米テキサスで結成され、ブルックリンを拠点に活動する米ドリームポップ/アンビエントポップバンドのデビュー作。人気はすでに世界へと飛び火し、先日行われた来日公演も好評だった。どちらかというとウエットなドリームポップサウンドは日本のリスナーのハートをがっちりとつかむだろうし、聞く人を包み込む優しいサウンドも多くの音楽ファンを魅了しそうだ。すでに8月に開催されるHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERで再来日も決定しており、日本での人気を決定づけることは間違いなさそうだ。
カルチャーカテゴリーの記事一覧
獄中から溶け出す女の欲望が、すべてを絡め捕っていく『BUTTER』【著者】柚木麻子
ケーキやクッキーの甘い香りがただよってきそうなタイトルだが、だまされてはいけない。同書は、あの首都圏連続不審死事件の容疑者であり、死刑が確定となった木嶋佳苗をモデルにした、フィクションである。もっとも木嶋本人は「木嶋佳苗の拘置所日記」というブログで、自分がモデルであると言われていることに大憤慨しているが。とにかく現在の木嶋と同じく、結婚詐欺と殺人の罪で刑務所にいる“カジマナ”こと梶井真奈子が物語の中心だ。世間がこの事件に注目したのは、事件そのものというより、梶井が若くも美しくもないのに、次々と男性が彼女の虜になっていったということ。そして何より、彼女がそれを当然とばかりに、自信満々に自己肯定をしている様子が、不思議だったからだ。週刊誌の女性記者・里佳は、その理由が知りたくて、手記の執筆を頼むため面会を取り付けた。一筋縄ではいかない“食えない女”だが、その欲望と快楽に貪欲で、人の心を掌握することにたけた彼女の言動に里佳は次第に翻弄されていく。カジマナに取り込まれそうになる里佳は、必死に自分の理性を保とうとするが…。木嶋佳苗がモデルと知って、あの事件のことをなぞった本かと思いきや、まったく違って意表をつかれるだろう。カジマナの口から飛び出すバターを使った料理の数々。濃厚で粘りつくようなその描写は、人間の欲望そのものだ。
人は何故、欲するのか。そして欲する事は罪なのか。登場する人物たちが抱える欲望と、それをあざ笑い操る殺人鬼の対決を、よだれが出そうな料理の描写で表現。里佳はカジマナの呪縛から逃れることができるのか!?
心踊れ、体揺らせ『FUNK WAV BOUNCES VOL.1』CALVIN HARRIS
世界一の音楽プロデューサーとして数々の楽曲を世に送り出しているとともに、自らもアーティストとして精力的な活動を展開し続ける、カルヴィン・ハリスの最新音源。ファレル・ウィリアムス、ケイティ・ペリー、ジョン・レジェンド、クリード、アリアナ・グランデ、スヌープ・ドッグら豪華なゲストを招いて制作されている。ポップス、ヒップホップとジャンルを横断、人気上昇中の若手アーティストから音楽シーンの重鎮まで彼だからこそ集められたメンバーだ。今夏サマーソニックで来日、ヘッドライナーを務める。今年最も重要なアルバム。
心踊れ、体揺らせ『Mellow Waves』CORNELIUS
音楽ファンはもちろん、若手そして大御所のミュージシャンからもリスペクトを集め続けるコーネリアス。前作から3年ぶりとなる待望のフルアルバムが完成した。ループするリズムやフレーズ、心地良く響く言葉の連なり……すでに発表済みのアルバム収録曲『いつか/どこか』『あなたがいるなら』は耳にした人を残さず優しい表情にしてしまいそうなパワーがあり、アルバムをフル視聴したらいろいろな感情があふれだしそう。アルバムには10曲が収録されている。リリースパーティーのほか、フジロックフェスティバルなど今夏も生で聴けるチャンスも多そう!
萬斎が満を持して演出を手掛ける 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演 『子午線の祀り』
世田谷パブリックシアターは今年開場20周年を迎えたことから、4月からさまざまな「開場20周年記念公演」を行っており、本作もそのひとつ。
戦後の日本演劇界を代表する劇作家・木下順二の「平家物語」を題材とした不朽の名作で平家物語の一ノ谷から壇ノ浦までを平知盛と源義経を中心に描いている。
1979年の初初演時は、総合演出者の宇野重吉のほか能の観世榮夫らさまざまなジャンルの重鎮が演出に名を連ね、ジャンルを越えて壮大な一本の作品を作り上げた。本作においてはこの時期を「第一期」、観世榮夫らが演出を務めた1999年の新国立劇場公演と2004年の世田谷パブリックシアター公演を「第二期」としているのだが、今回の上演は「第三期」の幕開けとなるものとも位置付けられるといえるだろう。
野村萬斎は第二期から平知盛役を演じ、今回、満を持して演出も手掛ける。これまで古典芸能を現代劇に融合させ、新たで大胆な手法を用いてきた萬斎が伝説と化しているこの作品にどう挑むのか…。また、これまで狂言師・歌舞伎俳優といった古典芸能の俳優が演じてきた義経役を小劇場出身の成河が演じるなど大胆なキャスティングも大きな見どころとなっている。
親しい人を思う感情にこそ、犯罪の“盲点”はある。『血縁』【著者】長岡弘樹
タイトルにある通り“血縁”をキーワードにした7つの短編によるミステリー。連作ではなく、それぞれがまったく独立した短編で構成されている。「誰かに思われることで起きてしまう犯罪。誰かを思うことで救える罪」と帯にあるように、近しい間柄であるがゆえに、心の中に芽生えた憎悪が、お互いの人生をも狂わすような悲劇を生み出してしまう様を描く。
また、反対に相手を思う気持ちが、思いがけず救いになるという展開も。表題の『血縁』という作品は、ミステリーというより、ゾクゾクする読中感は、どちらかというとホラー。仲の悪い姉妹の幼い頃から、大人になりある事件が起きるまでの描写は、救いようがなく非常に不快な気分にさせられる。こんな姉妹が果たしているのか?!
