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ノンケが聞きづらいゲイの秘密、ぜんぶぶっちゃけます!!

2015.12.17 Vol.656

 ここ数年、芸能界は“おネエ”ブームにわき、次々と新しいおネエが登場している。だがひとくくりにおネエと言っても、個人個人抱えている状況は大きく異なる。現在、テレビで活躍しているおネエたちは大きく分けると、女装家、ニューハーフ、ゲイといったところだろうか。もちろん、女装家でゲイなど混合型も。そんなよく見かける親しみのある(?)おネエたちをはじめ、最近耳にする“LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)”を含むセクシャル・マイノリティー(性的少数者)について、ゲイマガジンの2代目編集長にして、自身もゲイだとカミングアウトしている竜超氏が、分かりやすく解説。美輪明宏が残した偉大な功績、日本初の同性愛マガジン『薔薇族』の創刊当時の社会背景、そこから現在に至るまでの同性愛者たちの歴史など真面目な文化史があると思えば、ノンケ(セクマイじゃない人、異性愛者)の素朴な疑問にも答えてくれる。例えば「新宿2丁目ってどんなところ?」「オネエご意見番がテレビにたくさんいるのはなんで?」

 さらには「昭和のゲイってどんな人たち?」など、軽いものからかなりディープなものまで盛りだくさん。今まで語られなかった魅惑のゲイワールドの秘密がぎゅっと凝縮された一冊。用語解説もあり、ノンケでも楽しめるエッセイになっている。付録として巻末には『薔薇族』のイラストレーターが描くゲイカップルの日常を描いた漫画も。

『火花』が223万部超!年間&歴代年間売り上げ総部数でトップに

2015.11.30 Vol.655

『オリコン 2015年 年間“本”ランキング』が30日発表され、又吉直樹の『火花』(文藝春秋)が223.3万部を記録して『BOOK(総合)部門』で1位に、さらにこの記録は同ランキングにおいて歴代最高になったことが分かった。また、デビュー作での同部門制覇は初。

 受賞した又吉は書面で「『火花』は「本好きのコアな人だけに」とか、その反対で「普段本を読まない人に」とかそういうことを考えず迷いなく書いた作品です。だから、多くの方に読んでいただけたことが何よりもう嬉しいです。音楽、映画、TV、劇場、お笑い……世の中には“面白いもの”がいっぱいあります。いろんな“面白いこと”の選択肢から、本を手に取って読んでもらうことがいかに難しいか……。そういう状況を踏まえて、今後も書いていきたいです。何人かの、本を買ってくれる読者の取り合いをするんじゃなくて、読書以外の“面白いこと”に対抗できる作品をつくっていくのが必要なんやろな、というふうに思います。本もお笑いも、これからも両方ちゃんとやっていこうと思っています」と、コメントを発表した。

 『火花』が歴代トップになったことで、歴代2位は『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉、2011年)の163.6万部、3位は『ハリー・ポッターと死の秘宝』(J.K.ローリング著、松岡佑子訳、2008年)162.5万部になった。

『オリコン 2015年 年間“本”ランキング』は、ウェブ通販を含む全国書店3517店舗からの売り上げデータをもとに集計したもの。集計期間は2014年11月17日~2015年11月22日。
 

大型新人始動! 笑って泣けるお笑い青春小説『上方スピリッツ』著者:奈須崇

2015.11.22 Vol.655

 著者の奈須崇は、吉本総合芸術学院(NSC)の出身で、同作が小説家デビューとなる。書籍の帯には同期のブラックマヨネーズ・小杉のコメントが掲載。その辺を踏まえて読むと、そのリアリティーに納得しつつ、このエピソードは実話なのか?と、お笑い芸人界の裏をのぞいた気になってしまう。

