分かりやすく解説。
【TOKYO HEADLINEの本棚】カテゴリーの記事一覧
『陽だまりの天使たち ソウルメイトII』【著者】馳星周
デビュー作『不夜城』をはじめ、ノワール作品のイメージが強い馳星周の犬にまつわる短編集の第2弾。章のタイトルにはトイ・プードル、ミックス、ラブラドール・レトリバーなど、犬の名前がつけられ、その犬種の犬と人間との出会いや別れ、絆を描く。
病に侵された少女が捨て犬の譲渡会で出会ったトイ・プードルのダンテ。決して人間に懐かなかったダンテと運命的に出逢い、一緒に暮らすことになった少女は固い絆で結ばれ、両親すらも入り込めない信頼関係を築く。楽しい時間を過ごす1人と1匹だが、少女の病気が再発して…「トイプードル」。
仕事も家庭も失った男が、死に場所を求めさびれたキャンプ場を訪れた。するとそこに、捨てられたとおぼしき1匹のみすぼらしいフレンチ・ブルドッグが現れる。とりあえずあり金をはたいて、ぶひ子と名付けたその犬にエサを与えていると、男の心に今までに感じたことがない感情が湧いてきて…「フレンチ・ブルドッグ」。
その他5つの本編も、感涙必至のストーリー。犬という魂の伴侶(ソウルメイト)が、人間を導き、癒し、時には人生の方向性まで示してくれる。犬には過去も未来もない。今を生きているだけ。しかしその姿が人に気づきを与えてくれるのだ。書き下しの巻頭詩「いつもそばにいるよ」も必見。犬を飼っている人は切なさで涙が止まらなくなるかも。1ページ目から、犬との生活の素晴らしさとやがてくる別れの切なさが心を震わせる。犬が教えてくれる愛する気持ちと、愛される喜び。そしてソウルメイトとして結ばれる絆は永遠だ。
【定価】本体1600円(税別)【発行】集英社
『「穴あけ」で難関資格・東大大学院一発合格!』 河合薫
気象予報士としてニュースステーションなどに出演していた河合薫が画期的な勉強本を出版。受験生や資格取得を目指す社会人に注目されている。
「この勉強法はノートの左半分に自分で穴を開けた問題を書き、右半分にその答えを書くというとてもシンプルなもの。高校受験の時、帰国子女だった私は、現代国語が360人中359番という成績で、大学入試も進路変更を余儀なくされるほど。そこで編み出した勉強法が、その後の人生でもとても役に立ったので、少しでも参考になればと本を書きました」
同勉強法で大学受験、国際線CA、第1回気象予報士、東大医学系大学院学術博士と難関大学や企業、資格を突破。それを生かせる分野で活躍している。
「実はこのやり方は、大人であればあるほど、知識を深められる。大人は穴あけ問題を作る時に、“どうしてそうなるんだろう”“この言葉の意味は?”など、疑問を持ちます。それをどんどん書き足していくと、その問題の周辺情報が広く分かると同時に、深く掘り下げた知識を得られる。私はこれを“知識のアメーバ化”と呼んでいます。それにより取得した“生きた資格”は実践でも非常に役立ちます」
今、働いている人にこの勉強法をどのように活用すればいいのかアドバイスを。
「20代、30代前半は仕事の基礎知識を作る時期なので、この本の前半部分の問題を作るところから始めてみてください。教科書を選び、毎日5分でいいから問題を作ることをルーティン化する。毎日の積み重ねが大切です。30代半ばの人は、3年間でいいので死ぬほど頑張れと(笑)。とにかく1章から3章までを必死にやって、知識を自分のものにしてほしいです。30代後半から40代の方は、3、4章目のアナロジーと企画の立て方を参考にしていただければ。そこに皆さんがやりたいと思っていることのヒントがあると思います」
いま、職場を、仕事を楽しめない人にとって必読の本だと思います
女子大を卒業後、吉本興業に入社し、故・横山やすしのマネジャーを務め、宮川大助・花子、若いこずえ、みどりを売り出した伝説のマネジャーの奮闘記。吉本興業といえば、言わずと知れた関西の大手芸能プロダクションで、現在では女性社員も多くかかえる大企業だが、1985年、著者が入社した時は、バリバリの男社会。右も左も分からないまま入社した著者は、初めて経験する事、信じられないトラブルに直面してもそれを笑顔とガッツで、そして時々涙を流しながら乗り越える。失敗も数多くやらかすが、その失敗を帳消しにするぐらいの仕事をやってのける。