ちょっと想像ができないが、きっといるのだろうと思わせるリアリティーがあるところも怖い。最後にほんの少しホッとさせられるが、切なすぎるストーリーは、読んでいて若干つらく感じる読者もいるのでは。『苦いカクテル』は、同じ姉妹ものでも仲のいい姉妹の話。父親の介護疲れで心も体も疲弊していた姉が長らく別々に暮らしていた妹に助けを求め、一緒に介護をしてもらうことに。2人で分担し、負担は減ったはずだが…。姉妹の絆、親娘の絆が、それぞれの運命を同じ方向に導いていく。切ないが、姉妹のその後に、救いがありそうな一編だ。全体的にオチが“イヤミス”風な作品ではあるが、最後の『黄色い風船』は、どこかほっこりとさせられるラストになっている。まったく違う作風の7つの物語だが“血縁”という自分ではどうする事もできないものに翻弄されるという軸があることで、違和感なく1冊の本として読み通す事ができる。
【定価】本体1500円(税別)【発行】集英社
ガツンと来る曲が聞きたい!『Melodrama』Lorde
デビュー作『PURE HEROINE(ピュア・ヒロイン)』で全世界を震撼させたニュージーランド出身の歌姫、ロードが放つニューアルバム。前作でグラミー賞を受賞した時は弱冠17歳だった彼女も20歳。本作では新しいドラマを唯一無二の歌声と楽曲で体感させてくれる。本作のレコーディングは、ジミ・ヘンドリクスが設立し、ジョン・レノンやローリング・ストーンズらレジェンドミュージシャン、レディー・ガガも使用したエレクトリック・レディ・スタジオで行われている。ファーストシングルで、ダンサブルなビートとピアノが印象的な曲『グリーン・ライト(Green Light)』を含む全12曲を収録した。ロード自身が「これまでとは違う、ある種予想外の曲」だというこの曲は親友のテイラー・スウィフトや、ケイティ・ペリーらも絶賛している。本作でもまた彼女はその美声で世界中を魅了してしまうだろう。本作を携え、ロードはこの夏、フジロックフェスティバルで再来日する。彼女のパフォーマンスは必見。
[ROCK ALBUM]ユニバーサル 6月16日(金)発売 2500円(税別)
ガツンと来る曲が聞きたい!『Harry Styles』Harry Styles
ワン・ダイレクションのメンバーとして世界を魅了してきた、ハリー・スタイルズが満を持して放つソロ作第1弾。これまで親しんできたハリーの魅力に加えて、1Dでは見たり聞いたりすることができなかった彼の一面を感じられる。デビューシングル『Sign of the Times』はエモーショナルなボーカルが映えるドラマティックなロックアンセム。ハリー自身が手掛けた曲で彼自身も誇りに感じているそうで、本人もアルバム収録曲のなかで最も気に入っている曲だという。エド・シーランやブルーノ・マーズのジェフ・バスカーがプロデューサーとして参加。
[ROCK ALBUM]ソニーミュージックジャパンインターナショナル 発売中 2400円(税込)
ガツンと来る曲が聞きたい!『Green Twins』Nick Hakim
米ブルックリンを拠点に活動するシンガーソングライターのニック・ハキムのデビュー作。マックス・ウェル、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルなどのサポートを務めたり、すでにEPを自主リリースしており、日本でも早耳のリスナーの間では話題になっているアーティストだ。さまざまなジャンルをブレンドしたサウンドが特徴で、本作からもマーヴィン・ゲイやシュギー・オーティス、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどからの影響が感じられる。ブルージーなギターと甘く美しい歌声に酔う『Bet She Looks Like You』など全12曲を収録している。
[ROCK ALBUM]ATO / Hostess 発売中 2100円(税込)
ガツンと来る曲が聞きたい!『All Time Best ハタモトヒロ』秦基博
シンガーソングライターの秦基博のキャリア初となるオールタイムベストアルバム。ポップなナンバーからエモーショナルなバラード曲まで10年間にわたって多彩な曲を世に送り出し、多くの曲が多くの人に愛されてヒットしてきた。それだけにオールタイムベストは“ベストヒッツ”でもある。初回限定はじめまして盤、通常盤、そして初回盤のタイプがあり、はじめまして盤は収録曲全15曲がタイアップ楽曲のみで『ひまわりの約束』『グッパイ・アイザック』などを収録。他は前述の楽曲を含み、代表曲は全網羅。いい曲ぎっしり。
[J-POP ALBUM]オーガスタ 6月14日(水)発売 初回限定はじめまして盤2500円、DVD付初回限定盤5500円、Blu-ray付初回限定盤6500円(すべて税別)
ガツンと来る曲が聞きたい!『今日までそして明日からも、吉田拓郎 tribute to TAKURO YOSHIDA』
日本のポップス界のパイオニアである吉田拓郎を、彼の背を見ながら現在J-POPシーンの最先端で奮闘しているアーティストたちがトリビュート。同じ広島出身で高校の後輩でもある奥田民生『今日までそして明日から』、chay『結婚しようよ』、ポルノグラフィティ『永遠の嘘をついてくれ』など全12曲を収録。寺岡呼人 feat.竹原ピストルの『落陽』、THE ALFEE『人生を語らず』などクレジットされた名前も見るだけでも迫力が伝わってくるラインアップ。また、井上陽水『リンゴ』、高橋真梨子『旅の宿』徳永英明『やさしい悪魔』などすでに発表住の音源も収録。
[J-POP ALBUM]Virgin Music 発売中 2800円(税別)