——パ・リーグはどうでしょう?
江本「1位はソフトバンク、2位がオリックス、そして日本ハム。日本ハムも普通Aクラスに予想しちゃいけないんですけど。そして4位は楽天。これは…デーブ大久保との関係があるんで(笑)」
松本「必ずなんかちょこっと入りますね」
江本「うん、ちょこっと入る(笑)。5位が西武、6位がロッテ」
松本「ロッテは…やはりそうなっちゃいますよね」
江本「ただし、ここは2強4弱で、3位以下は分からないです。パ・リーグがいい加減なのは、リーグ優勝したり日本一になったりした翌年に最下位になったりする。ここ最近で3チームあるんですけどね。こういういい加減な野球をするので予想がしづらいんです」
——いい加減な野球というのは?
江本「打って投げて走るだけだから。つまり選手任せ。選手が良ければ勝つし、ダメだったら最下位、みたいな野球。楽天がいい例でしょ」
——田中が抜けた後にちゃんと補強しない球団が悪い?
江本「補強はしましたけど、それがとんでもない補強だった。田中のマー君がいなくても、育てればいいわけです。補強で済ませるのなら、別に70〜80人も選手はいらないじゃないですか。みんなそこを勘違いしているんです。巨人も補強をしなかったというけど、当たり前ですよ。2億、3億稼いでいる選手がゴロゴロいて、何を補強するんだって。お前らが働けば普通に優勝するじゃないかっていうことです。みんな勘違いしているんですよ。それだったら監督は要りませんもん。松本さんでもできますよ」
——では12球団の中で一番いい監督ってどなたですか?
江本「そりゃ巨人の原監督でしょ。年俸の高い選手を扱うチームというのは難しいんですよ。みんな調子が良かったらいいんだけど、不振になった時が問題。去年は100通り以上オーダーを組み直したでしょ。原監督以外の監督だったら多分、オーダーをいじれないです。選手のほうが偉いから。そうすると泥沼に入っていって、去年なんて恐らく最下位だったんじゃないですか」
——原監督の監督力はすごいんですね。
江本「今の12球団では図抜けてますよ」
松本「誰かに気を使うということがないですよね」
江本「全くしない。ばっさばっさいきますから。4番でも次の日に7番にしたり。師匠がいいんですよね。お父さんもいいんですが、藤田元司さんのような自分に影響を与えた人のことが頭に入っている。珍しいですよ、ああいうスターだった人がそういうふうに野球を吸収するのは」
——巨人は戦力が揃っているから強いなんて言う人もいますが…。
江本「そういうことを言うのはしょせん素人です。それだったらオリックスとかはとっくに優勝してないといけない。たくさん補強していますから。補強というのは、補うだけですからね。補うところがないとダメなんですよ。別に補わなくてもいいところを補強する必要はないんですよ。それと正反対なのが、あれだけの選手がいるのに優勝できない阪神。選手に気を使い、何も動けない。ずっと選手任せで固唾を飲んで見守るしかない。そういう監督」
——阪神って暗黒期が長くて、野村、星野両監督で立て直して優勝して、その後それなりに順調にも思えるのですが、最近またそういう感じなんですか?
江本「正確にいうと、野村さんは3年連続最下位ですから。チームとしては最悪だった。星野さんが3年契約できて、その1年目は4位だった。3年でだんだん上がっていけばいいなって思っていたのに、2年目で急に優勝しちゃったんで、星野さんも慌ててやめたんですね(笑)」
——慌ててやめた?
江本「そうなんです。慌ててやめたんです。“あ〜こりゃいけねえ”って。それは多分、野村監督の3年の暗黒時代が実を結んだんじゃないかって言われています。そのあとに岡田監督でも優勝しましたよね。2人の影響力が、じわじわとチームに浸透していたんでしょう。野村という人と星野という人は、“絶対に俺が球界の一番や二番だ”と思ってやっていたわけでしょ。これがチームに対していい影響を与えるんです。“うちの大将は偉い。長嶋さんのこともボロクソに言う”ってなると安心するじゃないですか。そういう精神的な強さ、“自信持って野球せい”みたいなことを植え付けた。それは野村さんがヤクルトの監督をやったときもそう。楽天でもそうです。ただし一発芸だから続かない(笑)」
松本「猫だましじゃないですか(笑)」
江本「星野さんは監督やってる年数は相当長いんですが、連覇はないしね。日本一は最後に楽天でなったけど、翌年は最下位でしょ。最下位のこと誰も言わないもんね」
松本「これを言えるのは江本さんしかいないですよね」
江本「なんで最下位になったかちゃんと検証しないとね。でも楽天はそれでも自信がついたじゃないですか。かつての阪神と一緒ですよ。ところがそれ以降、阪神はね。あの2人は曲者で球団としても扱いにくかった。だからやっとチームも強くなったし扱いやすい監督にしようってことで、真弓とか和田とかにしちゃった。見かけはいいですよ。阪神沿線にポスター張ったら“男前やー”っておばちゃんが見に来て喜んでる。でもそれをやっちゃダメなんですよ」
松本「選手ににらみが利かなくなっているんですね」
江本「間違いなく、選手は監督より自分のほうがえらいと思っていますから。星野さんとか野村さんだとちょっといくらなんでも、“あんたより俺のほうが偉い”とは言えないけど、弱そうな監督になったら、なめる癖があるんですよ」
松本「新聞も阪神の場合はちょっと負けるとすぐストーブリーグが始まりますから。選手の悪口は書かないですけど、監督はボロクソ書かれるじゃないですか」
江本「そういうところに立たされる精神力がないといけないんです」
——今までみたいな話ってなぜ江本さんしか言えないんですか?
江本「僕は、グラウンドに行くから。悪口言っても次の日にはそのへんでうろうろしていますから。これはコツです。野球界には暗黙のルールがあるんです。グラウンドに降りて来ない解説者がボロクソに言うとみんな反発する」
松本「見てもいないくせにって」
江本「見てもというか、“グラウンドに降りてこないくせに何言ってるんだよ”って。だから私は一番最初にグラウンドに行くんです。放送席は一番最後。放送席で初めて会うディレクターは今来た、と思っているんです」
松本「(笑)江本さんはケージの後ろにいらっしゃいますから。周りは若手ばかりなんですよ」
江本「ずーっとはいないんですよ。一発芸でガッといって」
松本「必ず監督のところには行かれて」
江本「でも選手とは喋らないです。情が入るから。やっぱり喋ったり挨拶したりすると僕も言いにくいんですよ。人間がもともといいから(笑)」
——大久保監督とか中畑監督とか。
江本「ああいうのに弱いんですよ」
——放送の前にアナウンサーと2人で打ち合わせなんて…。
江本「したことない。放送席で初めて会う感じです」
松本「打ち合わせしてもその通りには決してならないですから」
——すっと放送に入れるものなんですか?
松本「そうですね…」
江本「優勝争いしているとか開幕だとか、ちょっと全体の波があるときには全体のテンションで行くという…。でもそれは打ち合わせしなくても空気でそうなっていますから」