しかし、ついに衝撃の事態が。べろべろに酔っぱらって仕事をしていたやすしを著者はセットの後ろに連れ込み殴ってしまったのだ。その後どうなったのか…は同書を読んでもらうとして、業界素人の女性がそこまでやったのは、仕事に対する責任感だけではない。仕事を、会社を、そして芸人を愛していたのだ。もちろん横山やすしも。手が付けられないほどの人物であったが、その才能を、そして根底にあるチャーミングな部分をとても好きだったのだと思う。でなければ、酒のせいで訳が分からなくなっている状態のあんな破天荒な人を、殴ることはできない。若い女性マネジャーの奮闘記にして、“仕事とは”“働くとは”ということを考えさせられる一冊。
『吉本興業女マネージャー奮闘記「そんなアホな!」』
【著者】大谷由里子
【定価】本体800円(税別)
【発行】立東舎
それでもごはんの時間はやってくる『考えない台所』
予約の取れない料理教室の先生が教える人生を変える台所術の本『考えない台所』が好評発売中。毎日時間に追われている、台所が汚いことにストレスをためている、料理がうまく作れないことに絶望している、毎日の生活にどこか後ろめたさを感じている…。そんなキッチン周りの悩みにこたえる同書は「正しいルールを知って、効率的に台所仕事をこなすための本」。作業時間もさることなら、献立作り、買い物、調理、収納などなど、気が付くと1日中料理のことを考えている人も少なくないはず。マインド編、準備編、調理編、冷蔵庫編、収納・片づけ編、道具編と考え方から、具体的な解決法、そして実践するためのコツや要領を丁寧に解説。付録の仕込み&栄養満点レシピも時短を助けてくれる。これを読めば、1日1時間自由になれる!?はず。
あの名作落語にはこんな続きがあったのか—?『えんま寄席 江戸落語外伝』
落語好きなら一度は思う「あの噺の続きは?」「あのサゲ(オチ)はなんか腑に落ちない」といった着想からヒントを得た『えんま寄席 江戸落語外伝』。「芝浜」「子別れ」「火事息子」「明烏」という落語の名作の登場人物が死んだあと、地獄の入り口で閻魔様に天界行きか地獄行きかを裁かれる時に、落語には出てこなかった“その後”や“サイドストーリー”が明らかになっていくという構成。これが、目まぐるしく変わるストーリー展開と、人物たちの意外な関係性により、話がどんどん膨らんでいき、実に面白い。
酒癖の悪い旦那を更生させ、立派な魚屋にした「芝浜」の女房。大店の女将としてその後も旦那を支え続け、めでたしめでたしとなったのか…と思いきや、閻魔様があの落語のサゲとなったその後の顛末を暴き、実はこの夫婦の関係は落語のようなものではなかったことを白状させる。さらに、実はこの女房「火事息子」の藤三郎とも何かしらつながっていて…と、一話完結ではあるものの、他の章のストーリーにもつながっているというなんとも高度な技で、ぐいぐいと引き付ける。
そして第4席「明烏」の浦里の章では、「明烏」のほか、「品川心中」「幾代餅」「五人廻し」「三枚起請」「紺屋高尾」といった要素がふんだんに散りばめられていて、落語ファンなら思わずニヤリとしてしまう。もちろん、落語を全然知らない人でも楽しめる地獄エンターテインメント(?)なのでご心配なく。逆にこの本を読めば、落語に興味が出てきて、これらの噺を聞きたくなるかも。本を読んでから、落語を聞いて、また本を読むと1回目の読後とは違った楽しさを発見できるはず。
『えんま寄席 江戸落語外伝』著者:車浮代
【定価】本体1500円(税別)【発行】実業之日本社
ANA社員が実践する37のコツ『仕事も人間関係もうまくいく ANAの気づかい』