 ストーリーは、お笑いコンビ「上方スピリッツ」のラジオを偶然聞き、自殺まで考えた引きこもりからハガキ職人を経て、あこがれの上方スピリッツの構成作家として仕事をするようになった阿部の目線で進行していく。上方スピリッツの主戦場は日の出劇場という地下で日の当たらない劇場。売れていない芸人が、いつか売れっ子になることを夢見て、ライブやイベントを行う場所だ。しかし、その劇場の閉鎖が決まってしまう。そのことを阿部は、東京で漫才コンテスト“漫才コロシアム”に出演する2人には内緒にしていた。賞には及ばず失意のうちに大阪に戻って来た2人は自信をなくし、さらに劇場閉鎖という事実にショックを受ける。阿部はなんとかもう一度やる気を出して漫才コロシアムにリベンジしてほしく、さらには劇場の閉鎖を阻止したく奇策を立てるが、事態はことごとく予期せぬ方向へ向かい…。

 阿倍のお笑いを愛する気持ちと上方スピリッツの苦悩、そして劇場に関わるすべての人の人生に、読みながら心震える瞬間が何度も訪れる。しかし、そこをじめっとしたままにせずに、笑いに変えるワザはさすが吉本興業出身だ。いじめられっ子が主人公なので、お笑い好きはもちろん、悩みがある人も救われる痛快青春小説だ。

出版界に秘められた《日常の謎》は解けるのか!?『中野のお父さん』

2015.11.09 Vol.654

 主人公は大手出版社“文宝出版”に勤める編集者・田川美希。女性誌編集部を経て、文芸の書籍部門に移籍。中学からバスケットで鍛えた体力が自慢のアラサー女子。

 そして本のタイトルの“中野のお父さん”こそ、美希の実家・中野に住んでいるお父さんのこと。このお父さん、定年間際の高校国語教師なのだが、めちゃめちゃ博学で、勘がいい。持っている知識を総動員し、あっという間になんでも解決してしまうので、何かあると美希はお父さんに相談に行く。「あの、おかしなこと、いい出すとお思いでしょうけど——わたしには、父がいるんです。定年間際のお腹の出たおじさんで、家にいるのを見ると、そりゃあもう、パンダみたいにごろごろしている、ただの《オヤジ》なんですけど——謎をレンジに入れてボタンを押したら、たちまち答えが出たみたいで、本当にびっくりしたんです。お願いです。このこと——父にだけ、話してみてもいいでしょうか。」(本文より)。というように、答えの導き出し方が驚くほど鮮やかなのだ。新人賞最終選考に残った候補者からの思いがけない一言の真相とは(「夢の風車」)。

 またある大物作家にあてた女性作家の手紙に書き残された愛の告白は本物なのか(「幻の追伸」)。そして「わたしは殺人事件の現場に行き合わせることになったわけです」という定期購読者の話を聞くうちに思いもよらない事態に発展して…(「茶の痕跡」)。など出版社にまつわる8つのミステリーを、中野のお父さんが瞬時に解決。捜査なし、関係者への事情聴取なし、現場検証なし。娘の話を聞くだけでたちどころに疑問が解ける、痛快お茶の間ミステリー。

家の中には秘密(ドラマ)がいっぱい『我が家のヒミツ』

2015.10.25 Vol.653

『家日和』『我が家の問題』に続く奥田英朗の家族小説シリーズ第3弾。家族という、社会の中で最も小さな単位の組織の中で巻き起こる、日常のささいな出来事。しかし、ささいだけど、本人や家族にとっては特別な出来事を、ユーモアと愛しさをもって描く。31歳の敦美の悩みは不妊。そんな時、勤めている歯医者にずっとファンだったピアニストが通院するようになり…(「虫歯とピアニスト」)。

 同期のライバルの昇進が決まり、53歳で会社での出世レースに完敗したことが分かり意気消沈する植村。有給をとって妻と旅行に行っている時に、ライバルの父親が死んだという連絡が。(「正雄の秋」)。

 16歳の誕生日に、実の父親に会おうと決めたアンナ。いざ対面すると、ハンサムでお金持ち、そして一流演出家として芸能界でも顔が広い有名人だということが判明し…(「アンナの十二月」)。

