SearchSearch

クドカンの書く台詞をとことん堪能する『クドカンの流儀』

2017.01.22 Vol.683

 札幌で生まれ育ち、これまでに『北海道歴史ワンダーランド』などディープな北海道シリーズを連発してきた著者が初めて地元以外をテーマに書き下ろした珠玉の一冊。今回のテーマは脚本家にして俳優であり、はたまたロッカーでもあるクドカンこと宮藤宮九郎の作品から名(迷?)セリフをチョイスし、それをとことん堪能するというものだ。

 著者は『あまちゃん』第1回終了直前にナレーターの宮本信子が「はい、やっと出ました! これが私、天野夏でございます」と言うセリフとともに本人が海女の姿で海の中から登場するアンビリーバブルな構成に、後のあまちゃんブームを確信したと語る。

 納得。文章はポップで読みやすいが、セリフに対する考察は鋭い。あまちゃんのアキ(能年玲奈=現在の芸名はのん)に対して母・春子(小泉今日子)が発した「地味で暗くて向上心も協調性も存在感も個性も華も無いパッとしない子」と言うセリフに対して、筆者は「一体どんな親子なんだと思います」としながら、母の故郷(袖が浜)で暮らすうちに起こったアキの心の変化を丹念にひもといていく。

 過去の自分を壊したくなるが変わる方法も分からないし、勇気もない。そんな弱虫の背中を押したのは夏の「飛び込む前にあれこれ考えだってや、どうせその通りになんね。だったらなんも考えずに飛び込め。何とかなるもんだびゃ。死にたくねんだからな。あっははは・・(笑)」の一言だったと結ぶ。

 確かにアキが祖母からそう言われ、防波堤の上から発作的に海に飛び込み、もがきながらも水面に顔を出し、荒い息とともに笑いを込み上げるシーンは感動的だった。

 セリフの分析が人生&恋愛論になるところもあり、最後まで飽きさせない。『タイガー&ドラゴン』で使われた「ダメでも笑うんだよ。どんなに追い込まれても平気で笑ってられんのが本物なんだ」というセリフから笑いの本質を探っていたことも興味深い。「じぇじぇじぇ!」の向こう側を探求したい方にはお薦めの独自の視点が眩しい評論集だ。

子供鉅人「下北沢演劇祭」ならではの暴挙!? 本多劇場に115人の出演者を上げる

2017.01.22 Vol.683

「下北沢演劇祭」に参加する子供鉅人は今回『マクベス』で本多劇場に初進出するのだが、「“本多劇場初”なことをやってみようということで、本多劇場の舞台に100人の出演者を上げることにしました」と言うのは主宰の益山貴司。

 これまでの最多が2003年の流山児★事務所『書を捨てよ、街へ出よう』の54人とのことなので軽くオーバー。

「HPなどでは114人になっていますが、最近、高知からどうしても出たいという人が来まして、115人になりました。そのうち劇団員は10人。年齢は18~69歳。60代以上が4人いて、さいたまゴールドシアターに出ていた方もいらっしゃいます。お金がある商業演劇とか、公共ホールが税金を使って市民劇に100人出演させるというのは、まああるじゃないですか。そうじゃない全く金がない小劇場のチームがそれをするということにちょっと誇りを感じています」

 100人をどう使う?

「メインの役は劇団員なんですが、台詞を割って、できるだけアンサンブルの方にも台詞を言ってもらうようにはしています。群集劇ですから、ガヤとメインというよりも、その100人もちゃんと意識を持った存在として舞台に上がるようにしようと思っています」

 とはいえ、そんな話題性ばかりに走った作品というわけでもない。『マクベス』は劇中では何度も「男らしさ」や「女らしさ」といったことが言及されるのだが、今回はマクベスを女優の億なつき、マクベス夫人を男優の益山寛司と男女を入れ替え配役。それによって「らしさ」というものの本質に迫っていく。