6万部突破のロングセラー『ANAの口ぐせ』の第二弾『仕事も人間関係もうまくいく ANAの気づかい』が好評発売中。同書は接客するCAだけではなく、機長から整備士、オフィススタッフまで、全ANA社員に受け継がれる“気づかい”のコツを初公開。どんな人とでも良好な人間関係を築き、成果を上げるための具体的な方法を教える。もともと“弱小エアライン”“後発”の立場からスタートしたANAの武器は、とにかく愚直に、お客様満足を追求することだけ…。そんな状況だったから生まれた「ちょっとしたコツ」を、同書では具体的に解説。さまざまな角度から書かれている“気づかい”の例を日常生活で応用すれば、円滑な人間関係が築けそう。
なぜ、あの人はいつも得をするのか?『一流のサービスを受ける人になる方法』
サービスする側の本は多いが、サービスを受ける側の本は珍しい。同書には、どのようにしたら、さまざまな場所で一流のサービスを受けられ、ちょっとお得な気分を味えるのかということが書かれている。
ホテル、レストラン、飛行機、ゴルフ場など、一流のサービスが受けられたらちょっとセレブ気分になれる場での振る舞いは慣れていないとなかなか難しいもの。それらの場で最高のサービスを提供してきた人にどんな振る舞いをするともっとサービスしたくなるか、どんな言葉遣いだと好感を持つかなどをリサーチ。現場の声を元に、世界50カ国を訪れ、世界中で一流のサービスを受けてきた著者が、一流のサービスを引き寄せ、それらをスマートに使いこなすためのテクニックとコツを伝授。良い靴と高価な時計、女性ならバッグを身に着けるとか、白くて歯並びのいい歯がさまざまなシーンで有利など、実践できる外見的なアドバイスもあるが、繰り返し語られているのは、気持ちの面。
お金を払っているからといって威張らない。相手を尊重し、敬い、感謝をもって丁寧な言葉でリクエストを伝える。簡単なようで、どうしてもサービスを受ける側になると、忘れがちだ。かといってへりくだる必要もなく、自分の要求はきちっとするのが大事だとも。リクエストが単なるワガママにならないように、場の雰囲気を的確に判断し、さりげなく伝える。
一流のサービスを受けられれば気分がいいだけではなく、ホテルの部屋や飛行機の座席がグレードアップされる、入手困難なチケットが手に入り、楽屋に入れる、デキるウエイターがテーブル担当につくなど、お得な思いができると著者。ぜひとも会得したいものだ。
『一流のサービスを受ける人になる方法』著者:いつか
【定価】本体1500円(税別)【発行】日本経済新聞出版社
『柳家三三、春風亭一之輔、桃月庵白酒、三遊亭兼好、三遊亭白鳥「落語家」という生き方』著者:広瀬和生
同書は東京・世田谷区の北沢タウンホールで行われた「この落語家を聴け!」におけるインタビューを採録したもの。「この落語家を聴け!」はロング・インタビュー付きの独演会という形式で2012年7月から2013年7月(シーズン1)、及び2014年3月から2015年10月まで(シーズン2)の期間、ほぼ月に1回のペースで行われていた。今回登場する5人の落語家は皆、シーズン1、2の両方に出演しているため、インタビューは2本ずつ掲載。落語会には今を時めく春風亭昇太や柳家喬太郎、春風亭百栄のほか、落語協会最年少会長、柳亭市馬や橘家文左衛門など錚々たる噺家が登場。
その中でこの5人を選んだ理由として著者は「2010年代」を象徴する一冊にしたいと考えたからと語る。そのキーワードは「自然体」。「自然体」な落語を代表する演者が一之輔であり、白酒であり、兼好であると。そして古典の伝統を守る三三と奇想天外な新作の白鳥という「両極端な二人」も、昔の「古典派」対「新作派」のような図式とは異なる2010年代らしい「自然体」を感じさせる演者だという。そういわれれば彼らの落語を一言で表すと「自由」という言葉が浮かぶ。もちろん、彼らなりの落語の形をきちんと持ちつつだが、実に伸び伸びと楽しそうに落語に向き合っている。そんな彼らが、下積み時代のこと、師匠からの教え、ブレイクのきっかけや落語家としての苦しみ、楽しみを語る。とはいっても笑わせてなんぼの噺家。しかもトークの採録なので、思わず笑ってしまうので、電車で読む時は要注意。
『柳家三三、春風亭一之輔、桃月庵白酒、三遊亭兼好、三遊亭白鳥「落語家」という生き方』
【定価】本体1700円(税別)【発行】講談社
ズレているのは蛭子か孔子か、はたまた時代か?