 母が急逝し、憔悴しきった父親を心配し、実家に戻った息子。そのあまりの落ち込みぶりに、どうすることもできない息子に、会社の上司が何かと話しかけてくる(「手紙に乗せて」)。

 隣りに引っ越してきた夫婦が息を潜めるように生きているのが気になって仕方がない妊婦の葉子。犯罪者かスパイではないかと疑い出し、ついに行動を起こす(「妊婦と隣人」)。

 平凡な専業主婦だった妻・里美が突然選挙に立候補すると宣言。小説家の夫ははじめ、距離を置いてその様子を眺めていたのだが、選挙活動をする妻の姿を見ていると心境の変化が現れる(「妻と選挙」)。

 どこにでもありそうな家族の話が、切なく、ユーモラスに、そして優しく描かれたほっこり系の短編集。

やせたってアンタの心はデブのままよ。

2015.10.11 Vol.

マンガ、サイコー!『「美学」さえあれば、人は強くなれる〜マンガのヒーローたちが僕に教えてくれたこと〜』 著者:ケンドー・コバヤシ

2015.09.28 Vol.

人間存在を揺るがす驚愕のミステリー!

2015.09.14 Vol.650

 ある町で連続通り魔殺人事件が発生した。目撃者の証言から、グレーのコートの男が重要参考人として浮上。所轄の刑事・中島と捜査一課の女性刑事・小橋がペアを組んで捜査にあたることに。しかし、2人に与えられたのは、地域の聞き込み。犯人に迫るような情報がなかなか上がってこない中、2人は聞き込み中に不審な男を見つける。職務質問をしようとしたところ、逃げる素振りをしたその男を捕まえると履いていたスニーカーには血がつき、リュックの中からは血のついた包丁が発見される。これで連続通り魔は捕まったかと思われたが、中島と小橋は、その男が犯人だとはどうしても思えないでいた。しかし、犯人逮捕を焦る警察はその男の犯行だと断定しかけ…。

 という事件と誰かの小さい時の火事の記憶、そして模倣犯の登場など、先がまったく読めない展開で進む第1部。何か不穏な空気をまとう不安をかき立てるストーリーが第2部で突如として動き出す。そこに記された“コートの男”の正体、そしてそれが明かされたことで、ますます迷宮にはまりこむ事件が、第1部とはまったく別の顔で進展し、読んでいるものの頭を混乱させる。さらにバツイチ刑事の苦悩と脳天気に振る舞う小橋の心の闇も徐々に明らかに。そして驚愕の第3部では、それらの謎をすべて回収してくれる展開に。そこにある運命に翻弄される男と女の悲しい人生が事件の核心だった。家族だけではなく、世の中、果ては神にまで見捨てられた人間は救われることがないのだろうか。

 著者初の警察小説は、事件の真相の解明とともに、人間の心の深淵を描き出す。

「早死の祟り」に取り憑かれた居候は幽霊嫌い!? 

2015.08.23 Vol.649

 輪渡颯介の大人気の「古道具屋 皆塵堂」シリーズ第5弾。病で亡くなった人の家財道具はもちろん、首吊りや一家心中のあった家からでも平気で古道具を持ってくるという古道具屋皆塵堂。そのため、店には幽霊が出るという噂もちらほら。そんな皆塵堂に新たな奉公人がやって来た。その連助という男、幽霊や呪い、祟りを一切信じていない。そのため、幽霊が見える太一のことも敵視し、いつかその化けの皮をはいでやろうと、常に目を光らせている。

