パリ郊外の貧しい団地に暮らすマチューの唯一の楽しみ、それは駅に置かれたピアノを弾くこと。ある日、偶然その場に居合わせた名門音楽学校のディレクター・ピエールはマチューの才能を確信する…。
生い立ちに恵まれずあきらめかけていたピアノへの情熱を、運命の出会いをきっかけに再び花開かせていく青年の姿を名曲の数々とともに綴る感動作『パリに見出されたピアニスト』。ピアニストとして天賦の才を持つ主人公マチューを演じるのはいまフランス映画界で大注目の新鋭ジュール・ベンシェトリ。
「僕自身はまったくピアノを弾けなかったので、弾く演技をするために実際にピアノの猛特訓をして、少しは弾けるようになったよ。今はもう弾いてないけどね(笑)。今回の経験でますますピアノという楽器のハードルの高さを思い知ったから(笑)」
ほぼ新人のジュールを主演に抜擢したルドヴィク・バーナード監督は「すぐにこの役は彼じゃなきゃ、と確信したよ。ピエールがマチューの才能を信じ続けたのと同じだね」と語る。ジュールも「僕の才能を見出し大きく伸ばしてくれたのはバーナード監督」と信頼のまなざし。マチューはピエールに反発もするが…。
「僕は俳優だからリアルに監督に盾突くなんてできないしね(笑)。でも本当に彼と一緒に仕事ができて良かったと思ってる」
劇中では、ラフマニノフ、ショパン、バッハなどの名曲も見どころ。
「練習しているうちに、その音楽が自分のものになる瞬間があるんだ。クラシック音楽を好きになってからは練習がすごく楽しくなったね。今、一番好きなのは…ヴィヴァルディの〈四季〉の〈冬〉かな。この映画でも、かつてないほど名曲の数々が感動的に描かれているので、マチューのように全身で音楽を楽しんで」