「弟の益山寛司はずっと女形をやっているんですが、彼にマクベス夫人をやらせたいという思いがずっとありました」

 益山寛司という女形がいてこその、まさに子供鉅人“らしい”作品。

「100人を舞台に上げるというのは最初はけれんだけだったんですが、とはいえあれだけの作品ですし、やる以上は上演する意味なんかも問われてくる。楽しいだけのわちゃわちゃしたエンターテインメントだけにはしたくない。そうじゃない子供鉅人の側面を見せたいと思っていて、現代社会の世相といったものをうまく取り込むことができないかとずっと考えていたんですが、ある時、新宿の街である風景に出くわした時に僕のそういう思い、マクベス、そして100人の出演者といったいろいろなピースがひとつになった。今は必然性のある100人の出演者だと思っています」

 すでに土曜のマチネに追加公演も決定。作品の面白さはもちろんなのだが、とにかく115人をどう切り回すのかといった別の楽しみもある。必見の作品。

劇団子供鉅人『マクベス』
【日時】2月10日(金)~12日(日)(開演は金19時、土14時/19時、日14時。開場は開演30分前。受付開始は開演1時間前)
【会場】本多劇場(下北沢)
【料金】全席指定 前売4000円、当日4500円/学生2500円/高校生以下1000円
【問い合わせ】劇団子供鉅人( contact@kodomokyojin.com 〔HP〕 http://www.kodomokyojin.com/ )
【作】ウイリアム・シェイクスピア
【演出】益山貴司
【出演】益山寛司、キキ花香、影山徹、億なつき、ミネユキ、山西竜矢、益山U☆G、古野陽大、うらじぬの、益山貴司 他100名

大阪で大阪の俳優たちと制作 庭劇団ペニノ『ダークマスター』

2017.01.22 Vol.683

 この『ダークマスター』は1995年にヤングチャンピオンという青年漫画誌に掲載された漫画を原作とする作品。

 舞台は超一流の腕を持つが偏屈な人間性と極度のアルコール中毒のため、全く客が来ないマスターが一人でやっている小さな洋食屋。そこにある日、一人の若者が東京から客としてやってくる。マスターは「自分の代わりにここのシェフになれ」と提案するが、若者に料理人の経験はない。マスターは若者にイヤホン型の小型無線機を渡し、自分は二階に隠れ、無線を使って若者に料理の手順を伝えるというのだが…。

 かつて2003年に駅前劇場、2006年にこまばアゴラ劇場で上演されたこの作品。今回は3年間に渡り、タニノが大阪に足を運び、大阪の俳優とワークショップを重ねて制作。物語の舞台も大阪に変え、大幅に脚本も書き換えて昨年5月に大阪で上演した。

 もともとこの作品に「資本主義社会の支配/被支配体系をユニークに表現した作品」という印象を持っていたタニノ。この3年間の大阪は橋下徹大阪市長が活躍するなど激動の時期。そんな世相が作品にどのような影響を与えたのかといった点も注目して見てみたい作品。

2020年を控えた今の東京に微妙にシンクロ シアターコクーン・オンレパートリー2017+キューブ20th,2017『陥没』

2017.01.22 Vol.683

 Bunkamuraシアターコクーンで2009年に『東京月光魔曲』、2010年に『黴菌』と昭和の東京をモチーフとした作品を発表し、「昭和三部作」を目指したケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。なにしろ多忙の身とあって7年の月日が経ってしまったが、このたび待望の完結編となる3作目が上演されることとなった。

 第一弾では昭和初期、第二弾は昭和中期ときて、今回は昭和の東京オリンピックを目前に控えた時代が舞台。

 敗戦からわずかな年月で復活を遂げた日本にとって、東京オリンピックはその輝かしい成果を世界に示す晴れの舞台だった。スポーツ競技とは別のところで道路、さまざまな施設やビルの建設、新幹線など発展していく街の様子を誇らしく眺め、これを機に一攫千金をもくろみ、成功した者もいた。しかしその一方で、その時代、その場所に居合わせながら時流に乗り遅れた者たちもいた。この作品はそんなオリンピックとの因縁に翻弄される人々を描いた群像劇。

 2020年のオリンピックまであと3年となり、何かと騒がしい現在の東京。物語と現在が微妙にシンクロしなにやら妙な気分になりそう。

最新のE-girls NEW アルバム『E.G. CRAZY』

2017.01.18 Vol.682

 

