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みっともなくてもいいじゃないか。『私はいったい、何と闘っているのか』

2017.02.13 Vol.684

 つぶやきシローによる、妄想ワールドさく裂の、切なくおかしい家族小説。伊澤春男、45歳。地域密着型スーパーマーケット、スーパーうめや大原店のフロア主任。店長の右腕として、店を自分がまわしているという自負はある。

 そんなある日、店長が急死。密かに次の店長は自分だと思っていた。しかし、他の人に「店長になったんだって?」と言われると「僕なんて店長の器じゃないですから。それに店長になるのが目的で働いてないし」と返してしまう。その裏で、静かにさりげなく店の改革に臨み、その改革が功を奏し、革新的なアイデアを持つ店長としてテレビの取材に。次の日から帽子をかぶらないと町を歩けなくなり、通称“店長ギャル”が店に押し寄せ、店頭には店長関連グッズが…。と、現実と妄想の境が分からなくなる世界へと突入していく。家に遊びに来た長女の彼氏にいいところを見せるための“ヘネシー作戦”、そして息子を野球とサッカーの二刀流に育てるための秘策などしょうもない事、荒唐無稽な事を大真面目に実行する春男。

 だが、妄想ワールドでは完璧な作戦のはずが、ちっとも思うようにいかない。家庭の問題だけでもあたふたしているのに、新しい店長は店になじまないし、万引犯による被害も見過ごせないものになってきた。陰の店長(のつもり)としては、店の一大事をなんとかしなくてはならない。そんな時、万引犯の犯行現場を目撃してしまい…。つぶやき芸の極みのような妄想小説だが、滑稽さの裏にある温かさが、読後感をさわやかな気分にしてくれる。おもしろくて、哀しく切ない、そしてほっこりとする不思議な作品だ。

【定価】本体1500円(税別)【発行】小学館

ヒーローとヒロイン『Back From The Edge』James Arthur

2017.02.13 Vol.684

 英シンガーソングライター、ジェイムス・アーサーの最新アルバム。人気オーデイション番組での優勝経験もある実力派で、年齢とさまざまな経験を重ねながらその技と魅力に磨きをかけている。楽ではなかった生い立ちはもちろん、アーティストとして認知されるなかでネットの騒動でレーベルの契約は打ち切り、活動休止に追い込まれたりと山あり谷ありだ。そんな経験を経てリリースされる本作は音楽に対しての熱を感じずにはいられない。タイトルを直訳すれば「ギリギリのところから戻ってきた」。どん底を経験したからこそ伝えられることがある。良い意味でスゴ味のある作品。帰ってきたジェイムズの音楽に再び多くの人が魅了される。

食べるほどに元気になる『おくすり飯114』

2017.02.13 Vol.684

「なんだかだるい」「元気がない」「胃がもたれる」「疲れがとれない」「肌の調子が悪い」「むくみがち」…など、はっきりした病気ではないが、なんとなく体が不調な時に簡単に作れるレシピが114品も掲載された『おくすり飯114』が発売になった。家にある食材で、1人分から簡単に作れるレシピばかりなので、料理が苦手な人にもおすすめ。同書で紹介しているスープ、浅漬け、お茶を合わせれば、あっという間に体にやさしい献立が出来上がり。そのほか、持ち運べて朝食やお弁当にぴったりの“おくすりおにぎり”も掲載。

ヒーローとヒロイン『SUPERMAN』水曜日のカンパネラ

2017.02.11 Vol.684

 独特なサウンドやライブパフォーマンスで注目を集めるポップハウス・ユニット、水曜日のカンパネラがメジャーファーストフルアルバムをリリース。タイトルが示すが通り、「アラジン」「坂本龍馬」「一休さん」「カメハメハ大王」に「世阿弥」と、いろいろなスーパーマンの名前を冠した曲をずらりと10曲収録。どの曲もタイトルの人物をモチーフになっているそうだが、聞かないことには、どんな楽曲なのか、どんなアルバムなのか皆目見当がつかない。それなのに、分からないワクワク感でついつい手に取ってしまう。それが水曜日のカンパネラなのだ。心地よいビートとサウンド、エッジがあってユニークなリリックの組み合あわせは絶妙。それにコムアイの歌声がさらに彩りや深み、軽やかさを加える。リピートは必至だ。コムアイの音楽フィールド以外での活躍もあり、認知度も注目度もぐんぐんと上昇中。3月には初の日本武道館公演も決定しており、さらなるブレイクも目前。まずはこのアルバムをチェック!

