「レコード針を落とした時の“これ、いい”を届けたい」
音楽好きで知られ、音楽の紹介者としても一家言あるクリス松村。分かりやすさもあって、アイドルやアイドル歌謡好きとしての一面を取り上げられることが多いけれど、洋邦問わず、年代も問わず、ただ自分の心を震わせる音楽を追い続けている。
「レコードを買い始めてから40年」。レコード店に足を運び、ラジオから流れる曲に耳を傾け、ライブ会場にはせ参じながら自身のなかに蓄積してきた知識は今、活字になったり、ラジオやテレビの電波に乗せられたり、コンピレーションCDになったりしてアウトプットされ、好評だ。
先日スタートした『ミュージック・モア 今夜、僕たちはきっと音楽を聴く。』(TOKYO MX、毎週土曜19時)もまた、注目を集めている。
ラジオ番組を放送するようなスタジオで、ゲストとレコードプレイヤーを挟んで音楽トーク。これまでの5回の放送で出演したのは、デビュー40周年のサーカス、ソロデビュー20周年を迎えたChage。ミスDJの千倉真理とはディスコ音楽を振り返った。話題は楽曲そのものや楽曲にまつわるエピソード、当時考えていたことなどクリス松村が疑問に感じていたことをまっすぐぶつける。
番組では、知っている曲、耳なじみがなかった曲、「これいいね!」という良曲がたくさん聞ける。それに本人が語る楽曲にまつわるエピソードが加わると、良曲がさらに豊かになる。
「番組中にかける曲を決めるのは、私。スタッフもみんな音楽が好きで、みんなで一生懸命やっているんだけど、みんな私よりずっと若い。一番知っているのはやっぱり私なんです。レコードを買い始めるようになってから……もう40年ですから」
自身のミュージックライブラリーから持参したレコード盤を聴きながら話を進めたりもする。「ここ(MX)には何もない! だから持ってくるしかない(笑)」と笑い飛ばすが、だからこそレアな楽曲にも遭遇する。五輪にも出演したアスリート、カール・ルイスのLPも登場したし、しっかり聞かせた。
「ここはMX。予算があるキー局とは違いますから、“他ではやらないことをやらないと”って、いつも話しています。打ち合わせでも、こういうことならできるとか、同じ40周年のアーティストを紹介するにしても他の人たちがやっていない良質な音楽を作っている40周年アーティストを選ぶ。例えば、石原裕次郎さんや美空ひばりさんは他がやっているから、自分は鶴田浩二さんだっていうふうに。見せ方もそうですね。長くやっている人を紹介するとき、番組のテンポを良くしたいがために、ヒット曲をピックアップしてまとめてしまっているのを見るけど、それはよくないと思っています。あの曲を紹介するためには、この曲が必要で、そっちを経てからここに着地しているって、そういうところを見せるようにしないと。だから、こういう届け方はどうかしら、ライブをしていただけるなら他の番組ではやらないこの曲をオファーしてみたらどうかしらって、意見はどんどん言わせていただいて、スタッフがメモを取っています。……私、ひどく横暴に聞こえますね(笑)」。
番組はまだ始まったばかり。クリス松村もスタッフも「良い音楽」を届けるために奔走している。
「いいものをやっていきたい、自分が“いい”って思ったものを届けていきたいと思っています。時には迷走することもあるかもしれないけど、まだ始まったばかりだから。出演してくださるアーティストのファンの方にも見ていただけたらうれしいし、詳しくなくても見てくれる人がいたら、すごくいい。人って、知らないものを知りたいんです。トレンドから食べ物から、みんなそう。知らないものを知りたいって燃えている。音楽もそうなったらいいな、この番組を通して、それができたらいいなって思います」
さて、8月18日の放送回。ゲストは杉山清貴で、懐かしい音楽の話もいっぱい聞けるとか。今週も、見たら、ミュージック・モア!(音楽を、もっと!)な気分になることは間違いない。
『ミュージック・モア 今夜、僕たちはきっと音楽を聴く。』は、TOKYO MXにて毎週土曜19時~19時29分で放送中!