 女性ダンス&ボーカルグループE-girlsが18日、通算5枚目となるアルバム「E.G. CRAZY」を発売した。

 新曲4曲を含む全24 曲が収録された今作は、〈E.G. POP〉と〈E.G. COOL〉というE-girlsの二面性を2 枚のディスクに分けて凝縮した盛りだくさんの内容となっている。そして、「E-girls LIVE TOUR 2016 ~E.G. SMILE~」のライブ映像を収録したLIVE DVD / Blu-ray と、ツアーの裏側に迫ったドキュメントムービーも収録。前回のツアーで全国各地を大勢のファンの笑顔とともに駆け抜け、その中で見えた次なるステージ。E-girls の新たなエンタテインメントが起こす「夢中」と「熱狂」さらに広がる「笑顔」の連鎖、それが「E.G. CRAZY」というタイトルのゆえんでもある。

 リーダーでパフォーマーのAyaは、「ジャケットの赤い輪のデザインは、E-girlsが熱狂の渦を巻き起こし、その熱狂がさらに広がり、みんなを夢中にさせるというイメージで、アルバム・タイトル「E.G. CRAZY」のコンセプトを表現しています。このアルバムには、熱狂や夢中を生み出す日本のカルチャーをテーマにした楽曲も収録されていて、そこにはそのカルチャーを楽しむ日本の女の子としてE-girlsの等身大のメッセージも込めています。そういった意味では、日本のみなさんにはもちろんのこと、日本に関心のある世界中の人たちにも聴いて楽しんでいただきたいと思えるようなアルバムになりました」と想いを明かした。

 また、Ayaは注目ポイントとして「映像の充実度」を挙げている。「やはり、E-girls=〈歌〉と〈ダンス〉なので、音だけではなく目でも思いっきり楽しんでいただける内容になっています。昨年行われたE-girlsのツアーファイナルの映像もほぼノーカットで収録されているので、あのライブの臨場感を楽しんでいただけますし、ミュージックビデオも新曲を含めた全9曲が収録されているので、E-girlsの映像の世界も楽しんでいただけると思います」と視覚での楽しみ方に言及。音も映像も大充実の今作のリリースを迎えて、「最新のE-girlsがすべて詰まっている「E.G. CRAZY」を、一人でも多くの皆さんに、ぜひ観て聴いて楽しんでいただきたいです」と意気込んだ。

 さらに、ボーカルの鷲尾怜菜も「E-girlsとして5枚目のアルバムをこんなにもフルボリュームでリリースすることができて本当に嬉しいです。今回はCDが2枚組、DVDが3枚組となっていて、CDはPOPな楽曲、COOLな楽曲とコンセプトがはっきり分かれているので、E-girlsの世界観とともに、みなさんの好きな聴き方で楽しんでいただきたいです」と語った。

 E-girls として過去最大のボリュームとなった待望のオリジナルアルバムは、彼女たちの現在を存分に感じることのできる必聴の作品となっている。

つき動かすロックチューン『Mrs. GREEN APPLE』Mrs. GREEN APPLE

2017.01.10 Vol.682

 注目度上昇中の5人組ロックバンドが放つ最新アルバム。セルフタイトルの作品だけにこれまでのすべてを注ぎ込んだ彼らの今を堪能できそうな作品だ。収録曲は全9曲で、シングル『サママ・フェスティバル!』と『In the Morning』を軸に、それぞれのカップリング曲をアルバムバージョンとして収録。それに加え、この春公開される映画『ポエトリーエンジェル』の主題歌『soFt-dRink』、ライブでおなじみのナンバー『らぶ』も収録されている。シングルで見せるキャッチーな魅力に加えて、彼らの違った側面も聞ける内容になっている。本作とともにさらに注目を集めそうな彼らに注目だ。

[J-POP ALBUM]ユニバーサルミュージック 1月11日(水)発売 初回限定盤3500円、通常盤2800円(ともに税別)

つき動かすロックチューン『Ambitions』ONE OK ROCK

2017.01.09 Vol.682

 国内外で活躍するロックバンド、ワンオクことONE OK ROCK(ワンオクロック)が最新アルバムをリリース。前作から約2年のインターバルで発表される本作はスケールの大きいロックサウンドを堪能できる作品。サウンドもリリックもどっしりと構えていて、スタジアムを揺さぶるロックバンドのような貫禄。前作同様、本作もまた海外でレコーディングされているのだという。力強いリズム、シアトリカルな要素、ストリングスの音色は彼らの世界観をさらに荘厳なものにしている。収録曲は『Always Coming back』『Taking Off』など全14曲。