いろんな意味で見たことのないものを見せてくれそう M&Oplaysプロデュース『皆、シンデレラがやりたい。』

2017.02.11 Vol.684

 M&Oplaysプロデュースではこれまで岩松了、倉持裕、ノゾエ征爾といったさまざまな劇作家・演出家を迎えプロデュース公演を行ってきた。

 今回は現在の演劇界で最も注目を集める存在といっても過言ではない劇作家・演出家の根本宗子を作・演出に招いての公演。

 物語は、「一ノ瀬陸」というアイドルの「追っかけ」である3人の40代の女たちと、一ノ瀬陸の彼女を中心に展開。この3人の「負け組」と地下アイドルもやっているという彼女、そしてそのマネジャーの男も加わり、一ノ瀬陸というアイドルを中心に奇妙なバトルが展開される。

 互いの利害が絡まり敵と味方の立場がころころと変わるうちに、それなりの友情や利害で結びついていた3人の仲にも微妙な空気が流れ始める。そして彼女のエキセントリックさが徐々に露呈されていくうちに物語は思わぬ方向へと流れていく。

 根本はこれまで同世代の俳優たちとの仕事が多く、また「アイドル」に対する造詣の深さから舞台経験のない女優やアイドルの魅力を引き出すことに長けてきた。

 今回は高田聖子、猫背椿といった経験豊富な女優たちと対峙し、どのような作品に仕上げることができるのか。高田らのこれまで見たことのないような魅力も引き出してくれそう。そんな見方も面白い。

チェックしておきたい1枚!『GRAMMY ノミニーズ 』V.A.

2017.01.26 Vol.683

 来月13日(現地時間12日)に発表される世界最大級の音楽の祭典グラミー賞授賞式。授賞式を控え、ノミネートされた作品をまとめた恒例のコンピレーションアルバムがリリースされた。収録曲は、年間最優秀レコードなど主要賞に複数ノミネートされている英アーティスト、アデルの「ハロー」、昨年のシグネチャーアーティストといっても過言ではない米アーティストのドレイクの「ホットライン・ブリング」(年間最優秀アルバムにノミネート)、最優秀新人賞などにノミネートされているザ・チェインスモーカーズの「クローサー Feat.ホールジー」など全21曲。

[COMPILATION ALBUM]ワーナー 発売中 2500円(税別)

チェックしておきたい1枚『THE KIDS』Suchmos

2017.01.24 Vol.683

 神奈川出身の人気グループ、Suchmos(サチモス)が最新アルバムをリリース。ロック、ジャズ、ヒップホップといったブラックミュージックにインスパイアされたグルーヴィかつ心地よいサウンドで支持されているグループだ。ラジオ界隈ではすでに大人気だった彼らは昨年急成長。そのなかで制作されたのがこのアルバムと言えそうだ。収録曲『A.G.I.T.』を筆頭に、今作もスムースで心地よいゴージャスな雰囲気をアシットジャズ的なサウンドに載せて感じさせてくれそう。3月から本作を携えての全国ツアーもスタート。今年もSuchmos人気はさらに高まりそう。

 

チェックしておきたい1枚!『Renne』SOHN

2017.01.23 Vol.683

 米ロサンゼルスを拠点に活動するシンガーソングライターであり、人気アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも手腕を振るったSOHN(ソン)のセカンドアルバム。ドイツ語で“走る”をタイトルにした本作は自分自身の内部を掘り下げた内容。万人受けする分かりやすいドラマティックさがある作品とは言いにくいが、美しいメロディーと温かみのある声がじわりじわりとしみる。プライベートでの変化も反映された楽曲の数々はリスナーの心にすっと入ってくる。ソングライターとしての魅力を発揮した作品。本作で彼の名前はより広くへと浸透しそう。

[ROCK ALBUM]Beat Records / 4AD 発売中 2400円(税別)

春夏秋冬おいしければ幸せ。レシピ本『今日も食べたいごはん』

2017.01.23 Vol.683

「かもめ食堂」「深夜食堂」「ごちそうさん」などで人気のフードスタイリスト・飯島奈美氏の約3年ぶりのオリジナル新作レシピ『今日も食べたいごはん』が好評発売中。飯島氏ならではの、飾らないけどしみじみおいしい家庭料理を季節ごとに紹介。さらに10皿のデザートレシピもついている。例えば、「冬においしい大根 丸ごと使い切り」をテーマに「ブリおろしかけ」、「大根の炒め物」などのほか、春の「お祝いの料理」、夏の「子どもが喜ぶスタミナレシピ」、秋の「ほっとする京風おばんざいを味わう」レシピといった季節ごとのメニューを掲載。食材も工程もシンプルを基本とし、毎日の食事がちょっと楽しく、おいしくなる料理集だ。

チェックしておきたい1枚!『トリトメナシ』チャラン・ポ・ランタン

2017.01.22 Vol.683

 姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタンによる最新音源。“ほぼ”フルアルバム。昨年はドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のオープニングテーマ「進め、たまに逃げても」を担当するなど中毒性が高いチャランポ・ランタンの魅力をより広くへと浸透させ始めたが、本作でそれがさく裂しそう。タイトルの『トリトメナシ』が物語るかのような音やメロディー、言葉が踊りだす感じのなかに、Mr.Childrenのツアーメンバーであるバンド“ヒカリノアトリエ”がアレンジ・演奏する「かなしみ」が収録されている。

[J-POP ALBUM]エイベックス 発売中 CD+DVD2800円 CDのみ2300円(ともに税別)

清水 宏「下北沢演芸祭2017」で本紙イチオシの男

2017.01.22 Vol.683

2月1日から下北沢で「第27回下北沢演劇祭’17」と春風亭昇太プロデュースによる「下北沢演芸祭2017」が開催される。さまざまな作品、演目が並ぶなか、本紙がイチオシするのが演芸祭の「爆笑!スタンダップコメディ寄席!」に出演する清水宏だ。

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