ピュアな女子高生×ダークな殺人ミステリー
2005年ドラマ『瑠璃の島』の初主演で注目を集めて以来、実力を認められ多くの主演作も経験してきた成海璃子。本作『少女たちの羅針盤』は、そんな成海をして“マズイ!!”と思わせたというから、注目せずにはいられない。
同世代との共演は「難しいけど楽しいんです(笑)」
撮影:蔦野裕 ヘアメイク:竹下あゆみ スタイリスト:杉山まゆみ
ワンピース1万290円、腰に巻いたシャツ9345円/goocy 原宿(03-5771-2325)/リボンパンプス2万4150円/BLAZE(03-3874-6444)
「今回は、これまでとまったく状況が違ったんですよ。脚本をもらった時、どんな作品になるのか、良い悪いや面白いかどうかを一言で言えなかったんです」
女子高生劇団< 羅針盤> はいかにして伝説となったのか。かつて、そのメンバーの1人を殺したという女優・舞利亜の正体とは。舞利亜の秘密を暴こうとしているのは誰なのか。過去と現在が絡み合う物語に加え、キラキラした女子高生たちの青春ストーリーと、ダークな殺人ミステリーという異なる要素が観客を翻弄する。成海が演じるのは〈羅針盤〉を立ち上げた演劇一直線の女子高生・瑠美。
「毎回、どんな作品でも“どうしよう〜”ってなるんですけど(笑)、今回は特に分からなくて、不安でしたね。このままじゃマズイと思って、自分から監督に話をしに行ったりもしたんです。いままでは、そんなこと全然しなかったんですけど。でもだからこそ、これまでとは少し違う雰囲気の作品になるんだろうな、とは思っていました」
すでに何本も主演作を経験している彼女にとっての“不安”とは?
「自分の役作りがどうとかより、どちらかというと周りとのことが大きいんですよね。特に、自分と同世代の役者さんたちとの共演作になると、あれこれ考え込んでしまうんです。柄本明さんや松山ケンイチさんといった先輩たちと共演していたときは、ただ自分の芝居をすれば良かった。でも同世代の女優さんたちとの共演となると、このシーンをもっと良くするにはどうしたらいいんだろうとか、いろいろ考えてしまって、難しいな〜って(笑)」
成海とともに〈劇団・羅針盤〉のメンバーを演じるのは忽那汐里、森田彩華、草刈麻有。本作ではその絆が重要だった。
「私たちが本当に〈劇団・羅針盤〉になるためにどうしたらいいのかを考え続けた現場でした。長崎監督は、どうしたらいいのかハッキリ言ってくれないんですよ。“今のままじゃ〈羅針盤〉じゃないな。クランクインまでには、なっておいて”という感じで。だから4人で、ホテルの部屋に集まって会議をしました。“監督が〈羅針盤〉になってくれって言っていたけど、どうする?”って。広島で撮影していたんですけど、その間4人で食事に行ったり、何度も稽古を重ねたり、とにかくずっと一緒にいましたね」
特筆すべきは、劇中で〈羅針盤〉が見せる芝居のインパクトだ。
「本当にたくさん稽古しました。まだやるの?と思うくらい(笑)。あの劇中劇は、実際に劇団で活動している方が台本を書いて、演出もしてくださったんです。台本は全部書かれていて、私たちも台詞を全部覚えて一通り演じました。どの部分が映画で使われるかは分かりません、と言われつつ(笑)」
この劇中劇を通しで見たい。そして、舞台に立つ成海璃子をもっと見たい。
「それはすごくうれしいです! 以前から、機会を頂けるなら舞台もやりたいと思っているので」
過去パートでは10代ならではの揺れる心情も描かれるが…。
「私も複雑な時期がありました。以前はあまり人に興味が無かったと言いますか、周りのスタッフと自らすすんで会話することも少なかったです。“若いのに演技ができてすごい”とか“きれいですね”とか言って頂いても、素直に受け取ることができませんでした」
今は“かわいい”なんて言ってもらえたらうれしいですよ、と笑顔。
「近年『武士道シックスティーン』や『書道ガールズ!!』で、同世代の俳優さんたちと共演することが多かったのが、きっかけになったのかなと思います。自分でもいろいろと考えるようになって、人との付き合い方を学んだ気がします。最近すごく楽しいんですよ。いろいろなこともポジティブに受けとめられるようになったというか。今回の現場はとくに、スタッフもキャストも、みんなのことが大好きでした」
楽しさと不安、両方のドキドキをいつも持っていたいと笑う。気さくな笑顔も、凛としたまなざしも、女優・成海璃子にしかできない表情をこれからも見せてほしい。
(本紙・秋吉布由子)