[J-POP ALBUM]A-Sketch 1月11日(水)発売 初回限定盤(CD+DVD)3500円 通常盤3000円(すべて税別)

つき動かすロックチューン『THE END』BLUE ENCOUNT

2017.01.09 Vol.682

 エモーショナルなロックチューンで人気を集めるバンド、BLUE ENCOUNT(ブルーエンカウント)が彼らの今を詰め込んだ最新アルバムをリリースし、新しい年をスタートする。すでに大型フェスには常連となり、昨年は日本武道館公演も成功させるなど上り調子そのもの。本作はそんな彼らが放つセカンドフルアルバム。タイトルは終わりを意味するものの、アルバム冒頭に収録されたタイトルトラックを聞けばすぐ、終わりは始まりなのだというポジティブなメッセージが伝わってくる。ドラマティックで壮大なこのナンバーで、新しい扉を開く、新章に突入するような気分のたかぶりを感じさせてくれる。新しい年のスタートにさりげなく寄り添うロックチューンといえそうだ。シングルの『はじまり』『Survivor』『だいじょうぶ』、そして『LAST HERO』を含む、全13曲を収録。もれなくエモいロックアルバム。初回生産限定盤のDVDには、日本武道館でのライブから『HALO』など厳選された楽曲を収録している。

[J-POP ALBUM]キューンミュージック
1月11日(水)発売 初回生産限定盤(CD+DVD)3333円 通常盤2600円(すべて税別)

つき動かすロックチューン『Night People』You Me At Six

2017.01.09 Vol.682

 英ロックバンドのユー・アット・ミー・シックスによる最新作。アークティック・モンキーズやジェイムス・ベイなどのプロデューサーを務めたジャクワイア・キングや、ミキシングエンジニアでブラック・サバスやレッド・ホット・チリ・ペッパーズを手掛けたアンドリュー・シェプスがクレジットに名を連ねる力の入ったアルムだ。これまでポップな雰囲気で支持を得てきた印象もある彼らだが、タイトルトラックで重みのあるロックチューンを聞かせてくれるように新しい魅力を感じられる作品といえそうだ。作品をリリースするごとに着実に存在感を増しているバンド。今後もウォッチし続けたい。

[ROCK ALBUM]Infectious/Hostess 発売中 2400円(税別)

JUON 待望のワンマンライヴツアー

2017.01.09 Vol.682

 2016年5月、全10曲(10音=JUON)で構成されたソロデビューアルバム「CHANGE THE GAME」をリリースしたJUONが2017年3月、渋谷O-WESTを皮切りに大阪・名古屋・福岡にて「JUON ?CHANGE THE GAME 10音」ライヴで、音楽の固定概念にとらわれないボーダーレスな音楽を伝えていくという。JUONの挑戦は彼の楽曲通り、新世界へと突入する。チケットは、ローソン・ミニストップ店頭Loppiで!

【公演日】3月8日(水)【会場】SHIBUYA O-WEST【開場・開演】18時30分・19時【料金】スタンディング 3900円(税込)※入場の際、ドリンク代(\500)別途必要【発売日】1月15日(日)【Lコード】75108

つき動かすロックチューン『11 Short Stories Of Pain and Glory』Dropkick Murphys

2017.01.08 Vol.682

 アイリッシュパンクバンドのドロップキックマーフィーズの最新作、かつデビュー20周年というアニバーサリーイヤーをキックオフする作品。前作のプロデュースもしているテッド・ハットが手掛けている。本作はバンドのフロントマンであるケンが設立したチャリティー団体の影響を受けているそう。というのも、バンドは団体で資金集めをしたりメンターとなって支援をしているといい、そこでの経験が収録曲の多くに反映されているという。彼らの特長といえば、彼らのルーツであるアイリッシュ/ケルティック音楽を楽曲から感じられること。発売前に発表された『Blood』でもバグパイプのが鳴り響いている。

[ROCK ALBUM]Born & Bred/Hostess 発売中 2400円(税別)

Copyrighted Image