大学時代の思い出と言えば何を思い浮かべる人が多いのだろう。留学、専門の勉強、ゼミ、アルバイトetc…、現在では「就活です(笑)」という人も多いかもしれないが、「サークル」をいちばんの思い出に挙げる人は多いのではないだろうか。
都の西北・早稲田大学(東京都新宿区)は、日本一のサークル数を有している。中には100年以上の伝統を持つものも。大学側から公認されているサークルだけで500団体あり、非公式のものは把握しきれてないものの2000〜3000団体ほどあると言われている。学生のサークル所属率も7割を越えているとされており、サークル活動がどれほど盛んであるかお分かりいただけるだろう。
そんな早稲田大学の中でも一風変わったサークルを紹介したいと思う。
最初は「資格ゲッターズ」。
その名の通り、みんなで勉強してさまざまなジャンルの資格をいっぱい取るサークルだ。部室に入ると参考書がずらり。
幹事長(早稲田大学ではサークル代表者を幹事長と呼んでいる)の皆川さんは高校時代は水泳部だったそうだが、新しいことがしたいと思いこのサークルに入った。珍しいサークルゆえ、他の大学の学生も多く所属している。
サークルに入った当初は2ヶ月かけてひとつの資格を取得していた皆川さん。今では2週間にひとつのペースで資格を取れるようになっている。「いくつかの資格を並行して取る人もいますよ。寝る時間も削って詰め込んだり。でも、やっぱり計画性がある人が強いです」。現在2年生は平均20〜25個程度資格を持っているそうだ。
男子は毒物劇物取扱責任者や危険物取扱者など、女子はメディカルハーブやアロマセラピーなどの資格を取る人が多い。また理系メンバーには、基本情報技術者という記者にはちょっと理解不能な資格を目指している人もいる。人によって受ける資格の難易度もジャンルもさまざまだ。ちなみに初心者にお勧めなのは秘書検定2級。「簡単すぎず、難しすぎない資格です。会場の9割が女性だったので、すごくアウェーでした(苦笑)」。今回の取材で見せてもらった検定書の中で一番目を引いたのは、水木しげるの妖怪検定。もともとは島根県のご当地検定だったそうだが、『ゲゲゲの女房』のヒットを受けて調布でも年に1回受験できるようになった。受けられる場所や日にちがきわめて少ないため、かなりレアな資格である。
資格は、大学生にとって大きなイベントである就活でも役に立つ。「面接官は資格に目が肥えてます。趣味系の検定を取る学生はあまりいないので、おもしろい資格をワンポイントとして書くことで話題づくりになる。履歴書におもしろい資格をいっぱい書きたいというのもサークル理念の一つですね」。
新歓イベントや合宿などの行事は、みんなで一緒の資格を取ることを目的として企画される。スキー、スノーボード、パラグライダーなどのアウトドア系合宿から池袋のナムコナンジャタウンでの日帰り行事までさまざまだ。「みんなが楽しく資格を取得して帰ってくることを目標としているので、難しくない資格を選んでいます。せっかくなら、皆でちゃんと合格して帰ってきたほうが気持ちいいじゃないですか。でも滋賀県で受けた忍者検定はペーパー試験がかなり難しかったんです。僕は手裏剣を投げる実技試験の出来がよくて合格したんですよ(笑)」。
幹事長として100人ものメンバーを支えている皆川さん。「これだけ人数がいるから、人によって取りたい資格のジャンルはぜんぜん違う。簡単な資格を数多く取りたい人もいれば、難しい資格をじっくり取りたい人もいる。皆が満足してくれているかどうかということを常に考え、幹部同士で相談しています。下の学年の子に面白いなって思ってもらえるように、日々勉強しています」と笑顔で語った。
資格ゲッターズ 公式ホームページhttp://license-getters.com/
つづいて「早稲田大学ジャグリングサークル〜infinity〜」。
さまざまな道具を操るジャグリング、大道芸をどこかで一度は見たことがあるという方も多いのではないか。
お手玉のような「ボール」、ボーリングのピンのような「クラブ」、中国ゴマ通称「ディアボロ」、複数の箱を回転させたり投げたりする「シガーボックス」、輪っかを投げる「リング」、水晶玉のような「クリスタル」、バトンのような棒を何本も操る「スティック」等々さまざまな道具がある。ひとつの道具を極める人もいれば、多くの道具を操る人もいる。皆それぞれとても楽しそうにジャグっている(※ジャグる=ジャグリングをする)。
メンバーはここ数年で一気に急増し、今では50人程度の現役生が活動している。メンバーの大半を理系男子が占めているのが大きな特徴だ。引退した先輩方も時折練習に顔を出してくれて、練習場所はいつも多くの人とたくさんのカラフルなジャグリング道具でにぎわっている。
公式な練習は週に2回、大学近くの公園で行われている。練習をしているとお年寄りや小さな子供が寄ってきて交流の場となることもあり、とてもオープンな環境が築かれている。公式練習日以外にも、授業の合間の空き時間には自然と公園に人が集まって練習をしている。それだけ皆ジャグリングが好きなのだ。多くのメンバーは公園練習だけでは事足りず、学校の施設や体育館で自主練に励んでいる。練習の成果はジャグリングの大会や早稲田祭などのイベントや、出演依頼を受けて披露することが主。競技人口の少なさゆえ横のつながりも強く、他の大学のジャグリングサークルやプロのパフォーマーと交流する機会もある。海外大会への出場も頻繁に行われているというから驚きだ。
そんなジャグリングサークルの幹事長yuさんは高校1年生のころ、先輩のパフォーマンスに一目ぼれしてシガーボックスを始めた。来る日も来る日も練習を重ね、高校3年生の時には高校生大会において見事優勝。「高校の入学試験に合格したときよりもうれしかった」と語るyuさんは、現在は同じ道具を操る仲間とチームを組み、多くの大会で目覚ましい記録を残している。これに関しては「仲間と助け合って入賞しました」と非常に謙虚。「何より、ジャグリングの大会が増えてきていることがうれしいですね」。ジャグリングをはじめてもうすぐ6年が経とうとしているyuさん。つらかった事、やめたいと思ったことはないのだろうか。「出演依頼をいただいたら、いろんなところへ行ってジャグリングパフォーマンスをするんですけど、本番で大失敗すると相手に申し訳ないし嫌になりますね。でも、成功すると本当に楽しい。知らない人から拍手もらえるってすごいことじゃないですか。ありがとう、と言われたら本当にうれしいですよね」と少年のように語ってくれた。
「サークルに入ってくれた人に、ジャグリングを好きだなって思ってもらいたい。楽しいなと思って続けてほしいです。でも、楽しくなかったら続かないか(笑)」。そんな後輩想いの幹事長。「みんなをいいパフォーマーに育てて、infinityを有名にしたい」とまっすぐに語る姿が印象的だった。
出演依頼はこちらから。愉快なメンバーが駆けつけます。
http://www.geocities.jp/juggling_infinity/
後編へ続く