カンヌ国際映画祭において、1997年『萌の朱雀』でカメラドール(新人監督賞)を受賞、2007年には『殯の森』でグランプリ(審査員特別大賞)を受賞した、河瀬直美監督の、最新作がいよいよ公開。
「目に見えるものだけがすべてじゃない。目に見えないものをスクリーンに焼きつけたい」とデビュー当時からそう語り続ける監督。これまで生まれ故郷の奈良を舞台に、目に見えないさまざまな思いを綴ってきたが本作では、いまなお自然と神と人が共存する奄美大島を舞台に、島で暮らす少年と少女の姿を描く。河瀬監督が主人公として起用した若手の2人にも注目だ。
父と別れた母と2人で暮らす多感な高校生・界人役には、歌手のUAと俳優の村上淳の息子である村上虹郎。映画初主演となる本作で俳優デビューを果たした。ちなみに今回、父・淳とは親子役で共演している。島の“神”であるユタを母に持つ少女・杏子役には『理想の息子』の吉永淳。他、杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子らベテランが脇を固める。
母親の“女”の顔に嫌悪感を抱く界人。“神”でありながら病で死を迎えようとする母の思いを受け入れられない杏子。それぞれに行き場の無い思いを抱える2人が、大自然の中で気づいた“命”の真実とは…。
生と死をあるがままに受け入れ、命を次の世代につないでゆく。少年と少女の目を通して、その悠久の営みの奇跡に触れる感動作。河瀬作品の撮影を数多く手がけるベテランカメラマン・山崎裕がとらえる、島の海や森の情景にも引き込まれる。