『マリリン 7日間の恋』 伝説的女優マリリン・モンローの秘められた恋とは
マリリン・モンロー没後50年を迎える今年、ミシェル・ウィリアムズが在りし日のモンローを生き生きと演じ、賞レースでも注目を集めている話題作!
撮影・蔦野裕
今なお世界中の人に愛され続ける女優マリリン・モンロー。彼女がローレンス・オリヴィエの『王子と踊り子』の撮影のため英国に滞在した日々に生まれた、秘密の淡い恋を描いた話題作。『ブロークバック・マウンテン』や『ブルーバレンタイン』の演技派ミシェル・ウィリアムズが、マリリンの夢見るまなざしを21世紀によみがえらせた。本作で大きな評価を得たミシェル。世紀のスター・マリリンの役作りについて彼女はこう語る。
「とにかくたくさん資料を読んで、彼女の演技を自分なりに分析するところから始めたの。10代の後半に出演していたコマーシャルと、その後のパフォーマンスを見ると、だんだんと歩き方や声の使い方に変化が表れてくる。つまり、マリリン・モンローとして進化していく過程が分かったの。最初は、歩き方もいわゆる“モンロー・ウォーク”ではなかったし、声も少し低めで私たちがよく知るささやき声ではなかった。あまり皆に知られていない彼女の知性や、物事に真剣に向き合う姿といったところを発見しながら、自分なりの役作りをしていったわ」
ミシェルは、カメラを向けられていないときのマリリン、スター・マリリンを演じてみせるマリリン、劇中劇の役どころという3つの顔を演じ分けている。
「確かに3つのキャラクターを演じているようなものだけど、私の中ではすべてのもとはノーマ・ジーンという1人の女性だった。3つそれぞれに演じるのではなく、1人の人物による3つの表現というふうに考え方を変えて演じていたわ」
撮影現場でのプレッシャーに押しつぶされそうになるマリリンの姿を、同じ女優としてミシェルはどう感じただろう。
「まず、マリリンと私とでは全然違うわ、いろいろな点でね(笑)。彼女が経験したスターダムと、自分が今経験しているものとは大きく違っているし、演じる役も違うわ。私がよく演じるのは地下鉄に乗っているような、日常的で親近感を覚える女性たち。でもマリリンが演じていたのは、誰も手に入れることのできない“夢の女”だった。それが周囲の熱狂を生んだんだと思う。プライバシーの問題もね。彼女はマスコミをからかってみたりして、わりと積極的に接していたけれど、私の場合はシャイなので “交渉”しながらうまく付き合っていく感じ(笑)。彼女はマスコミに対して求めたものを得たけれど、おそらく彼女は人生の後半で、自分が怪物を作り出してしまったことに気づいたんじゃないかしら。自分のプライバシーに大きな影響を与える状況を作り出してしまったということに気づいて、ただのセックスシンボルではない、もっと違う自分を見せたいと思っていたはず」
演じる前と後で、マリリンに対する思いに、何か変化はあった?
「やはり変わりました。私は少女のころ寝室の壁にマリリンの写真を飾っていたんだけど、それはマリリンがセックスシンボルではなく、彼女が林を走っている姿が写っているもので、私にとってその写真の中の彼女は一緒に手をつないで歩くことができるような女の子だった。13歳のときに彼女の伝記を読んだけれど、実際は本作に出演するまで、彼女についての詳細や全部の作品までは知らなかった。だから今回、念頭に置いていたのは先入観を持たないこと。彼女の繊細な一面も、今回初めて知ったことだったわ。リサーチの段階で会った人から“これまで自分が出会った中で最もさみしい女性だ”という言葉を聞いたんだけど、そんなイメージはまったく予期せぬものだったの」
秘めた恋とともに、ミシェルが演じてみせたマリリンの知られざる一面が、彼女の伝説に新たな1ページを加えるはず。
(本紙・秋吉布由子)
『マリリン 7日間の恋』監督:サイモン・カーティス 出演:ミシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー他/1時間40分/角川映画配給/3月24日より角川シネマ有楽町他にて公開 http://marilyn-7days-love.jp/ |