つづいて「早稲田大学バンザイ同盟」。
「バーンザイッ、それ、バーンザイッ」。大学付近の公園からとても大きな掛け声が聞こえてくる。
結婚式やパーティー等のおめでたい会場に駆けつけてはバンザイをし、さらに会場をおめでたくする早稲田大学バンザイ同盟。総勢30人ほどの小規模なサークルであるにも関わらず、とても有名で歴史のあるサークルなのだ。「人数が少ないから皆本当に仲が良いです。バンザイを共通項として集まってはいるけれど、皆が自由なことをして好きなように楽しんでいます」。
副幹事長の大井さんは「珍しいとかウケるとかそういうノリではなく、皆が真面目にバンザイをしている姿にひかれてこのサークルに入りました」と語る。「よく驚かれるんですけど実は、普段はおとなしかったり、人見知りだったり、真面目な人がこのサークルには多いんです。でも皆バンザイをするときにはスイッチが入って本気なんですよね。こういうタイプの人がガチでバンザイをするというギャップが面白いんです」。
普段は部室でまったり過ごしながら時折バンザイをしており、多くの人が他のサークルと掛け持ちしているほど自由な雰囲気。その代わり、合宿ではガチ練が行われる。チームを組んで新しいバンザイを考案してMVPを決めたり、新入生に指導をしたりする。バンザイ数は現在768種類があり、メジャーなものは10種類くらい。この日見せていただいた中でインパクトのあったバンザイは「ハートのバンザイ」(写真)。練習中はバンザイのスピードやメンバーの配置をはじめ、指先から足の角度にまでしっかりこだわっていた。
月に3、4回ほどランダムにメンバーを5人選出し、おめでたい場所へバンザイをしにいく。東北から九州まで各地から依頼が来るそうだ。依頼には、欠かすことができない「バンザイテンプレ」たるものが存在する。まずは「歓喜のバンザイ」をしながら一列縦隊で入場。その後アドリブでMCを行い、「勝利のバンザイ」「朝日のバンザイ」といかにもおめでたそうな一連のバンザイを行う。
今まででいちばん辛かった出演依頼は、スポーツ大会のゴールテープ付近でのバンザイ。「雨が降って寒い中、裸足でバンザイをしました。全員がゴールするまで長時間バンザイをしていたので本当に辛かったですね」。これをボランティアとして行うのは確かにきつい。それでもバンザイをしたいと思う気持ちはどこから湧いてくるのだろう。「出演依頼を受けて会場に入ると、場の雰囲気がガラッと変わったことを感じます。場をつかむ感覚が最高なんですよ」。
長期休みには関西を身一つで観光するツアーを開催。「このサークルのおかげで日本のさまざまな姿を見ることができたから、サークルには感謝しています。これからは先輩にもらった恩を返したいですね」と語る。
「このサークルは、長い時間を過ごしているとても大切な場所。今しかできないことを最大限に楽しんでいる空気を伝えたくて、よくゲリラでバンザイをしています。規則に縛られない自由な雰囲気のサークルをバンザイで築いていきたいですね」と語ってくれた大井さんから、サークルが好きだという気持ちがひしひしと伝わってきた。
出演依頼はこちらから。交通費のみでどこにでも駆けつけます。
http://banzaibanzai.web.fc2.com/index.htm
最後に、女人禁制・早稲田オンリーの超バンカラサークル「早稲田精神昂揚会」。
高3の時に早稲田大学のオープンキャンパスに来た前代副幹事長の西村さん。学ランを着た集団に「これが偏差値70だー!!」と学生証を突きつけられたのがこのサークルとの出会いだった。
このサークルは「早稲田祭」「早慶戦」と並んで早稲田三大イベントとされている「本庄早稲田100キロハイク(以降100ハイ)」の企画運営を半年がかりで行っている。100キロハイクとはその名の通り、埼玉県本庄市から早稲田大学までの100キロ強を2日かけて歩くイベント。今年で50回を迎えるこの企画は学生に大人気で、参加するために何日も並んでチケットを取るそうだ。肉体と精神の限界である「ガン極まる(ガンギマル)」状態を経験できる痛ましい企画。その辛さは「意識なく歩く戦時中の兵隊」だというが…。「人の体は思ったより丈夫なんですよ」とドヤ顔の西村さん。
歩くだけならまだしも、どこからそんな元気が沸いてくるのか途中で体育祭が開催されたり、仮装大会が行われたりする。「運営側から仮装しろと頼んだ記憶はないけど皆仮装してくる。もう勝手にしろって感じです」。仮装といってもコスプレのようなものばかりではなく、昨年の仮装優勝者はトラックの模型を担いで一睡もせずに完歩した二人組だったそうだ。賞品として「来年の100ハイ参加券」が贈呈された。
また本庄は本庄でも、新潟県の本庄市からはるばる歩こうと試みた人もいたという。「笹かましか食べないで歩くって意気込んでいたんですけど、250キロ地点で栄養失調で倒れました。こういう馬鹿に応えるためにがんばりたいですね」。
100ハイは地元の人たちにも愛されている行事だ。「早稲田周辺の飲食店が100ハイにちなんだメニューを作ってくれたり、店員さん自ら100ハイに参加してくれたりするんです。ゴールしたときには地元の方が出迎えてくれて、ハイタッチしたりとか。騒音等の問題もあるんですけど、それ以上に地元の人はあたたかいですね」と語る西村さん。
「企画運営は10人程度で行います。企画に比べたら歩くほうがぜんぜん楽っすね。でも参加者はすごく楽しんでくれてるから、それを見ていると楽しいです。100ハイを通じてみんなが早稲田を好きになってくれたらうれしい。このサークルの人たちはみんな早稲田が大好きで、3浪してきた1年生や、単位が足らなくて5年かかっても卒業できなそうな1年生もいますよ。」ちょっと違う気がする。
このサークルの合宿では、山口ー京都間を1日100円で10日間歩くというからすごい。「米30合を背負って歩きました。毎日3合ずつ背中の米が減っていくことだけが楽しみでしたね」。さまざまな事象にありがたみを覚えそうな企画である。
この人たちは本当に歩くことが好きなんだなと思っていたら、「歩くのは大嫌いです。この企画はモータリゼーションへのアンチテーゼ。でも、普段の僕達はモータリゼーションへのアンチテーゼへのアンチテーゼを掲げているので、タクシー大好きっすね」と一蹴された。
仮面浪人を経て早稲田に入学した西村さん。「面白いやつが集まって好き勝手やってればそりゃ楽しくなりますよね。そんな早稲田が大好きです」と話す。「この世に大学は2つしかない。早稲田か、それ以外だ!」早稲田魂を見せ付けてくれた。
100ハイ、社会人出場枠あります!
http://100hai.mond.jp/51/
ここに挙げたサークルは氷山の一角に過ぎない。しかしどのサークルのどの人もとても個性に溢れていて、今を煌いている面々ばかりであった。
(本誌インターン・沢井めぐみ)