最近、蛭子能収がプチブレイクしている。前作の『ひとりぼっちを笑うな』が14刷8万部を突破し、『生きるのが楽になる まいにち蛭子さん(日めくり)』が大ヒットというのだから、プチどころか大ブレイクといえるのだが…。その前に出ない感、ひっそり感がプチブレイクに見える理由なのかも。なぜ蛭子の言葉が受けるのか。松岡修造のような熱血に疲れた人が、その脱力系の言葉にホッとするからなのか。もしくは癒し系のフレーズの裏に鋭い真実が隠されているからなのか。その答えが最新刊『蛭子の論語 自由に生きるためのヒント』に隠されている。論語なんて読んだことがないどころか、そもそも知らなかったが、編集者の依頼に断れず、しぶしぶ読み始めたというものの、孔子の言葉にとても共感して…という触れ込みではあるが、蛭子なりにやや強引に解釈している部分もあり、興味深い。蛭子の主張をざっくりまとめると、「長生きしたい」「ギャンブルはやめられない」「ひとりぼっちでもいい」「空気なんか読めなくていい」「お金は大事」そして「自分自身を受け入れる」ということ。その一番の根底にあるのが、タイトルにもあるように「自由に生きたい」という人生哲学だ。自分らしく生きる自由を得るためには、やっかみや嫉妬心を買わないように目立たなく生きる。言い争いは非建設的なので、相手が間違っていても反論せず、謝ることも平気と言い切る蛭子はかっこいい。外見は弱く見せておいて、一番強いのはこういう人間だ。同書で孔子と蛭子の言葉を読めば、悟りが開けるかも。
【定価】本体800円(税別)【発行】KADOKAWA
大ヒットシリーズ第三弾は亡きオフクロに捧ぐ……笑って泣ける感動作!
バアちゃん(著者の祖母)、ケンちゃん(同父)、セージ(同弟)というメガトン級の3バカによる戦慄のバカ合戦が描かれ、大ヒットとなった『板谷バカ三代』シリーズの第3弾。
これはフィクションか?と思うような、とんでも家族を支え、まとめてきたのが、唯一まともでしっかりもののオフクロ(同母)。しかしそのオフクロが肺癌にかかり、2006年に闘病の末他界。死後、亡くなる直前まで家族に内緒で日記を書いていたことが発覚した。見つかってすぐには“涙がバカみたいに出てきて”とても読めなかった日記を、七回忌を迎えたのを機に読んでみた著書。その日記と著者の感想を紹介するとともに、日記を通して思い出したことや、その後の話をまとめたのが同書だ。
シリーズの愛読者なら知っていると思うが、このオフクロがいなければ、板谷家はとっくに崩壊していたのではと思わせるほど、まともなオフクロだけあって、さぞやそこには家族への愛情がいっぱいつまっているかと思いきや、嫁の愚痴やバカ家族を罵倒する言葉も。それでも日々生きていることに感謝し、思いやりを忘れないようにという文章に、真面目で誠実な性格が表れている。それにしても癌になってまで、家族の心配をし、病気と闘う様子は、気の毒でありながらも、あまりの突き抜けたエピソードに笑ってしまう。オフクロもぶつぶつ言いながら、そんな家族とのやり取りが楽しかったのではと思う。笑いと涙がちりばめられたこのエッセイには飾らない家族の日常と言葉が散りばめられている。