 いつものように皆塵堂に、やっかいな幽霊騒動が持ち込まれるのだが、なぜか店主の伊平次は連助には、幽霊を見せないようにしている様子。しかも、何やらコソコソと調べている。実は連助が幽霊などを信じないのは、彼自身が早死にをするという祟りに取り憑かれていたからだった。そのため、幽霊が出ると噂の皆塵堂にあえて乗り込み、幽霊や祟りの類がインチキだということが分かれば、自分の祟りも嘘っぱちだと証明されると思ったのだ。そんな連助の気持ちが分かるから、伊平次はじめ、魚屋の巳之助、地主の清左衛門らの皆塵堂に集まる人たちが、人知れず連助の祟りの謎を探り、どうにかそれを取り払おうと、動いていた。

 幽霊騒動と平行して、祟られている連助を救う算段をする彼らは、無事に謎を解明し、祟りを解くことはできるのか!? シリーズを重ねるごとにパワーアップしていく怪談騒動は意外な方向へ向かう。巳之助と猫のほのぼのエピソードも健在なので、猫好きな人にもおススメ。

ぶちギレる5秒前の知恵

2015.08.09 Vol.648

 精神科医による、感情的にならない極意がつまった本。会社でたまったマイナス感情が爆発する前にビジネスマンが読んでおくべき一冊。人間関係や仕事のストレスが原因で、心のバランスを崩す人が増えている現代。その症状が出る人もいれば、実は笑顔で働きつつ、大きなストレスを抱え、心が悲鳴をあげている人も。特に働き盛りと言われている40歳代の人にその傾向が多く見られるという。40歳代は上司と部下の板挟みとなる中間管理職とうい立場の人が多く、また激変するビジネス環境も、彼らを追い詰めている。

 その結果、鬱や引きこもりになる人もいれば、些細なことで感情のコントロールを失う、いわゆるキレてしまう人も。キレても状況は好転するどころか、ますます悪化し、自分自身も自己嫌悪に陥るというまさに悪循環。それにはストレスの正体を見極め、感情をコントロールして平常心を取り戻すことが必要だと著者は言う。マイナス感情が生まれる理由や会社の人間関係にイライラした時の対処法、感情的にならないための習慣、相手のマイナス感情をコントロールする技術など、精神科医が原因から解決法まで詳しく分析。具体的な体験談も豊富なので、あの時の自分はそうだったのかも…と思い当たる節がある人も多いのでは。「もう感情的にならない」極意を学んで、充実の40代、50代を迎えよう!

すべての猫が虹の橋で愛する人と再会できますように–

2015.07.25 Vol.647

「猫の世話をするだけの簡単なお仕事—喫茶虹猫」そんな求人募集を見て、獣医大学一年生の玉置翔はある古ぼけた喫茶店を訪ねた。医学部を目指していたのにすべて不合格で、浪人して挑んだ次の年もダメ。投げやりな気分で獣医大学を受け、たまたま合格したために、不本意に通っている彼はサークルにも興味がない。そこで学生課でなんとなく見つけた張り紙を見て、猫カフェだと思い応募したのだ。しかしそこで待っていたのは、「猫バカ」で引きこもりの宝塚的イケメンの美しきオーナー・鈴影サヨリと里親募集中の捨て猫たち。そして早速任された仕事は、厄介な婆さんが住む猫屋敷の掃除と店の猫に生涯愛してくれる飼い主を探してやること。軽い気持ちで始めたアルバイトは、重労働かつ非常に困難を極めるのだった。

 しかし、気が弱く小心者の翔は、なかなか「辞めます」の一言が言えず、ズルズルとバイトを続けていた。厄介な婆さんだけでもうんざりなのに、サヨリさん目当てにやって来る相田アニマルクリニック院長、子どもが猫に引っかかれたと怒り狂う榎田さんと、泣きじゃくるだけの奥さん、地域猫活動家の伊澤さん、白猫のアイをいつも膝にのせ佇んでいる美少年のヒカル君…などなど次々と面倒な事情を抱えたお客さんが現れる。寂しがり屋の人間たちと愛くるしい猫の日々を綴った9つのチャプターからなる長編小説はほっこりする物語であり、殺処分など現代日本のペットに関わる問題にもスポットを当てた問題提起の本でもある。

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