燐光群は作・演出を務める坂手洋二の社会性の強い作品の他にも、アメリカのヘイト・クライム殺人事件の取材をもとに作られた『ララミー・プロジェクト』(2001年)を皮切りに「報告劇」も多く翻訳上演してきた。
今回はノンフィクション作家の加藤直樹氏が関東大震災を時系列で追って検証したルポルタージュを劇化。現代社会の状況と重ね合わせた「ドキュメンタリー・ドラマ」という新たな試みに挑戦する。
2013年、ヘイトスピーチの怒号が飛び交う大久保の路上に立った男がその後、1923年の関東大震災で多くの外国人が殺害された現場をめぐり、そこであったことをブログという形で人々に伝えていった。観客はそれを元に出版された『九月、東京の路上で』を通して95年前の東京を「追体験」することになり、否が応でも過去の出来事がそこにとどまらず、現代へと続いていることを痛感することになる。
原作の加藤氏をはじめ計10回のアフタートークが設けられた。興味深いゲストが揃っているので、こちらも合わせて楽しみたい。

